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特別講義:ピクサーのトップが語る未来

ピクサー訪問記『モンスターズ・ユニバーシティ』編

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連載「ピクサー訪問記~『モンスターズ・ユニバーシティ』編」
特別講義

 映画『モンスターズ・ユニバーシティ』。これまでに数々の名作を手掛けてきたピクサーの最新作です。

 この連載では、そんなピクサーのあれこれに密着してきましたが、ちょっと一休み。

 今回は「特別講義」と題して、映画公開前の6月下旬に来日を果たしたピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)であるジョン・ラセターさんにインタビューを行いました!

取材・文:編集部 福田麗

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こんな仕事をしています!
『モンスターズ・ユニバーシティ』

 ピクサーの創設メンバーの一人として1986年の創設から同社を支えているジョン・ラセターさん。世界最高のアニメーション作家の一人であることに疑いはなく、その功績はアニメーション、とりわけCGアニメーションの歴史を語る上では避けて通れません。

『モンスターズ・ユニバーシティ』
ピクサーを代表するキャラクターの「ルクソー・Jr」

 アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた1986年の『ルクソーJr.』は3Dコンピューター・アニメーションとして初めてアカデミー賞にノミネートされた作品であり、1988年の『ティン・トイ』は3Dコンピューター・アニメーションとして初めて同賞を受賞した作品になりました。そして、1995年には世界初の劇場長編フルCGアニメーションである『トイ・ストーリー』を監督するのです。

 映画『トイ・ストーリー』ラセターさんにアカデミー賞特別賞をもたらすとともに、現在までに長編3作が制作され、ピクサーを代表するシリーズになりました。そして何より『トイ・ストーリー』の出現は、CGアニメーションの可能性を開き、アニメーションの未来を大きく変えたのです。

 ラセターさん自身の監督作は『トイ・ストーリー2』以降は激減し、長編では『カーズ』『カーズ2』のみとなりましたが、2001年の『モンスターズ・インク』以降、全てのピクサーの長編映画に製作総指揮としてクレジットされています。また、2006年のディズニーによるピクサー買収を機に、ディズニー・アニメーション・スタジオのCCOにも就任。現在はピクサーとディズニー・アニメーション、さらにはディズニートゥーン・スタジオのCCOを兼務しています。

『モンスターズ・ユニバーシティ』
世界中で人気の『トイ・ストーリー』キャラクター - Jeff Fusco/ Getty Images

 「わたしは三つの異なるスタジオのCCOを務めています。どのスタジオからも素晴らしい作品を発表しているのは、わたしにとっての誇りです。三つのスタジオのCCOを兼務していると言うと、皆さんは『いったいどうやっているんだ?』と思われるかもしれませんが、その実、わたしにもよくわかっていないのです……というのは冗談で、実際はよくわかっていますよ。才能にあふれた監督、プロデューサー、アーティストがいるからこそできることであり、わたし自身も彼らと組んで、最高の作品を作り出そうと日々まい進しているのです」

ピクサー社員に直撃インタビュー!
『モンスターズ・ユニバーシティ』


『モンスターズ・ユニバーシティ』
サンフランシスコの風土が作品にも影響?.

Q:ピクサーとディズニーという二大スタジオのトップを務めていらっしゃいますが、今後、それぞれのスタジオはどのように展開させていく予定ですか?

 ピクサーとディズニーはとても違う特徴を持ったスタジオです。サンフランシスコのシリコンバレーにあるピクサーは反骨精神のある集団で、そのことは「CGアニメーションなんかできるわけがない」と思われていた時代に、スティーブ・ジョブズと組み、あえてCGアニメーションを制作したことからも明らかでしょう。一方のディズニーは伝統を重んじています。1923年の創設以来、常にアニメを作ってきたということを誇りに思っているのです。

『モンスターズ・ユニバーシティ』
こちらはピクサーではなく、ディズニー・トゥーン・スタジオの最新作『プレーンズ』-(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 逆に共通点として挙げられるのは、どちらもフィルムメーカー主導のスタジオであるということでしょう。全ての映画のアイデアはフィルムメーカーから出されます。わたしはもともとピクサーでその方式でやってきて、ディズニーのCCOになったときに、ディズニーにもこの手法を持ち込みました。でも、共通点はそこまでですね。

Q:近年は監督をすることは少なくなりましたが、将来的に監督に復帰することはあるのでしょうか?

『モンスターズ・ユニバーシティ』
『モンスターズ・ユニバーシティ』のポスターに直々にサイン!

 映画監督だったわたしが製作総指揮を務めるようになり、それからCCOになったのはとても興味深いことだと思います。実は、プロデューサーになったときに一番不安だったのは、監督をやっていたときのような満足感を得られるかどうか、ということだったのです。ですが、実際にプロデューサーをやってみると、他の監督をサポートするというのも満足感を十分に得られるということがわかったのです。ただし、だからといって、わたしの意見が絶対というわけではありません。わたしはスタジオを作るときに、全ての意見は平等だという文化も一緒に作りました。縦社会ではなく、最高の意見こそが正しいという文化です。そうした素晴らしい意見にはみんなが興奮して、そういうときこそクリエイティブな爆発が起こるものなんですよ。

 もちろん、映画監督をやることも好きなので、やめるつもりはありません。今のところ『カーズ2』を最後に監督はしていませんが、数年後には新作を手掛ける予定です。映画監督でい続けるということは、わたしにとって、とても重要なことなんですよ。こういうやり方は、ハリウッドのスタジオでは珍しいことかもしれません。ハリウッドでは映画を作ったこともない経営陣が制作に口を出してくることがままありますからね。ですが、わたしが目指しているリーダーシップは、みんなが一緒になって一つの作品を作り上げるというものなのです。

『モンスターズ・ユニバーシティ』
これからも新作がめじろ押し!- Eric Charbonneau/WireImage/Getty Images

Q:今後のピクサーの展開を教えてください。 これからピクサーでは、2年に3本のペースで製作していきます。なぜかというと、7年前にディズニーがピクサーを買収したとき、ディズニーのCEOであるロバート・A・アイガーから「続編作品については、君たちに責任をもって作ってもらいたい」と頼まれていたからです。ですが、わたしたちは毎年1本のオリジナル作品を作るという信念を変えたくはありませんでした。なので、スタジオの規模を大きくすることで、オリジナルだけではなく続編も制作できるような体制を整えたのです。割合で言いますと、オリジナル2作につき、続編作品が1作という感じですね。それとは別に、ディズニーでは1年に1本の新作を、ディズニートゥーンでも年1作というペースを守れたらと思います。

 他のスタジオが制作ペースを上げるのは、お金を稼ぐことが主な理由です。ですが、そのためにクオリティーが犠牲になる場合が多々あります。わたしたちにとっては、クオリティーは何よりも重要なものなので、それを落とすことは絶対にしません。だからこそ、わたしたちは長い期間をかけて、製作体制を整えたのです。

こんな仕事をしています!
『モンスターズ・ユニバーシティ』
プライベートで親交のあるジョン・ラセターと宮崎駿


『モンスターズ・ユニバーシティ』
このシーンにも宮崎監督の影響があるのかも? - 『モンスターズ・ユニバーシティ』より

Q:宮崎駿監督とはかねてより親交があるとのことですが、どういった面に影響を受けていますか?

 宮崎さんの映画には、ハートがあり、感情を揺さぶるものがあり、美しさがあります。そして何より驚くべきことは、宮崎さんの映画には、アイデアなりキャラクターなりイメージなりの何かしらに、必ず一つは独創的なものが含まれているんです。例えば、『となりのトトロ』のネコバスがそうですよね。『崖の上のポニョ』でもポニョが波の上を走っていますが、そんなのは普通の人ならば思い付きもしないことです。そういったアイデアは、わたしたちを刺激してくれますね。わたしたちも、それに負けないような、もっとオリジナルなものを目指さないといけないと思わせてくれるのです。

『モンスターズ・ユニバーシティ』
宮崎作品への愛を明かすジョン・ラセターさん

Q:他に何かありますか?

 ハリウッド作品では観客を飽きさせないように、映画のスピードがアップしています。カット割りもどんどん速くなっていて……きっと、MTVやミュージックビデオの影響でしょう。ですが、宮崎さんの映画では、静かな瞬間を尊ぶような場面が必ずあるのです。そのことがコントラストとなって、アクションシーンをよりスリリングにしているのです。

 わたしたちが映画を作り始めた頃は、お偉いさんたちから「もっと映画をスピードアップしろ」と言われました。「じゃないと観客が飽きて、ポップコーンを買いに行ってしまうだろう」と。ですが、宮崎さんの映画を観た人ならば、それが間違っていることがわかるでしょう。ピクサーの作品がほかのアニメスタジオの作品と違うとよく言われるのは、宮崎さんの映画のように静かな瞬間を尊んでおり、なおかつハートがあるからだと思います。

Q:「静かな瞬間を尊ぶ」とは、具体的にどういったところでしょう?

 ちょっとオタクっぽいことを言いますね(笑)。宮崎さんの映画初監督作である『ルパン三世 カリオストロの城』の冒頭、FIATが走っていくときにタイヤがパンクする場面がありますよね。ジャンケンで誰がタイヤを交換するかを決めて、一人がタイヤを交換している間、もう一人は車の屋根に上がると空を見上げて、雲の動きを観察します。風が吹いて、草が揺れて……キャラクターが「平和だな」と言います。そして、その次の瞬間にはカーチェイスになっている。それも、映画史上類を見ないほどに素晴らしいカーチェイスのシーンです。そうしたコントラストが本当に素晴らしいと思います。わたしが宮崎さんから学んだ一番大きなことは、それですね。

映画『モンスターズ・ユニバーシティ』は2D・3D同時公開中

(C) 2013 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

特集「ピクサー訪問記 『モンスターズ・ユニバーシティ』編」バックナンバー

■第1限「ピクサーってこんな会社!」
■第2限「ピクサー社員のオフィスに潜入!」
■第3限「ピクサーで働く? それとも遊ぶ?」
■第4限「ピクサーがオリジナルにこだわる理由」

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