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知られざる王室の苦悩…イギリス王室映画特集

今週のクローズアップ

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今週のクローズアップ ありがとう、知られざる王室の苦悩…イギリス王室映画特集

 現在公開中の映画『ダイアナ』は、36歳の若さで急逝した元英国皇太子妃ダイアナの最後の2年間を映し出した作品だ。一人の人間でありながら、王家に属したことで国を率い、人々の関心を一身に集めることになったキング、クイーン、プリンス、プリンセスの苦悩は並大抵のものではない。今週は、そんな英国王室が抱える苦悩を描いた映画を特集する。

イギリス黄金期を築いた2人の女王の苦悩

 16世紀と19世紀のイギリスの2度の黄金期は、どちらも女王が国を治めた時代だった。ケイト・ブランシェット主演映画『エリザベス』(1998)で描かれたのが、1度目の黄金期を築いたエリザベス1世(1533~1603)だ。草原で侍女たちと無邪気に遊ぶ少女だったエリザベスが、25歳で即位して血なまぐさい謀略の渦の中心に身を置き、恋人の裏切りや戦争などを経て「バージンクイーン」としてイギリスに身も心も捧げる決意をする姿はりりしくも痛ましい。女王になる前も、父ヘンリー8世に母アン・ブーリンを処刑され、腹違いの姉メアリー1世によってロンドン塔に幽閉されるなど、そのカリスマ性をたたえられる一方で、苦難に満ちた人生を送っていたといえる。続編『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(2007)ではそんなエリザベスの黄金時代、ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソン共演の『ブーリン家の姉妹』(2008)ではエリザベス誕生までが取り上げられている。

 

ブルーレイ『エリザベス』発売中
価格:1,980円(税込み)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
Film (C) 1998 Universal Studios. All Rights Reserved.

 2度目の黄金期は、ヴィクトリア女王(1819~1901)が統治した時代。彼女を主人公にした映画『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)は、イングランド・オールロケで撮影された。誰もが憧れる美しい装飾品に囲まれた生活の中で、エミリー・ブラントふんするヴィクトリアが少女時代から感じていたのは「息苦しさ」だけ。唯一の世継ぎだったヴィクトリアは母親による厳重な管理下に置かれ、好きな本を読むことも階段を一人で上がることも許されず、さらに絶えず腹に一物ある人間が近づいてくるという環境は、健やかな成長の場所としてふさわしいはずがない。それでも活気に満ちた女性に成長したヴィクトリアは18歳という若さで君主となり、夫のアルバート(ルパート・フレンド)と共に統治を行った。叔父であるベルギー王レオポルドが力を広げるための駒としてヴィクトリアに近づいたアルバートだが、結果ヴィクトリアと本当に恋に落ちてしまうさまは『エリザベス』にはないみずみずしさ。しかしそんな幸せも長くは続かず、アルバートが若くしてこの世を去った後、ヴィクトリアは「陰鬱(いんうつ)な未亡人」として知られるようになった。

 

ベストカップル! - 映画『ヴィクトリア女王
世紀の愛』よりアルバート(ルパート・フレンド)とヴィクトリア(エミリー・ブラント)
Momentum Pictures/Photofest/ゲッティ イメージズ

吃音の王とてんかんの王子の苦悩

 障害のある人間にとって当時の王室は生きにくい場所だった。吃音(きつおん)の王・ジョージ6世とてんかんと脳の発達障害があったジョニー王子という兄弟がその代表だ。『英国王のスピーチ』(2010)でコリン・ファースがふんしたジョージ6世は、幼い頃から吃音に悩まされてきたものの、王族ゆえに多くの人々の前でスピーチすることを求められた人物。父ジョージ5世の崩御後、兄エドワード8世が即位するも、彼は離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚するためにさっさと王位を返上。思わぬ形で王になる羽目になったジョージ6世が妻エリザベスの前で泣き崩れ、言語療法士ライオネル・ローグにいら立ちをぶつけるシーンには彼の苦悩の深さが如実に表れている。それでもたゆまぬ努力と周囲の支えによって戦争演説を行ったジョージ6世は、国民から慕われたイギリス国王として歴史に名を残すことになった。

 
DVD『英国王のスピーチ』発売中
価格:1,500円(税込み)
発売元:ギャガ 販売元:ハピネット
(C)2010 See-Saw Films. All rights reserved.

 その一方で、ジョージ5世の6番目の末っ子ジョニーは、13年という短い生涯を終えるまで日の目を見ることのなかったプリンスだ。テレビ映画『ロスト・プリンス ~悲劇の英国プリンス物語~』(DVD題『プリンス ~英国王室 もうひとつの秘密~』)(2003)では、幼少期にてんかんの症状と脳の発達障害が明らかになったジョニーが、イメージを大切にする王室によってその存在を隠され、両親、兄弟を含む外界との接触をシャットアウトされた事実が語られる。どんどん小さくぼろぼろな家に移されていき、板を打ち付けられた窓の隙間から兄弟の姿を追うジョニーはふびんすぎるが、そんな環境でもプリンスらしさを失わずに生き生きと毎日を生きた彼の姿は胸に迫るものがある。彼こそが、『英国王のスピーチ』でコリンふんするジョージ6世に「優しい子だった。世間から隠されて、13歳で世を去った。いい印象を与えないからだと……」と言及された不遇のプリンスだ。

 
DVD『プリンス ~英国王室 もうひとつの秘密~』発売中
価格:3,990円(税込み)
発売・販売元:エイベックス・マーケティング
(c)2006 Granada Screen (2005) Ltd/Pathe Renn Productions SAS/BIM Distribuzione
ダイアナとエリザベス女王の苦悩

 現在公開中の映画『ダイアナ』は、世界で最も有名なプリンセス・ダイアナの秘められた恋をナオミ・ワッツ主演で描いた作品。夫のチャールズ皇太子と別居後、依然として華やかなスポットライトを浴び続けるダイアナだが、王室の意向で2人の息子ともほとんど会わせてもらえず、広い宮殿で一人、簡素な食事を取る姿の寂しさといったらない。心臓外科医ハスナット・カーンと出会い恋に落ちるも、加熱するパパラッチの取材や文化の違いが障害となって結ばれず、ハスナットに「50億人が『愛している』って言ってくれるわ。でも、わたしのそばには誰もいない」と切実な思いをぶつけるダイアナからは、彼女がプリンセスであることに翻弄(ほんろう)された、ただ誰かに愛されたいと願った一人の女性であることがひしひしと伝わってくる。


映画『ダイアナ』よりナオミ・ワッツふんするダイアナ元妃
(C) 2013 Caught in Flight Films Limited. All RIghts Reserved

 そんなダイアナが1997年8月31日、パリで交通事故に遭い36歳という若さで急逝した後の王室の危機とエリザベス女王の姿を映し出したのがヘレン・ミレン主演映画『クィーン』(2006)だ。プリンセス時代から無断で内部情報を告白するなど王室にとっては頭痛の種であり、チャールズ皇太子との離婚によって今や一民間人となっていたダイアナに対し、本来エリザベス女王は公式声明文を出す立場にはなかった。それだけに、その対応が薄情だとして国民やマスコミからの非難を一身に浴び、何らかのアクションを取ることを迫られることになった女王の苦悩は察するに余りある。個人の名前をタイトルにした『ダイアナ』が一人の女性の生きざまを描く一方で、「クィーン」という役職をタイトルにした本作では一人の女王の生きざまが描かれているのも興味深いところ。両作品を併せて鑑賞すれば、王室が抱える苦悩をより深く理解することができるはずだ。

映画『ダイアナ』は公開中


DVD『クィーン』発売中
価格:1,500円(税込み)
販売元:エイベックス・マーケティング
(c)2006 Granada Screen (2005) Ltd/Pathe Renn Productions SAS/BIM Distribuzione
文・構成:シネマトゥデイ編集部 市川遥

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