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ティム・バートン&木村カエラ
『フランケンウィニー』
孤独の中にも希望があると信じたい
『フランケンウィニー』ティム・バートン&木村カエラ 単独インタビュー

取材・文:森直人 写真:金井尭子

鬼才ティム・バートン監督が新作『フランケンウィニー』を引っ提げてPR来日を果たした。この作品は1984年に作られた実写短編のセルフリメイクで、バートン監督の少年時代の思い出を基にした白黒の3Dストップモーション・アニメーション。そしてバートン監督の熱狂的ファンを公言している木村カエラがインスパイア・ソング「WONDER Volt」を手掛けたことをきっかけに、個性豊かなアーティスト同士の対談が実現。お互いの作品や表現活動について存分に語り合った。

■切ないけどきれいで、希望の見えるバートンの世界

Q:木村カエラさんは子どものころからティム・バートン監督の映画の大ファンだとか。

木村カエラ(以下、木村):はい。小学生のころに『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『シザーハンズ』を観て、もう大好きになっちゃって。『ナイトメアー~』の中に出てくる悪ガキ3人組(ショック、バレル、ロック)の絵を描いたりして、よく一人で遊んでいました。ただ当時はそれがバートン監督の作品だって知らなかったんです。でも中学・高校になったときに、「あっ、わたしの好きな映画って、あれもこれも同じ人が作ったんだ!」って。(注:『ナイトメアー~』ではバートンは原案・キャラクター設定・製作を担当。監督はヘンリー・セリック)。

ティム・バートン監督(以下、監督):ありがとう! 今回の『フランケンウィニー』も気に入ってくれたみたいでうれしいよ。

木村:オリジナルの実写短編が『ナイトメアー~』のソフトの特典に入っていますよね。わたし、あれを何度も何度も小さいころから観ていたので、今回「この30分のお話がどうやって広がっていくんだろう?」ってすっごくワクワクしていたんです。そうしたら、まず短編と同じ白黒映像だったので「ステキ!」と思って。

監督:『フランケンウィニー』は、僕が子どものころに実際に体験したことがベースになっているんだ。5歳から飼っていた愛犬が9歳のときに亡くなって、本当にショックを受けた。そのときの悲しみが、モノクロ時代の古いホラー映画『フランケンシュタイン』の、科学者の博士が生命をよみがえらせる話と相まって僕の中でムクムク大きくなった。だから今回も、この物語を映画にするなら白黒の映像が最もふさわしいと思ったんだよ。

木村:バートン監督の作品はいつも色彩感覚が豊かですけど、確かに今回は切ない内容に白黒がぴったりですよね。でも同時にきれいで、希望の見える世界だし、この映画をあとから思い出すと、わたしの頭の中ではカラフルなイメージになるんです。

■カエラが全力でささげたインスパイア・ソング

Q:バートン監督も、今回のカエラさんのインスパイア・ソング「WONDER Volt」を大変気に入られているそうですね。

監督:イッツ・グレイト! 素晴らしい楽曲だね。特にうれしかったのは、作品の精神をパーフェクトに理解してくれていること。この映画が持っているハートやエモーション……愛、友情、情熱、そして物をクリエイトする気持ち。それが全部伝わってくるんだ。監督としてとてもハッピーだよ。

木村:そんなことを言ってくださるなんて夢みたいです! たぶんインスパイア・ソングって、映画本編から感じたものをもっと自分側に引き寄せるのが普通かなと思ったんですけど、わたしは『フランケンウィニー』が大好き過ぎちゃって(笑)。この映画に全力でささげる曲にしたかったんです。だから完全に主人公の少年ヴィクターの気持ちになって、スパーキー(愛犬)のことを歌うしかないなって。わたしは映画を観たとき、悲しみや切なさと隣り合わせのポジティブな意味をすごく感じたんですね。その感動をストレートに歌詞にしたくて、「孤独の中に希望があること」っていうフレーズを軸にして書いていきました。

監督:まさにそうだね。この曲も僕の映画と同じように、にぎやかなサウンドになっている。

木村:わたしが一番好きなシーンが、ヴィクターがスパーキーをよみがえらせるために屋根裏部屋で実験を始めるところなんです。あのときのスピード感とか、カミナリが落ちる音とか、フラスコのポコポコ鳴ってる音とか、ガチャガチャっていろんなものが動き出すような映画の面白いリズムを、音楽で表現したいなと思いました。

■カエラいわく、バートン映画のキーワードは「つぎはぎ」

Q:カエラさんがバートン監督の作品で最も惹(ひ)かれる点は何ですか?

木村:やっぱりキャラクターの魅力ですね。不気味さとかわいさのバランスが絶妙で(笑)。今回の歌詞でも使った言葉なんですけど、(監督の作品は)「つぎはぎ」のあるデザインが多いですよね。それはなぜですか?

監督:僕は子どもから思春期へと成長していく中で、自分の内面がパッチワークのように、どこかつなぎ合わさったもののような感じがしたんだ。「そのままにしておいたら、ほどけちゃうんじゃないか」みたいな。そのフィーリングの象徴として、つぎはぎ模様を使っている。例えば『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のサリーであったり、『バットマン リターンズ』のキャットウーマンであったり、そしてスパーキーであったり。

木村:面白い! そうだったんですね。あともう一つ質問です! 『アリス・イン・ワンダーランド』の赤の女王のように、頭が大きくてカラダが小さいキャラクターがよく出てくるのはなぜですか?

監督:それは僕の頭が大きいからだよ(笑)。まあそれは冗談として、『アリス~』では、物の比率がごちゃごちゃになっているのがポイントだと思うんだよね。あと僕自身、物の見方が極端なところがあって、そんな自分が心配になるところもあった。でも、今ではそれを前向きにとらえることで、一層自分のクリエイティビティーを高められると思っている。芸術的な人間は、普通の感覚とは異なるところがあって当然なんだよ(笑)。

■日本とバートン監督のステキな関係とは!?

Q:バートン監督は日本での人気も非常に高いですよね。特に若い人たちの熱気はすごいものがあります。

監督:僕も日本に来るのが大好きで、それはアーティスティックな刺激を受けるからなんだ。日本のクリエイターの創造性、デザインに対するセンス、感情の見せ方などは本当に素晴らしい。それに子どものころから日本の怪獣映画が大好きだし。

木村:そういえば、今回の映画では日本人の少年トシアキのカメが見どころの一つですね(笑)。

監督:日本の皆さんに歓迎されることを願うよ(笑)。この『フランケンウィニー』にはいろんなモンスターがたくさん出てくるけど、より本質的には、子どものころから変わらないシンプルでピュアな感情を描いているんだ。一緒に育った友達だったり、印象的な学校の先生だったり……。少年時代の大切な思い出が全部詰まっている。僕にとっても原点回帰となる一本だから、それぞれ自分の懐かしい時代に立ち返った気持ちで楽しんでもらえたらいいなって。それに昔のアナログ3D映画はメガネを掛けて観ているうちに頭痛がしたものだけど(笑)、今の3Dは疲れないからね。

木村:本当に子どもも大人も楽しめる作品ですよね。あんまりちっちゃい子は怖がっちゃうところもあるかもしれないけど(笑)。でも、きっと大丈夫。特に家族とか友達とか、自分の大切な人たちのことを思いながら観ると、すっごく温かい気持ちになれる映画です。

まさに国やジャンルを超えて、アーティストとしての姿勢、人間としての心を通い合わせた二人。息の合った会話はもちろん、ファッションセンスなども示すように、共通の美意識や感性でつながった彼らはまるで同じ血を分けた兄妹のようだ。そんな二人の美しいコラボレーションを生んだ映画『フランケンウィニー』は、キモかわいくてコワ面白い、バートンワールドの神髄が凝縮された掛け値なしの名作。たくさんの観客のハートに届くことを祈りたい。

(C) 2012 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ヘアメイク(木村カエラ):フジワラ ミホコ(LUCK HAIR)
スタイリスト(木村カエラ):森上摂子(白山春久事務所)
衣装協力(木村カエラ):シャルル アナスタス

「WONDER Volt」「マミレル」「Sun shower」を収録したNEW ALBUM「Sync」が12月19日発売

映画『フランケンウィニー』は3D/2D全国公開中

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