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ぐるっと!世界の映画祭
ぐるっと! 世界の映画祭 第10回 ドバイ国際映画祭

超高層ビルのブルジュハリファに人工島パーム・アイランドと、世界一の称号が大好きなアラブ首長国連邦のドバイ。建物だけでなくエンターテインメントにも力を入れております! 熱気あふれる第9回ドバイ国際映画祭(2012年12月9日~16日)の様子を、園子温監督『希望の国』のプロデューサーでもある配給会社ピクチャーズデプト代表の汐巻裕子さんがレポートします。

イスラム圏の厳しい規制あり

ドバイ国際映画祭
レッドカーペットでは民族衣装を着たスタッフが出迎えてくれる

ドバイ国際映画祭は、アラブの映画産業の発展と、中東・アフリカ・アジア地域のミーティングスポットとなるべく2004年にスタート。第9回は世界61か国158作品が上映された。汐巻さんは「首長が全面サポートとあってとにかくゴージャス。一方で文化統制の影響か、ラインナップはどちらかといえば地味で“良質なアート作品”を選んでいるように思います」。

ドバイ国際映画祭
映画祭クロージングにはドバイ首長のイケメン王子で知られるハムダン皇太子も出席

日本映画は過去、想田和弘監督『精神』が最優秀ドキュメンタリー賞、沖田修一監督『キツツキと雨』がアジア・アフリカ部門で最優秀男優賞(役所広司)を含む3冠に輝くなど相性がいい。ただ戒律が厳しい国だけに暴力や性描写がある作品は映画祭でも観賞には年齢制限が設けられ、『悪の教典』はR18+(18歳未満観賞不可)での上映だった。

日本カルチャーに商機あり

ドバイ国際映画祭
汐巻さんが担当している最新作は、濱田岳主演の全編英語による米国映画『SAKE-BOMB』(年内公開)-(C) 2013 pictures dept. / Sake Bomb Films, LLC

作品上映のほかフィルムマーケットも設けられている。アラブ諸国との共同製作に関するシンポジウムに参加した汐巻さんは「中東の映画産業はまだまだ勃興期にある印象でしたが、豊富な資金を保持しているのでポテンシャルは高いし、富裕層にとってもエンターテインメント産業は魅力があるようです」。

ドバイ国際映画祭
ビーチパークプラザセンター内にあるManga Sushi(マンガ・スシ)は漫画喫茶ならぬ漫画with寿司。写真はotaku(海老天巻)とSpyder(スパイダークラブ揚巻)

特に近年、日本文化への関心は高く、街にはハローキティのスパや、漫画喫茶ならぬManga Sushi(マンガ・スシ)がある。そして紀伊國屋書店ドバイ店には日本の漫画が並ぶ。「今後、共同製作の可能性も高いのではないかと感じています。ただ日本映画は全くといっていいほど劇場公開されていないので、国を挙げて中東市場を開拓する意気込みが必要ではないでしょうか」。

中東で原発映画の反応は?

ドバイ国際映画祭
園子温監督『希望の国』の上映会場はショッピングモール「モール・オブ・ジ・エミレーツ」内にあるシネコン。観客はアラブ、アフリカ、欧州と国際色豊か

原発事故に翻弄(ほんろう)される家族を描いた『希望の国』は、コンペティションであるアジア・アフリカ部門での上映だった。汐巻さんは「『希望の国』の海外展開は、作品が包含するテーマ“事故を風化させない”をできるだけ世界中の人に伝えることを第一の目標に置いているので、作品を気に入ってくれた映画祭には必ず出品するようにしています」と説明する。

ドバイ国際映画祭
海外メディアの取材を受ける汐巻裕子さん(左端)と映画『悪の教典』の坂美佐子プロデューサー。撮影はなぜか三池崇史監督

中でも石油王国であるアラブ諸国で原発事故を題材にした作品がどう受け止められるのかに関心があったという。「上映後にサウジアラビアの政府関係者から『サウジで原発建設予定があり、人ごとではない映画だった』という感想を聞き、“風化させない”“伝える”という目的が一つ達成された気がしてうれしかった」という。

まさに中東版ラスベガス

ドバイ国際映画祭
映画祭のメイン会場やゲストの宿泊は、七つ星ホテルのバージュ・アル・アラブを擁するニュードバイ地域で行われる

滞在中、映画祭が用意してくれた市内観光バスツアーに参加するなど積極的に街へ出た汐巻さん。「街の印象は中東版ラスベガス。砂漠のど真ん中に、贅(ぜい)の限りに都市をつくっている印象です。一方で、1971年のアラブ首長国連邦建国前は小さな漁村だったドバイには国としての歴史がほとんどなく、ドバイ歴史博物館もあまりに小さくて大した見どころもなく、カルチャーを感じられないのが残念でした」。

ドバイ国際映画祭
コンペティション部門審査員のイ・チャンドン監督(右)と、『嘆きのピエタ』を出品していたキム・ギドク監督(左)のランチに遭遇

一方、汐巻さんが滞在したアル・カスル・ホテルは執事付きの部屋。「プライベートコテージ付きでゴージャスな滞在でしたが、執事に何をお願いしたら良いのか? セレブ文化になじみのないわたしは戸惑ってしまいました(苦笑)」。何事も経験が大切だ。

ビジターズガイドあります

ドバイ国際映画祭
ドバイ観光といえばデザート・サファリ・ツアー。夕日が美しい

日本からドバイへはエミレーツ航空の直行便で11~12時間。日本人にとっては不慣れなイスラム圏だが、映画祭が風習や戒律を記したビジターズガイドを無料配布してくれるので一読したい。映画祭のメイン会場であるマディナ・ジュメイラはリゾート施設ゆえ飲酒も可能。ただ汐巻さんは「本当はもっとローカルフードにチャレンジしたかったのですが、ホテルのバイキングは和洋中、何でも来いの欧米カルチャー寄りだったのが残念」だったよう。

映画祭は仕事の場です!

ドバイ国際映画祭
スケルトンの映画祭バッグ

「映画祭は他国の映画監督と交流できる絶好の機会。特にドバイでは毎晩、ゲストが参加できるハッピーアワーがあったのですが、滞在中、日本の監督たちを見掛けることはありませんでした。もったいない! 英語が不安であれば、日本人の映画祭コーディネーターに通訳をお願いすればいい。映画祭は“ご褒美のタダ旅行”ではなく、次につなげる場にすべき。わたしの場合、参加した観光バスツアーでさえイタリアのバイヤーと親しくなったので、チャンスはあちこちに転がっていますよ」。

レポート・写真:汐巻裕子
編集・文:中山治美

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