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妻夫木聡&蒼井優
『東京家族』
今の日本がここにある
『東京家族』妻夫木聡&蒼井優 単独インタビュー

取材・文:轟夕起夫 写真:吉岡希鼓斗

山田洋次監督が、松竹の大先輩でもある小津安二郎監督の世界的な傑作『東京物語』にオマージュをささげて制作した映画『東京家族』。基本的なストーリーはそのままに、独自のアレンジを加え、『東京物語』を3.11の震災以降の今を生きる「家族の物語」に再構築した山田監督は、名女優・原節子が演じた役柄を、妻夫木聡と蒼井優の二人に託した。重要な役割を担った二人が、撮影秘話、そして完成作の魅力を語った。

■役づくり、それぞれのやり方

Q:山田組は初めての妻夫木さん、『おとうと』に次いで2度目の蒼井さん、『東京家族』の撮影のために、何か自主的に取り組んだことはありましたか?

妻夫木:僕は後半のロケ地に行ってみて、いろいろ触れたり見たりしました。それから、これは自然となんですが、東京での撮影では、母親役の吉行(和子)さんと、よくお話をさせていただきました。事前に「親子の距離感が大切」とは考えていたんですが、気付いたら、何かと吉行さんの隣に行きたい自分がいて。初めての共演なのに、本当に甘えちゃったところもありましたね(笑)。そんなこともあって、母と息子の間の温かな空気感が、映画にはしっかり映っていると思います。

蒼井:わたしは、事前にあまりあれこれ考えないんですよね。だから、いつも現場に入ってから、「ああ、もうちょっとああしておけばよかった」と後悔することになるんです……。

妻夫木:撮影の合間は、俺はよく吉行さんと話していたけど、蒼井さんは橋爪(功)さんとよく話していたよね?

蒼井:その日によって違ったかな? 一番は夏川(結衣)さんと中嶋(朋子)さんと三人で話していたことが多くて、気の置けないおしゃべり仲間になりました。

■共演者の意外な素顔を暴露!?

Q:名作『東京物語』がベースにある映画ですが、撮影中、それを意識されたことは?

妻夫木:いえ。最初は監督も小津作品を意識した演出をされるのかなと身構えましたけど、インした日から「これは完全に山田さんの作品なんだな」って。完成作も、『東京物語』を知らない方でも胸に染み入る映画になっていて……きっと涙がこぼれるはずです。

蒼井:妻夫木さんも泣かれたんですか?

妻夫木:泣きました。

蒼井:わたしも泣きました。夏川さんの隣で観させていただいたのですが、夏川さんって、おしとやかに見えて、意外とおちゃめな方なんです。わたしが吉行さんと指切りをするシーンで、横からわたしに指切りをするしぐさを見せたりして……。それでも泣けたので、すごい映画だと思いました。

■小津調+山田節と対峙した二人

Q:山田監督は、セリフの語尾の一つ一つまで「山田節」ともいえる厳格な言葉遣いを要求される方だそうですが、そこに今回は、少々「小津調」も加わって、撮影では苦労されたのではないですか?

蒼井:もともと滑舌がよくないので、山田組では舞台前みたいに発声練習するのは欠かせません。妻夫木さんは結構、語尾の変更を許されていましたよね?

妻夫木:ちゃんとセリフは覚えて挑んでいたんですが、それでも「言っていたじゃないかよ」が「言っていたじゃねえかよ」みたいに少し変わってしまうときがあって……確かに、そういうのは許していただけていた気がします。

蒼井:妻夫木さんの演じた昌次は、山田作品ではあまり見ることのないキャラクターだったので、それで良かったのかも。新鮮だったし、すてきでしたよ。

妻夫木:そうなんだ。蒼井さんはどうだったの? 2度目の山田組は。

蒼井:この映画の撮影に入るまで、武者小路実篤さんと三島由紀夫さんの戯曲の舞台(河原雅彦演出「その妹」、野村萬斎演出「サド侯爵夫人」)をやっていたんです。そうしたら、「小津調」も「山田節」も現代に感じることができて。それは『おとうと』のときにはなかった体験だったので、不思議でした。でもやっぱり、「山田節」を話すのは独特で、山田組でしか味わえないので、口にしていて楽しいんですよね。

■海外の方々にも観てもらいたい作品

Q:では、『東京家族』が描く「家族のドラマ」を通じて、感じられたことは?

妻夫木:結婚もいいもんだなあって(笑)。昌次のたたずまいがいいんですよ。恋人を両親に紹介し、その本質的な人間性をわかってもらい、絆が生まれる瞬間って、たまらなく感動できるじゃないですか。恋人同士にも絆はあるけれど、家族の、親子だけの絆って確実にあって、それを垣間見ると、本当の意味での親孝行ってこういうことなのかなと思いました。

蒼井:確かに、紀子の存在で、平山家の絆が強まるエピソードは素晴らしかったです。でもわたしは、「結婚っていいな」とまでは思わなかったけど(笑)。

妻夫木:ちょっとリアルな話になっちゃいましたね(笑)。見終わった後、ここまで心が温まる作品って、ありそうでなかったと思うんです。なんか、ホッとしたんですよ。実家に帰って「ただいま」って言うような、そういうホッとする気持ちになれる映画だよね。

蒼井:わたしは、実家があるから何とか頑張れている気がしているので、本当にこの作品に感情移入できました。

妻夫木:絶対的な安心感というか、いつでも帰れる場所があるのは、すごく自分の中で強みになるよね。しかも知らないところで支えてもらっていたりもするじゃない?

蒼井:あと、海外の方々にもぜひ観ていただきたい作品でもあります。これが全てではないけれども、「今の日本人って、わたしたちって、こうなんです!」って。

野田秀樹によるNODA・MAP第16回公演にあたる舞台「南へ」以来、2度目の共演となった妻夫木聡と蒼井優。現代のカップルを演じているのだが、小津安二郎監督の『東京物語』にはない部分、山田洋次監督が本当に描きたかったことは、このカップルのエピソードに集約されていると言ってもいい。山田監督が妻夫木聡と蒼井優の二人に何を託したのか、観れば実家のようにホッとできる映画の中から感じ取ってもらいたい。

映画『東京家族』は1月19日より全国公開

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