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麻生久美子
『ばしゃ馬さんとビッグマウス』
がむしゃらに頑張るのってカッコいい!
『ばしゃ馬さんとビッグマウス』麻生久美子 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:吉岡希鼓斗

『純喫茶磯辺』『さんかく』などで知られる気鋭・吉田恵輔監督が撮り下ろした映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』。麻生久美子演じる脚本家を目指す34歳独身の馬淵みち代と、安田章大(関ジャニ∞)ふんする超ビッグマウスな26歳の脚本家志望・天童義美という、夢を諦められない男女の葛藤を繊細かつユーモラスに描く人間ドラマだ。仕事も恋もうまくいかないみち代をリアルに体現した麻生が、吉田監督ならではの演出法や初共演を果たした安田との思い出、さらには自身の夢についてなど、本音トークを繰り広げた。

■吉田監督のプレッシャーにドキドキ!

Q:夢と現実のはざまでもがくヒロインみち代の姿が、切ないほどリアルでした。演じがいのあるキャラクターだったのでは?

そうですね。わたしも夢に向かって頑張っているんですけど、彼女ほどがむしゃらなわけではないので、頑張るのってカッコいいなと改めて思いました。みち代は吉田監督が昔の自分をモデルにした役なんです。撮影の合間に、監督が夢を追い掛けていた頃のお話をしてくださったので、そのエピソードを参考にさせてもらいました。

Q:その吉田監督がみち代のモデルということで、プレッシャーも大きかったのでは?

大きかったですよー! 「監督は、どう思っているんだろう?」って思いながら撮影していましたし、実際にプレッシャーをかけられていましたから(笑)。はっきり言われたわけじゃないんですが、吉田監督はわたしがいろんなものをちゃんと受け止めた上で、それを演技に反映させてほしいと願っていたと思います。だからこそ、自分の過去の話をしてくださったんだと思います。

Q:なるほど、雑談の中でも演出されていたんですね。

そう、トータル的に。もちろん現場で演出もしてくれますけど、雑談も含めて全てが演出だったと思います。

■麻生久美子がブリキの木こりのコスプレ!

Q:みち代が元カレ・松尾(岡田義徳)の前で泣き崩れるシーンは、29テイクも撮り直したそうですね?

そうなんです。あのシーンがすごく大切なのはわかっていたんですけど、最後のクランクアップの日だったんですよ! それだけで胃がキリキリしていたのに、吉田監督が撮影中盤くらいから「あのシーンなんだけどさ、どうしたらいいかわかんないんだよね。麻生さんに任せたから!」って何度も言うんですよ(笑)。でも、それはウソだと思うんです。本当はわかっていてプレッシャーをかけていたんじゃないかな(笑)。でも、そんな監督が改めて好きになりました。

Q:故郷の女友達の結婚式の余興で、みち代がブリキの木こりのコスプレをして歌う場面など、爆笑シーンも見どころですよね。

余興のシーンは、演技とはいえ本当に恥ずかしかったんですよー。現場で監督が急に「フライングして歌ってみようか」って言うもんだから、一緒にステージに立った友人より先に歌いだしちゃって恥ずかしい、みたいな感じになっちゃって。招待客役の皆さんもシラーっとした顔で見ているし、リアルに辱めですよね(笑)。顔中を銀色に塗られたのも恥ずかしかった! まあ、役だから何でもやりますけど(笑)。

Q:友達に見栄を張ったり、嫉妬したりと、女同士の関係もリアルで興味深かったです。

まさに“女同士のあるある”ですよね。みち代がライバルの前で強がってしまうシーンとか、「うわ、イタい!」と思いながら演じていました。でも、彼女はすごく人間らしいんですよ。仕事につながりそうな人にはすごく愛想がいいのに、仲の良い友達の前ではちょっと偉そうになる。相手によって態度をコロコロ変えちゃうんですよね。そんなみち代の人間らしさがすごく好きです。

■安田章大の天真爛漫(らんまん)さに助けられた

Q:天童役の安田さんとの軽妙なやり取りが絶妙でしたが、ご一緒していかがでしたか?

すごく楽しかったです! 初日から安田さんとの掛け合いが多くて緊張していたんですけど、本番前に彼がいろいろと話し掛けてくれたので、すぐに緊張が解けました。安田さんのおかげで距離を縮めてもらえたような気がします。わたしも人と話すのは好きなんですけど、自分からはあまり話し掛けたりしないんです。相手も話したいとは限らないんじゃないかなとか、いろいろ考えちゃうタイプなので(笑)。安田さんのように天真爛漫(らんまん)に接してくださると、本当にありがたいです。

Q:安田さんの天真爛漫(らんまん)なところは役柄と重なりそうですね。

でも、安田さんはビッグマウスな天童とは全然違いますよ。だからこそ、よくあんなに自然に演じられたと感心してしまいます。すごく頭のいい方で、冷静に周りを見ながら気を使ってくださるんです。それでいて気を使っている感じを出さないという、本当に賢い方です。そんな安田さんが天童を演じたからこそ、かわいらしさや憎み切れない感じがうまく出ていたんだと思います。

■過去に何があっても、今が一番良いはず!

Q:焦燥感で元カレに依存しそうになるみち代。麻生さんは映画『モテキ』でも重い女性の役を演じていましたが……?

『モテキ』は重かったですね。わたしも昔は重い女だったので、気持ちはよくわかります(笑)。見えないですか? 今はそんなことないですけどね。重い女にならないようにする一番の方法は、やっぱり次の恋愛です。同じ相手だとどうしても同じようなことを繰り返しちゃう。それでも成長できる人もいるんでしょうけど、わたしの場合は違う人と恋をして「もうあんなふうにはならない!」と思ったことで、成長できました。

Q:ちなみに、麻生さんは夢を諦めそうになったり、挫折感を味わったことはありますか?

そういった感情からは、うまく逃げてきたような気がします。わたしの場合、幼稚園の頃から夢はアイドル歌手になることだったんですよ。でも、田舎の子どもだったので、どうしたらアイドル歌手なれるか方法がわからなかった。取りあえずそれらしい事務所に入ってみたら、歌手を手掛ける事務所じゃなかったんですね。それでお芝居をやり始めて、結果的には良かったんですけど、実はアイドル歌手への未練はあったんです。ただ、それを諦めたのではなく「こっちも楽しいし、大きく見れば芸能界。わたしにはこっちのほうが向いている」って考えるようにしたんです。

Q:そのお話、すごく参考になります!

今は今で、このお仕事が好きでやらせてもらっていますけど、本当はもっと到達したい地点があって、全然届いていないんです。でも、たとえ夢や目標とは違う結果になっても、こっちで良かったんだと自分に言い聞かせるでしょうね。後悔や失敗もあるけど、「今が一番いいはずだ」と思うようにしています。

Q:では、最後に麻生さんの夢を教えてください。

夢は言いたくないんですよね。口にしたらダメになるような気がして。やっぱり健康が一番かなって。その上でやりたいことがやれたらいいと思っています。

愛犬を連れた麻生が朗らかに取材現場にやって来た瞬間、周りがパッと明るくなった。その輝きは、内面からあふれる人間力によるものなのだろう。とてもこまやかな気配りをする彼女自身にも、安田に対する「気を使っていることを出さない賢い人」という形容がピッタリ当てはまる。そんな麻生がシリアスからコミカルまで、「ここまでやってくれるの!?」と感嘆するくらいいろんな表情をさらけ出し、女優としての魅力を最大限に引き出している本作。さすが吉田監督、やはり何もかもわかって演出していたようだ。

映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』は全国公開中

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