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上戸彩&高良健吾
『武士の献立』
おいしい料理がつなぐ夫婦の絆
『武士の献立』上戸彩&高良健吾 単独インタビュー

取材・文:前田かおり 撮影:金井尭子

加賀藩に実在した料理方の武士、舟木伝内と息子・安信が残したレシピ集「料理無言抄」を題材に、料理の腕を見込まれて由緒ある包丁侍の家に嫁いだヒロインが、料理の苦手な跡取り息子とぶつかりながらも夫婦の絆を育んでいく姿を描いた『武士の献立』。本作の主演を務めた上戸彩と高良健吾が、『釣りバカ日誌』シリーズなどで知られる朝原雄三監督と共に作り上げた、ほのぼのと心温まる人情喜劇の波瀾(はらん)万丈の撮影秘話を明かした。

■おいしそうな料理が語るおもてなしの心

Q:こんなにおいしそうな料理が並んだ映画ってないんじゃないかというぐらいに、おいしそうな料理が並びましたね。

上戸彩(以下、上戸):おいしそうなだけじゃなくて、料理を通して、作った人間の温かさや細やかさが出ていると思うんです。例えば、春がかぼちゃのいとこ煮を作るシーン。前の晩にとても傷つくことがあった後で、煮物を作ったら、味がしょっぱいとか濃いとか。そういうふうに描くドラマってよくあると思うんですが、この映画では「ほくほくしておいしい」とお義母さんに褒められる。撮影中、高良くんがよく言っていたけど、「日本料理っておもてなしだな」ってつくづく感じる映画だと思いました。

高良健吾(以下、高良):確かに、料理が前面にフィーチャーされているけれど、作っているのは人なんですよね。料理が人と人をつないでいるというお話だと思います。

上戸:あ、わかるわかる!

Q:加賀の海の幸、山の幸を使った饗応料理から、家庭の味までいろいろ出てきましたが、撮影中に味見は?

上戸:本当においしかったんですよ。特に、わたしはすだれ麩(ふ)の治部煮と、かぼちゃのいとこ煮、白みそのおみそ汁が好きですね。今でも味を覚えています。白みそって、あまり食べる機会がないじゃないですか。だから余計においしくて、作り方のコツも教えていただきました。おみそはあまり煮込まず、野菜は別で煮て最後にさっと火を通すといいんですって。

高良:僕も治部煮が好きでした。鴨肉を使った料理も多くて鴨好きな僕はうれしかった。それから、加賀の野菜を使った加賀料理がおいしかったですね。

■実生活での料理の腕前は……?

Q:映画の中では包丁さばきも披露されているお二人ですが、実生活では……?

高良:僕は全くしないんです。上京したばかりの頃、外食はお金が掛かるからと、朝は普通のトースト、昼はハムをのせて、夜は卵をスクランブルエッグにしてのせるとか、食パンを軽く調理していたぐらいで。

上戸:えらい、えらい。

高良:それぐらいだから、包丁使いの練習は大変でした。

上戸:わたしは家ではササッとできるものしか作らないんです。豚汁とか、豆腐ハンバーグとか。だから今回、特に川魚は大変でしたね。うろこを取るのにとても手間がかかるし、骨が硬いから女の力では大変で。もう川魚をさばくのはコリゴリ(笑)。

高良:大変な思いをして料理に臨んだ体験を振り返ると、料理は相手のことを思うもてなしの心がないと、できないものなんだなと思いました。

■どんな時代も夫婦は相性で決まる!?

Q:安信は料理侍の家に生まれたことに反発し、料理が人と人をつなぐということを理解できないキャラクターでしたね。

高良:安信がすねている感じは、わかるんです。後継ぎだった兄が亡くなり、自分が包丁侍の家を継ぐことになった。そのため、本当に自分がしたかったことができなくなり、好きな人とも結ばれない。この時代では当たり前のことかもしれないけれど、自分の中では引きずる思いもあったと思うんです。だから、諦めや覚悟も必要で、なかなか自分の問題と向き合えなかったんじゃないかなと。実際は、包丁侍の家の人間にふさわしく、食に関してのセンスはあったわけですが。

Q:そんな安信に料理指南のため嫁ぐ春は、舟木家にとって理想的な嫁。上戸さんはここのところ、映画『おしん』の耐える妻、テレビドラマ「半沢直樹」のできた妻と、いい妻キャラが続いていますね。

上戸:こういう役どころを演じると、上戸彩って料理うまいんだろうなとか、いい嫁風に思われて役得です(笑)。ただ今回もそうだし、「半沢」もそうでしたけど、夫婦って相性が大事だと思うんです。当時は、侍の夫に対して強く言い返した時点で斬られても不思議じゃない。そんな中で、安信は春の意見を、優しさゆえに受け入れる。そんなところにも相性の良さがにじみ出ていますよね。

Q:互いの反発や戸惑いとか、心の動きがよく表れていると思ったのですが、脚本にも細かく描写されていたのでしょうか。

上戸:そうですね。わたし自身も細かく書き込まれている方が、どんどん役に入り込めるし、頭の中で映像化するときにも役立ちます。ト書きを読んで春の心の揺れを表現するヒントにしたり。ただ、春が突然、安信を好きになる瞬間に関しては脚本には細かく書かれていなかったんです。具体的に言うと、雨の中、安信が帰ってきて、春の胸ぐらをつかんですごむシーン。そこは監督と話して、春がドキッとする表情や感情が、それまでとは違って女としての感情に見えるように演じました。

■今の時代らしい時代劇の誕生

Q:時代劇の難しさ、楽しさについてお聞かせください。

高良:殺陣は大変でした。それと、「普通に」武士を演じるということが難しかった。演じれば演じるほど、もっとうまくやれるんじゃないかと思うし、今になって(こうすれば良かったと)気付くこともあります。ただ、この作品って、時代劇なんだけれど、枠にハマった時代劇ではない。例えばセリフにしても現代的とまでは言わないものの、時代劇然としていないんです。監督も「多くの人に楽しんでもらえる作品を作りたい」とおっしゃっていましたし、そんな時代劇に仕上がっていたらいいなと思います。

上戸:わたしもその通りだと思います。今までいろんな俳優さんが作り上げてきたものを大事にしなくちゃいけないと思うし、少しでも近づきたいと思ったんですけど、現場で監督が、時代劇独特の間合いや所作を省くことが多くて。でも実際に出来上がったものを観たとき、現代劇っぽさがあることで見やすいと感じる人も多いんじゃないかなって。また新しい時代劇ができたという感じがしています。

Q:2013年も終わりですが、お二人とも例年以上に、作品に恵まれて活躍された年だったと思います。振り返ってみていかがでしょう。

上戸:今年は気が付いたら、映画を3本もやらせていただいていました。ちょうど去年、映画をやりたいと言ったら、それが見事にかなった(笑)。だから、すごく幸せな一年でした。大変ではありましたが、こうやって残せる作品をやれたというのはすごく幸せなことなので。

高良:ここ何年間、年末にいつも言ってきたことですが、「来年に期待」です。作品って残っていくものだから絶対に手を抜きたくない。いつも精いっぱいやってはいるけれど、それでも撮影を終えてみるともっとできたんじゃないかなと思ったりする。『武士の献立』も、その時は精いっぱいやったけれども、時間がたった今はもっとやれたはずだと思うところがあります。だから、もっと来年はやれると思って頑張りたいですね。

年上の世話女房と、年下の悩める夫。スクリーンで演じた役そのままにインタビュー中も終始、高良をリードしつつも、彼の話に、「うんうん、わかるわかる」とバックアップして場を盛り上げる上戸。そんな二人の何とも息の合った感じから、撮影現場での和気あいあいとしたムードが見てとれる。そんな二人が加賀百万石の伝統の料理と、そのもてなしの心を受け継ぎながら、固い絆を育んでいった夫婦のドラマは、誰の心にもほんのり温かくしみ入るはずだ。

映画『武士の献立』は全国公開中

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