シネマトゥデイ

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松本人志監督&大森南朋
『R100』
人間が二人いると、SとMの関係が生まれる
『R100』松本人志監督&大森南朋 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 撮影:奥山智明

独特の世界観でファンを魅了する松本人志監督の最新作『R100』は、演技派俳優・大森南朋を主演に迎えた衝撃の物語だ。謎のクラブに入会してしまった家族持ちのサラリーマンが、日常の中に突如現れる女王様に翻弄(ほんろう)され、やがて想像を絶する事態へと突き進んでいく……。本作が「自分にとっての分岐点」と豪語する松本監督と、ドMの主人公・片山を文字通り体当たりで演じ切った大森が、ガチで大変だったという撮影のウラ話や、それぞれのSM観を熱く語り合った。

■松本監督がメチャクチャの限界に挑戦!

Q:松本監督は、本作を「振り切れるだけ振り切る」と考えて撮ったそうですね。メーターはフルに達したのでしょうか?

松本人志監督(以下、松本監督):そうですね、振り切り過ぎるとわけがわからなくなっちゃうんで、そこは考慮しつつも、まあ、メチャクチャの限界近くまではいけたかなと思っています。

大森南朋(以下、大森):最初に台本をいただいたとき、「こ……コレか!」と思いました。「コレ」の部分をどう捉えていただいてもいいんですけど(笑)、出演することに迷いは全然なかったです。松本監督に呼んでいただけるのなら、ぜひ現場に行ってみたいと思いましたので。

松本監督:僕が言うのも何なんですけど、大森さんは今回の役でまったく損をしていないと思っていて……。

大森:得してますか?

松本監督:んー(苦笑)。でも、僕はカッコいいなと思っています。あそこまでやっていただけて、本当にカッコいいですよ。

Q:お二人の映画初顔合わせに期待するファンも多いと思うのですが、ご一緒していかがでしたか?

松本監督:こういう映画なので、観る人に緊張感を与える方がいいと思いまして。だから、コメディー色のある役者さんだと違うし、途中で脱線しそうになる話なので、お芝居も当然うまくないと引き戻せない。そう考えたときに、大森さんだったんですよね。……大森さんって、なんかちょうど良くないですか?

大森:あんまり褒められていない感じが……(笑)。ニュアンスはわかります。

松本監督:もう、ちょうどいいとしか言いようがないんですよ(笑)。

大森:松本監督は、そのシーンごとに丁寧に説明してくださって、僕がやりやすくなるように気を使ってくださるんです。スタッフの皆さんも、監督が次に何を言うのか、何をやりたいのか、常に意識を集中させていて、松本組の大きさを感じました。

■真冬の過酷な撮影で、大森が逃亡寸前に!?

Q:Mの役だけに、かなり過酷な撮影があったように思うのですが……?

大森:はい、「寒い」とかはありましたけど……。

松本監督:僕は、何回か思いましたよ。大森さん、明日はもう来ないんじゃないかって(笑)。

大森:ハハハハ! 確かに、「あー、あさってか……もう明日か……」と、複雑な思いで本番当日を待っていたシーンはありました(笑)。でも、いざ撮影が終わると、「よし、うまくできた!」とか、満足感みたいなものがあるんです。やっている瞬間は、監督が求めているものに応えたいという気持ちが強いので、何だか面白いんです。

Q:松本監督の要求が、現場でエスカレートしていくようなことはありませんでした?

大森:台本にはト書きで「噴水に引きずり込まれる片山」って書いてあっただけなのに、本番では「バッシャーン! ザッバーン!」とものすごい勢いで噴水に突き落とされたことはありました(笑)。

松本監督:あの日は特に、一番寒い日だったんですよ(笑)。

大森:本番は一発だけでしたし、ちゃんとシャワーも用意していただけたので大丈夫でしたけど(笑)。

松本監督:僕は、最初からしっかり決めて撮るというよりは、現場の流れを見て、「なるほど、それはそれでいいな」ってなることが多いんです。7、8割ほど最低限のことを伝えたら、あとはキャストやスタッフに任せるしかないですし。そこらへんは、良く言えば柔軟なのかなあと思っているんですけどね。

■ムチ、蹴り、緊縛、ロウソク……責めのシーンに悶絶!

Q:女王様たちのお仕置が、バリエーション豊かでかなり強烈でしたね。

松本監督:現場に本物の女王様がスタンバイしていて、SMの指導をしてもらったんですよ。縛り方とか、プロのテクニックは本当にすごい。それを受ける大森さんは大変だったと思いますけど。

大森:ケガのないようにアクション担当のスタッフさんがガードを着けてくれたり、革じゃなくて柔らかいゴムのムチや、熱くないロウソクを用意していただいて、やさしくはしてくださったんですけど。でも、痛いときは痛いです(笑)。

松本監督:いや、ムチがゴムだってそれなりに痛いですよ。ロウが熱くないっていうたって、熱くないわけがないですよね。だって、火で溶けているロウなんだから(笑)。

Q:大地真央さん、寺島しのぶさん、冨永愛さん、佐藤江梨子さんほか、豪華女優陣の女王様ぶりも見どころですが、リアルに女王の迫力を感じた方といえば?

松本監督:皆さん本当にスゴイ女優さんなんですけど、やっぱり大地さんなんじゃないですかね。本番に入ったときのスイッチの入り方がものすごいんですよ。ムチを打ち続けるときのエンジンのかかり具合とかね。

大森:本当に、皆さんかなりのインパクトをお持ちだと思います。その中であえて言うなら、現場で最初にお会いした冨永さんですかね。造形やスタイルがバツグンで、コートを脱いでボンデージ姿になったときの動きがカッコよくて、リアル「じゅわ~ん」でした(笑)。

松本監督:「じゅわ~ん」っていうのは、片山がエクスタシーを感じるときの表現なんですよ。台本や現場では「じゅわ~ん」って呼んでいたんですけど、画面に文字は出てこないんですよね(笑)。

■監督はS・俳優はM、職業別に見るSM傾向とは?

Q:松本監督は、以前からSMに関して独自の考えをお持ちだったそうですね。

松本監督:面白いもので、人間が2人いると、どうしてもSとMの関係が生まれてしまうんですよ。僕は相方(浜田雅功)と長くコンビをやっているうちに、僕がMになったほうが笑いのポイントを稼ぎやすいと気付いたんです。相方はよりSになったほうが笑いを導きやすいし、番組を仕切るときもうまくいく。そうしていくことで、コンビとしての二人の関係性が生まれていったんでしょうね。本来の僕はMではないと思うので、ダウンタウンの僕は職業Mなんですよ。

大森:職業で言うと、俳優はM寄りなんじゃないかなと思います。監督に言われたことをやる、という意味ではMです。

松本監督:僕もそう思います。で、監督という職業はSなんですね。撮影の途中くらいから、やっぱりSなんだろうなと思いました。大森さんは大変な役なので、最初は申し訳なさも感じていたんですけど、そんなことも言っていられないというか、監督はビシッとしなければいけないと実感しましたね。とはいえ、ちゃんと仕切れてはいないんですけど(苦笑)。

Q:職業によってS傾向とM傾向があるなんて、とても興味深いですね。

松本監督:現場での監督はSなんだけど、これが編集ではMになるんです。いろんな素材を一人で抱え込んで、ここは大変なシーンやったから何とか生かしてあげたいとか、キャストやスタッフへのご奉仕の精神を感じるんですよ(笑)。

大森:今回、僕の演じたシーンは、ほぼ使っていただいています。ぜひ、映画館に足を運んで、映画を観るというよりも体感していただきたいです。

松本監督:映画にかかわらず、僕の作ってきたものの結論というか、一つの分岐点になる作品だと思うので、しっかり観てほしいと思います。

「SMは信頼関係がないと成り立たない」といわれているが、今回の松本と大森は、お互いへの絶大なリスペクトがあったからこそ、監督&俳優の理想的なSM関係が構築できたのだろう。他に類を見ない独創的なイマジネーションを映像化した松本監督も、監督の過激な要求に見事応えてみせた大森も、プロとして、大人の男として、本当にカッコいい。変化のない日常に飽き飽きしている人、かつて味わったことのないような刺激を求めている人は、衝撃度MAXの松本ワールドに身を委ねるべし!

『R100』は10月5日(土)より全国公開

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