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堺雅人&菅野美穂
『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』
「執事プレイ」スタイルのプラトニックラブ
『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』堺雅人&菅野美穂 単独インタビュー

取材・文:轟夕起夫 撮影:金井堯子

2010年に公開され、大ヒットを飛ばした男女逆転版の映画『大奥』。よしながふみの人気漫画を原作とするこの奇想天外な時代劇は、テレビドラマ『大奥~誕生~[有功・家光篇]』を経て、劇場版第2弾『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』へ。5代将軍・徳川綱吉の時代、栄華を極め爛熟(らんじゅく)する元禄の世に、綱吉と大奥総取締の右衛門佐(えもんのすけ)、“孤独な魂”がたどり着いた永遠の愛が描かれる。本作で初共演を果たした堺雅人と菅野美穂。芝居巧者な二人は、いかに自らの役を見つめ、そこに何を感じたのか……。それぞれの思いを語った。

■爛れた美しさを持つ綱吉のキャラクターに心酔

Q:5代将軍・徳川綱吉を演じられた菅野さんは、どのようにご自身を役に近づけていかれたんですか。

菅野美穂(以下、菅野):今回は完全に、わたしとは「別の人間」だと割り切って挑みました。ただ、共感できる部分も多々あったんですよね。お家のために子どもを授からなければいけないツラい境遇だったり、それから権力者だけどとてつもなく孤独である、というのも理解できました。原作を読ませていただいたときには最初、わたしはミスキャストじゃないかなあと思ったんですけど(笑)。将軍の役ができるなんて、この男女逆転版『大奥』でしかあり得ないので、存分に楽しんじゃおうという気持ちもありました。

堺雅人(以下、堺):ミスキャストだなんてとんでもない! 僕は綱吉には爛(ただ)れた美しさというか、妖艶さといったイメージを抱いていたんですが、それは菅野さんでなければ出せなかったと思う。本当に底知れぬ力を持ったスゴい女優さんだなあと思いました。どこで演技のスイッチが入り、どこで切ったのかがわからない、その変幻自在さにも圧倒されました。

菅野:ありがとうございます。以前、テレビドラマの「大奥」(※フジテレビで放映された時代劇)に出させていただいたのですが、久々の京都での時代劇の撮影でテンパってしまって、気持ちもとっちらかって慌ててしまいました。でも、現場では堺さんがいつも落ち着かれていたので、それで安心できました。

■「大奥」は、いわば巨大な家族のリビングルーム!

Q:堺さんが演じられた大奥総取締の右衛門佐は、職務を遂行するため、なかなか感情を表には出せない切ない役でしたが、完成した本編を御覧になっていかがでしたか。

堺:2か月かけて丁寧に撮った作品で、京都のスタッフの美術も含めて、とても見応えのある映画になったなと思いました。いわば大奥って「巨大な家族の豪華版リビングルーム」なんですよね。それをのぞき見しているような贅沢さがありました。

菅野:いわゆる昼ドラ的な要素がありますよね。怒濤(どとう)の展開が楽しいソープオペラみたいな。その中で右衛門佐って、基本的にはプラトニックなんだけど、草食系の男性が「自分にだけは肉食の本当の姿を見せてくれる」みたいな、多分女性にとっては夢のようなキャラクターなんです。プラトニックって抑えつけているだけで、実は結構感情のカロリーというか熱量がある。そういうところが、きっと女性からしてみたら、グっとくると思うんですよ。

堺:なるほど。右衛門佐の「感情の動線」って結構真っすぐなんですよね。綱吉に対する気持ちというのはわかりやすいくらいシンプル。でも周囲の事情が込み入っていて、ややこしいことになってる(笑)。自分の代わりに他の男を(綱吉に)あてがう仕事ですからね。綱吉に向かって放たれている右衛門佐の感情の一本の矢は、いつまでたっても突き刺さらない。ジレったいんです。でも終わってみたら、その矢ごと綱吉の体内に取り込まれるようなイメージだった。新しい発見でした。菅野さんの懐の深いお芝居のおかげだと思います。

■「執事プレイ」スタイルの右衛門佐の屈折した愛

Q:貧乏公家の宿命を背負いながら、右衛門佐はおのれの人生を模索していきます。

堺:そうなんです。権力の世界で成り上がりたい、一番いい女を征服したいっていう。ただ、その征服の仕方がいささか込み入っていますよね(笑)。右衛門佐は事務方として綱吉のお世話をしているんだけど、言ってみれば「執事プレイ」みたいなものなんじゃないかな? 綱吉って言ってみればお嬢様。右衛門佐はお世話をする中で、お嬢様への愛が芽生えるわけですよね。尽くすことによって、その愛を伝えようとする。

菅野:屈折してますねえ(笑)。

堺:屈折してる! 例えるなら、茶を入れて、飲んでもらう、その口をつけられている湯飲みに自分をダブらせる……みたいなことでしょうか。

菅野:マニアック(笑)。なんだか脳で感じる恋愛というか。前半、綱吉と一緒にいるけれど、右衛門佐は後ろから見守っている描写ばかりで。でもその視線はわたしも確かに感じていましたよ。それは最後の最後に、二人が互いに感情をぶつけ合うシーンのための布石なんですよね。

■プラトニックな愛は意外に高カロリー

Q:綱吉と右衛門佐のちょっとした視線の交わし合いに感じ入る……。本作はそういう「執事プレイ」、もっと言えば「大奥プレイ」が楽しめる映画ですね。

堺:それぞれの役職ごとの生き方が興味深いです。右衛門佐は綱吉に世継ぎを産ませるのが仕事なわけですから、そのゆがんだ世界の中での、ゆがんだ愛の貫き方があったんでしょう。

菅野:右衛門佐は綱吉の将軍という立場、それから桂昌院(西田敏行)との親子の関係だったり、側用人の柳沢吉保(尾野真千子)との複雑な間柄だったり、そういうお家の事情も全部理解している人。それで綱吉への思いを秘めている。わたしがこの映画から感じたのは、突き詰めて言うなら、プラトニックが一番カロリーの高い恋愛なのかなあ、と。

堺:名言いただきました!

菅野:あはは。秘めたエネルギーってやっぱりスゴイんだなあって。

堺:お能で言う「静中動」にも似ているのかな……。静かなんだけど、内部ではすごいチカラが渦巻いているっていう。登場人物それぞれの、さまざまな思いの交錯もあって、そう考えると、結構カロリーの高いラブストーリーに仕上がりましたね。

「人間関係がややこしい(笑)」と出演している二人でさえ感じたという映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』。だがそれが「ソープオペラの味わい」(菅野)を醸し出し、「ある種の歴史ロマンにも通ずる世界」(堺)をつくり出したわけである。前作を続投しての金子文紀監督は今回、“男女逆転”というギミックのその奥を描きたい、と語った。堺雅人と菅野美穂の肉体を借りて、また大奥という秘密めいた場での、ゆがんだ世界、ゆがんだ愛の貫き方を通して、男と女の濃厚で、純粋な思いや愛情が、ギミックの奥から見えてくる。

ヘアメイク:
保田かずみ(SHIMA)(堺雅人)
井手真紗子(AIR NOTES)(菅野美穂)

スタイリスト:
登地勝志(堺雅人)
黒崎彩(LINX)(菅野美穂)

衣装協力:
イン・フォリオ、FAIRFAX(堺雅人)
リカ、ドゥーズィエム クラス、スピック&スパン ノーブル、ル ドーム イエナ(菅野美穂)

映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』は、12月22日より全国公開

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