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クリント・イーストウッド
『人生の特等席』
年を重ねても、学ぶのを決してやめることはない
『人生の特等席』クリント・イーストウッド 単独インタビュー

取材・文:吉川優子

『グラン・トリノ』以来4年ぶりに、『人生の特等席』で俳優としてスクリーンに戻って来たクリント・イーストウッド。彼が演じるのは、視力が衰えてきた野球のスカウトマン、ガス。父親の健康を案じてスカウトの旅について来た一人娘との関係を軸に、家族とは何か、年を取るとはどういうことか、といった普遍的なテーマを扱った心温まるエンターテインメント作品だ。82歳の今も、エネルギッシュに活躍するイーストウッドが、今作に対する思い、自分自身について語った。

■俳優業復帰の理由とは?

Q:『グラン・トリノ』の後、監督業に専念するとおっしゃっていたように思いますが、なぜ、今作に出演することにしたのですか?

ストーリーが気に入ったし、キャラクターも気に入ったからだよ。その二つの要素があれば十分なんだ。娘との関係もジョン・グッドマンが演じた親友との関係も好きだった。彼には健康の問題を抱えているというジレンマがあり、娘もジレンマを抱えている。彼女には素晴らしい仕事の機会が巡ってきている。とどまってその仕事をすべきか、父親を助けに行くべきか。それがいい葛藤を生み出しているんだ。年を取るといい役というのはやはり少なくなるものだよ。だから、いい役が見つかると、演じてみようかなと思うんだ。

Q:スカウトの生活についてリサーチをしましたか?

うん、したよ。彼らはみんな友達で、お互いを知っているんだ。みんなガスほどは年を取っていないかもしれないけど、それくらいの年齢で、長い間、野球のスカウトをしてきた。僕は実際のスカウトたちといつも一緒にいたし、みんな話をするのが大好きだから、たくさんのことをとても素早く学ぶことができたよ。彼らは年に200泊以上、ホテルで過ごさないといけないんだ。大変な仕事だよ。精神的なことも含めて選手の全てのことを知らないといけない。17歳や18歳の子どもに何百万ドルもの大金でオファーするんだからね。多くの場合、どう対処していいかわからなくて、遊びほうけたり、酒に溺れたりして、試合でプレーできなくなる。だからスカウトの責任は大きいんだよ。

Q:ロバート・ロレンツ監督はいかがでしたか?

とんでもなかった……冗談だよ! とても楽しかったよ。過去18年間、彼は製作サイドで僕と一緒に仕事をしてきたんだ。数年前に、いつか監督をやってみたいと言われ、それ以降いつもそういった機会があれば、と思っていたんだ。ロバートが以前一緒に働いたことがある女性の友人がこの企画を持ってきた。僕に演じてほしいということだったから、「君が監督したら」と言ったんだよ。

■今は引退することを考えない

Q:あなたにもお嬢さんがいらっしゃいますが、若い世代から助けを受けるというのは、年を取ると大切なのでしょうか?

そうだね。もっと普通のことだと思うよ。子どもが親の面倒を見たり、誰かを雇って親の面倒を見るアレンジをしたりすることはね。例えば、老人ホームに入れるとか。この映画で、助けを欲しがらない役を演じるのも面白かったよ。ミッキーは、父親を助けたかったんだ。もっとも老人ホームに入れようとはしないけどね。彼女は父親のそばで育ったから、野球のことを詳しく知っていた。彼女はチームの財産になると思ったし、実際に最後にはそうなる。映画を観ていると、いろいろと小さな部分でわかってくることがあると思うよ。少なくとも同じような状況を経験したことがあればね。

Q:この映画のテーマの一つは年を取ることです。そのことについてどう思いますか?

少なくともある時点までは、失うよりも得ることの方が多いよ。多くの知識や経験を得ることができる。もちろん、年を取る大きな秘訣(ひけつ)は、今の時代に追いついていくということだ。うまくアプローチすれば、年を取ることはとても楽しくなりうることがわかったんだ。もし、座って鏡を見つめて「これはひどい」と思っていたら、幸せにはなれない。年を重ねても、新しい人々に会って、新しいアイデアを得ることができるんだ。学ぶのを決してやめることはないんだよ。それが、僕が映画の仕事を続けている理由の一つだ。映画をやって何か新しいことを学ばなかったことは一度もない。他の人々について、自分自身について、人生全般について、そして演技や監督することについてもね。

Q:時々、引退することを考えたりしますか? それとも、まったく考えないですか?

いや、考えないよ。考えてみたことはあるよ。でも、「引退したいな」っていうところまで考えたことは一度もない。とても若くて、引退したいと思っている人たちも知っている。彼らは引退することだけのために生きているんだ。僕の父もいつも引退を夢見ていたよ。なぜなら、大恐慌時代で、とてもタフな時代だったからね。でも、僕はそういうふうに感じたことは一度もない。ラッキーなんだと思うよ。

Q:毎晩どれくらい睡眠を取られるんですか?

許されるだけ長く眠るよ(笑)。僕は眠るのが大好きなんだ。夜にぐっすり眠るのがね。もし必要となれば、少しの睡眠でもやっていける。もし何か仕事をやっていればね。でも、もし特に何かやらないといけないことがなければ、普通に9時間は眠るよ。バケーションだったら、10時間とか11時間(笑)。

■何度でも取り組む! 名優が語る困難への対象方

Q:次のプロジェクトは何ですか?

わからない。今、いくつかの企画に取り掛かっている。可能性があるプロジェクトがいくつかある。でも、役者としての作品はすぐにはないな。少なくとも今はね。わからないけど。

Q:あなたの映画に対する周囲の期待はいつもとても大きいですが、プレッシャーを感じたりしますか?

気にしないよ。どうすることもできないからね。自分の勘で自分の作品を選んでいく。そして一度作品を選んだら、みんなでいい仕事をして、いい作品が完成すると信じないといけない。その後は、観る人次第だよ。こんなに長い間映画業界にいると、知れば知るほど、何も知らないということがわかる。観客を予想することはできない。僕は脚本にアプローチするとき、ヒットするかどうかは考えない。脚本を読んだときに感じたものを、観客にも感じてほしいと願っているけどね。観客がそれを感じなかったら、どうすることもできない。運命論者かもしれないね。でも、自分自身が気に入っていないといけない。そこがポイントだよ。「オッケー、僕は、自分でできる限りベストなものを作った」と言えないといけないんだ。

Q:人生で困難に出会ったとき、どのようにそれを乗り越えますか?

そうだね。その問題に取り組んで、それについてアイデアを生み出すようにする。そして、もしそれが正しければラッキーだ。もし、間違っていれば、最初からやり直す(笑)。また違ったやり方をしてみるんだ。それだけだよ。

映画の中では、かなり老いを見せるイーストウッドだが、実際は、活力にあふれ、ダンディーでとてもすてき。娘を演じたエイミー・アダムスが「今もドキドキさせられる」と言うのにも十分納得させられる。父娘関係や、老いというテーマを扱いながらも、野球という世界を舞台に、娘と新米スカウトの恋愛関係も描かれるなど、誰もが楽しめるエンターテイニングな感動作に仕上がっている。ぜひ、映画館で楽しんでいただきたい。

(C) KaoriSuzuki

映画『人生の特等席』は11月23日より全国公開

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