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宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ、吹石一恵
『ペタル ダンス』
思いはなかなか伝わらない
『ペタル ダンス』宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ、吹石一恵 単独インタビュー

取材・文:イソガイマサト 撮影:高野広美

大学時代からの親友、ジンコと素子が、ジンコが知り合った原木の運転で、故郷で海に飛び込み一命をとりとめたという旧友ミキに6年ぶりに会いに行く……。CMディレクターとしても活躍する石川寛監督が前作『好きだ、』以来、7年ぶりに発表した新作『ペタル ダンス』は、そんな女子たちのロードムービー。ジンコ役に『好きだ、』に続いて石川作品2度目の出演となる宮崎あおい、素子役に安藤サクラ、原木役に忽那汐里、ミキ役に吹石一恵。映画の公開を前に久しぶりに再会した四人が、奇跡のような美しい映像と生々しい息吹を放つ石川作品の撮影秘話を明かした。

■役者の生の振動が映った不思議な感覚の映画

Q:まずは完成した映画をご覧になった感想を聞かせてください。

安藤サクラ(以下、安藤):見終わったときに、わたしたちの旅を記録したビデオの上映会が終わったみたいな気分になりました。そういう撮り方をしていたので、別に大きな事件が起こるわけではないけれど、あのときに生まれた波というか、目に見えない振動のようなものがきちんと映っていると思いました。

宮崎あおい(以下、宮崎※「崎」は正式には旧字。「大」が「立」になります):わたしは久しぶりに石川監督の世界にどっぷりつかることができたので、懐かしさもあったし、すごくいい作品を観たなって純粋に思いました。決められたセリフを言うのではなく、アドリブみたいなことが多かったので、サクラちゃんと似た感覚がわたしにもあって。勝手に動いているのを撮っていただいたので、まるでドキュメンタリーを観ているかのような不思議な感じがしましたね。

忽那汐里(以下、忽那):撮影した分量が本編の何倍もあったんですけど、たくさん撮った中から意外なところを選んでつなぎ合わせているなと思ったところがありました。撮影もずっと長回しでしたし、結構感覚的なのかなと思いましたね。

吹石一恵(以下、吹石):監督と初めてお会いしたときに、ガラス細工のように繊細な、作品の雰囲気そのままの人だと思って、果たして石川監督の世界に入っていけるんだろうか? って不安だったんです。打ち合わせで「このシーンなんですが……」とお芝居のことを尋ねると「読み過ぎです。台本はもう一切手に取っちゃダメです」って言われて(笑)。普通は「読み込んでこい」って言われるから、戸惑いもあったんですけど、完成した映画を観てやっと答え合わせができた感じです。話は知っていたものの、みんなこんな思いをしながらミキに会いにきてくれていたんだってことがそのとき初めてわかりましたね。

■再会と初対面の設定を現実世界から徹底演出

Q:ジンコと素子が原木を連れて、6年ぶりにミキと再会する病院の屋上のシーンにも何とも言えない空気が漂っていました。

忽那:吹石さんは病院の建物がある青森に先に入ったんですよね。

吹石:そう。で、行ったら「ここで感じてください」という監督からかもしれないという手紙を渡されて、30分ぐらい一人にされた(笑)。翌日もミキが飛び込んだ埠頭(ふとう)に連れていかれて、「ここに立ってしばらく感じてください」という手紙の指示に従ったんだけど、確かにあそこは何か引き寄せられるものがありました。あと、看護師さん役の方と誰も見ていないのにエチュードみたいなこともやりましたね。

宮崎:えっ、監督も見てないの?

吹石:監督も見ていないんだよ(笑)。

宮崎:それ、つらいね……。実は、クランクインする前にわたしとサクラちゃんと吹石さんは東京で集まっているんですよ。そこで三人で大学時代の関係とかを順を追って話し合いました。それがあるのとないのとでは、現場に入ってからの芝居が全然違って、すごくリアルなものになるんですよね。ただ、それは監督が見てくれているという前提のもとに成り立っているものだと思うんだけど(笑)。

吹石:だからだまされているのかな? とも思った(笑)。屋上のシーンも撮影までみんなに会えないように、わたしだけホテルが別だったし。

忽那:そうだったんですか?

吹石:撮影当日も、三人の楽しそうな声を聞きながら、わたしだけ離れたところでメイクをしてもらって。屋上のあの位置に立つまでの間もみんなと目が合わないように、ついたてが置かれていたんですよね。

安藤:わたしが汐里ちゃんと会うシーンのときも、事前に会っちゃダメだった。でも、わたしたち、元々面識あったから、実は……ちょっと気まずかった!(笑)

宮崎:監督は、初めて会う人とはカメラの前で本当に初めて会うようにしたいという方で、それを徹底されるんです。わたしも汐里ちゃんとは劇中で初めて出会う図書館のシーンまで、一切会わなくて。でも、こんな撮り方をされる方はほかにいないので面白いですよ。そのやり方だからこそ生まれる空気感があると思うし、ほとんど順撮りだから、わたしはやりやすかったですけどね。

忽那:わたしが唯一気を付けていたのは、サクラさんがいきなり始めるアドリブのお芝居に影響されないようにすることでした(笑)。わたしが演じた原木は一歩引いた役だったし、笑っちゃいけないから、サクラさんの方をあまり見ないようにしていたんですよ(笑)。

■そこで起こる全ての「本当」を映画にする驚き

Q:海岸のシーンも四人の距離感が絶妙で、そこに太陽の光や風もうまく溶け込んでいて素晴らしかったですね。

宮崎:あのシーンも、わたしとミキとで最初ちょっと話をして、少し離れたところに他の二人がいるという大まかな説明だけで撮影したんです。でも、実は風がすごく強かったし、割と深刻な話をしているのにサクラちゃんが雪だるまを作り出して!(笑)

吹石:あと、雪を投げたりね(笑)。

安藤:だって聞いてなかったんだもーん! そんな深刻な話をしているなんて。

吹石:でも、そのシーンがリアルなんだよね。

忽那:うん。実際、風が強くて二人が何を話しているのか全然聞こえなかったですからね。

宮崎:だから、わたしの視界にちらちらサクラちゃんが入ってきて。

吹石:設定が決まっている映画だったら、ああはならないと思う。

安藤:風でお互いの声が聞こえないから会話がかみ合わないんだけど、監督はなぜかみ合わないのかわからなかったみたいなんです。

吹石:でも、想定内のはず。映像をチェックしたときに「ここ、こんな大事な話をしていたの?」って驚いていたサクラちゃんに、監督が「聞こえなかったんでしょ。それが本当のことですからOKです」っておっしゃったのをよく覚えているもの。

■同じ経験をしても思いは違うところが面白い

Q:同じ女性としてわかるなっていうシーンはありました?

宮崎:同じ女性でも、ミキに会った後の反応がわたしとサクラちゃんとでは全然違うんですよ。帰りの車の中のシーンですね。それは別に、監督に何かを言われたということではなくて……。わたしは少しホッとしているというか、腑(ふ)に落ちている部分があったんだけど、振り返ってみたら、サクラちゃんはすごく苦しそうな、言葉ではうまく説明がつかないような顔をしていて。それはかっちりとした台本があるものでは感じられないことだし、同じ経験を積み重ねてあのシーンに入っているのに、そういう違いがあって面白かったですね。

安藤:わたし、ミキに会ったときに結構傷ついたの。なのに、この人(宮崎)はあっけらかんとした顔をしているからまた傷ついちゃって。

吹石&忽那:(笑)

安藤:どうしてもムカついたから、予定と違うことを言ってしまった……。

宮崎:ムカついていたんだ? 知らなかったよ。

安藤:ムカつくというかショックで。わたしはすごく傷ついたから。

宮崎:何に対して傷ついたの? ミキと会ったときのあの距離感?

安藤:うん。何かすごくイヤだったの。イヤすぎてずっと泣きそうだったもん。

宮崎:でも、すごい頑張って一人でしゃべっていたじゃない?

安藤:うん。なのにコイツ、あっけらかんとしていて……(涙声)。

宮崎:「コイツ」って思ったんだ?(笑)

忽那:でも、その感じがまさに女性ならではですよね。男性は会いに行くと決めたら迷わないと思うんですけど、素子さんは行く道中も「ミキに会ったら何を話せばいいかな?」って悩んでいたし。

吹石:そういう感覚は女性ならではというか、今になってようやく明かされたけど、思いはなかなか伝わらないものだよね。実生活でもそうだけど、会っていないときは特にそう。わたしもこの映画を観て、もっと人を大事にしなきゃいけないな、会おうと思う気持ちが大切なんだなと思いました。

重苦しい空気をまとっていた劇中の四人と違い、この日の彼女たちは和気あいあいとしていて、とても楽しそう。特に安藤がふざけたり、甘えたりしていたのが印象的で、撮影時も宮崎にちょっかいを出して周りを笑顔に。忽那、吹石もニコニコしていて、見ているこちらも思わず顔がほころんでしまったのは言うまでもない。思えば、それぞれ異なる感性と輝きを持ったこの四人の競演がすでにミラクル。彼女たちの魅惑の化学反応、つまり芝居を超えた生の感情がこの映画の繊細な心模様に説得力を与えているからこそ、観る者も心を揺さぶられるのだ。

映画『ペタル ダンス』は、4月20日より渋谷シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国公開

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