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福山雅治
『そして父になる』
演じたことのない役に挑戦したい
『そして父になる』福山雅治 単独インタビュー

取材・文:編集部 森田真帆 写真:金井尭子

6年間育ててきた息子が他人の子どもだったという事実を突き付けられた夫婦の姿を通して、家族、絆、そして父親とは何かを描いた是枝裕和監督の最新作『そして父になる』。本作で初めて父親役に挑戦した福山雅治は、血縁なのか、過ごした時間なのか、そのはざまで苦悩する一人の男を見事に表現してみせた。音楽活動以外でも活躍を続ける福山が、自身の役柄や審査員賞を受賞したカンヌ国際映画祭の様子を振り返った。

■現場で作り上げたキャラクター像

Q:ひと足先に上映されたカンヌ国際映画祭では約10分間という長いスタンディングオベーションに包まれました。上映中はどんな気持ちで作品を観ていましたか?

国際映画祭に参加すること自体が初めての経験だったので、最初は実感がなく、レッドカーペットを歩いているときも、正直ふわっとした気持ちだったんです。でも、上映開始後くらいでシーンや役者の芝居に鋭い反応があって、観客の皆さんのリアクションが本当に良かった。映画を観る力の高さに急に緊張してきまして、自分の出演する作品を隅々まで観られていることに身が引き締まる思いになりました。

Q:脚本を読んで、ご自身が演じられた「野々宮良多」という役柄に初めて接したときはどんな印象を受けましたか?

最初に脚本を頂いたときは、僕が演じる良多は、すごく癖のあるキャラクターには感じませんでした。割とどこにでも居そうな人物だと。でもそう感じたのは「人は日常会話の中で、そんなにたくさんの言葉を話さない」と言う、2行以上のセリフは書かない監督が紡ぎ出した、せりふの純度の高さのせいだったんだなと。

Q:では、現場で演技をする過程で、良多の人物像はどのように作り上げていったのでしょうか?

映画の中での良多は、決していい人ではないし、一般的にいう優しいとか愛想のいい男ではない。でも先にお話した通り、その人物像は監督の中には明確にあったはずなので、現場で是枝監督と話し合いながら作っていきました。

Q:良多と息子の会話はとても自然でしたね。

是枝監督は、子どもたちに台本を渡していないので、映画の内容も全く知らない状態でした。セリフも現場で伝えられたことを言っている感じなので、子どもたちには芝居をしているという感覚がないんですよね。非常に自由な状態で現場にいるので、自分の役柄をどんなに作り込んでも、いい意味で子どもたちに壊されていく。だから、役づくりもあまり意味がありませんでした(笑)。

■劇中の夫婦関係を、福山自ら分析!

Q:妻役の尾野真千子さんとの共演はいかがでしたか?

尾野さんは、いつもご自身で、自分が演じる役柄の裏設定を詳しく作るらしいんです。「趣味みたいなもの」とおっしゃっていたんですが、一度聞いたら、かなり細かくて長かったので途中までしか聞けませんでした(笑)。僕は、裏設定を考えない方なので、面白かったですね。

Q:自分勝手な夫に対して、妻がグッと我慢する。そんな夫婦関係がとてもリアルだったのですが、二人の関係をどのように思っていましたか?

良多は、こうあるべきという理想がすごくある人なので、妻は家庭を支える人、子どもにはいい教育を受けさせるもの、というステレオタイプな人間だと思うんです。それに対して、妻のみどりは女性としていかに夫に合わせてあげられるか、支えてあげられるかと、一生懸命努力している。でも良多は、きっとついてくるものだと安心している部分があるんですよね。

Q:リリー・フランキーさんと真木よう子さんが演じる夫婦とは、対照的でしたね。

やっぱりリリーさんの家の様子を見て「家族っていいな」って思いますよね(笑)。良多たちを見てそう思うかどうかはわかりませんが、世の中には凸と凹のようにきちんと関係が出来上がっている家庭もあると思うので、一概に良多たちのような関係が悪いとは言えない。ただ、コミュニケーションが少ない分、何かトラブルがあったときには一緒に乗り越えていくというよりも、関係が修復しにくい夫婦かもしれません。

■常に演じたことのない役に挑戦していきたい

Q:『そして父になる』というタイトル通り、良多が苦悩しながらも「父」になっていく様子が描かれていました。良多が抱える苦悩を、福山さんはどのように受け止めていたのでしょうか?

6年間一緒に過ごしてきた子どもが自分の息子としていとおしい、という思いは大前提として、良多はそもそも子どもとどう接していいのかわからない人間。でもなぜ彼がそうなってしまったかというと、良多には自分が愛された経験がないからなんですよね。だからこそ、愛することやいとおしむということはどういうことなのか? を必死に模索している男なんだと理解して演じました。映画の中で、良多の心の中に父性が芽生えたかどうか、それは観てくださる方々のご判断になると思います。ただ僕が思うのは、父親としての良多はここから始まるんじゃないか、ということですね。

Q:今回は初めて父親役に挑戦されましたが、次はどんな役に挑戦してみたいですか?

特にこういう役柄を演じたい、というのはありませんが、自分が演じたことのない役に挑戦したいという思いは常にあります。今回の作品もそうですが、僕が父親役をやりたかったからではなく、是枝監督が僕に父親という新しい役柄を下さった。いろんな監督さんや皆さんがどんな自分を見てみたいのかを知りたいし、与えられた役柄に挑戦していきたいと思っています。

主人公・野々宮良多は、プライドが高く、人を見下したような話し方で時に相手をいら立たせてしまう男だ。爽やかで物腰柔らかな普段の福山のイメージとは異なる。だが、良多が隠し持つ繊細さやコンプレックスを、まるで大切な友人の話をするかのように真剣なまなざしで語る福山を見ていると、誰よりも深く良多の内面を理解していているのだと感じた。共通点があるというよりも、良多と深い部分でつながった福山が見せる繊細な演技をぜひスクリーンで堪能してもらいたい。

映画『そして父になる』は9月28日より全国公開(9月24日~27日先行公開)

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