シネマトゥデイ

R・ハワード監督、C・ヘムズワース、D・ブリュール
『ラッシュ/プライドと友情』
圧倒的なレースの裏側にあったヒューマンドラマ
『ラッシュ/プライドと友情』R・ハワード監督、C・ヘムズワース、D・ブリュール 単独インタビュー

取材・文:山口ゆかり 写真:奥山智明

逆転に次ぐ逆転、致命的なクラッシュとそこからの復活! F1史に残る1976年を再現し、その裏側にあったヒューマンドラマに迫った『ラッシュ/プライドと友情』。プレーボーイでレースでも直感型の陽気なジェームス・ハントを演じたクリス・ヘムズワースと、隙のないレース運びが光る冷静沈着なニキ・ラウダを演じたダニエル・ブリュール、そしてメガホンを取った『フロスト×ニクソン』などのロン・ハワード監督が語った。

■セクシーで危険でグラマラスなF1

Q:F1をテーマにした理由を教えてください。もともとF1のファンだったのでしょうか?

ロン・ハワード監督(以下、ハワード監督):いや、ファンというわけではなかった。ただ、キャラクターとF1のドラマとしての可能性に惹(ひ)かれたんだ。深い知識はなかったけど、F1はセクシーで危険でグラマラスなものと思っていた。それと1970年代はクールに描けそうだった。大人の知的な楽しみとなり得るキャラクター、かつ大画面にふさわしい題材というのは、めったにないコンビネーションだ。観客に映画館まで足を運んでもらえる新しいものになると考えたんだ。

Q:お二人は実際にF1カーを運転されたそうですね。クラッシュしそうになったというのは本当ですか?

クリス・ヘムズワース(以下、クリス):ダニエルが運転しているときにタイヤが外れたんだよ。車が弾んでしまい、グッグッグーッとようやく止まったんだ!ダニエルは固まっていたよ(笑)。

ダニエル・ブリュール(以下、ダニエル):本当に怖かったんだ! それなのにジェームス・ハント(クリス)は笑っていた(笑)。一瞬で判断しなくてはならないんだ。おかげでF1がどれだけ危険なものかわかったよ。

Q:よく知られた1976年のF1を映画化するのは難しかったのでは?

ハワード監督:皆、大まかには何が起こったか知っている。でも、どのように起こったかは知らない。誰が勝ったとか、けがをしたかは知っていても、彼らが個人的に犠牲にしたものは知らない。この映画はアクションドラマであるのと同時に心理ドラマでもあるんだ。

■エンタメ作品でも観客が求めるのは「本物」

Q:配役はどのように決定されたのですか?

ハワード監督:ニキ役をダニエル、というのはすぐに決まったよ。ドイツの俳優で才能もあるということで、最初から名前が挙がった。ニキの妻役のアレクサンドラ(・マリア・ララ)も同じようにすぐ決まった。ドイツ語を話せる役者であることが重要だったんだ。エンターテインメント映画でも、観客は本物であることを喜ぶ。(クエンティン・)タランティーノ監督がそのことを証明しているね。ジェームス役も、ダニエルと同じくらいエキサイティングでクリエイティブな選択にしたかった。商業的というより、純粋に選びたかった。クリスはジェームス役に選ばれるよう努力してくれた。F1カーに乗れるくらい体重も落として。そうやって臨んだオーディションでの彼には強い説得力があった。

クリス:脚本を読んで、すぐにやりたいと思ったからね。それからジェームスの映像も見た。そのむちゃくちゃなところに惹(ひ)かれたよ。

Q:クリスの何が決め手になりましたか?

ハワード監督:これまでの出演作から魅力的な俳優であることは知っていたが、これほど幅があることは会ってみるまでわからなかった。セクシーなカリスマで、なおかつ複雑なところもあるジェームスにピッタリだ。ジェームスにはダークな面ととてもリラックスしたナチュラルな面がある。クリスがその全てを潜在的に持っているのは見てとれた。配役でこんなにラッキーだったことはないよ。

Q:ジェームスとニキにそれぞれそっくりでしたね!

ダニエル:実際のところメイクに助けられたね。『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』でオスカーを獲得したメイクさんがやってくれたんだ。事故後の顔になった僕を見て、みんながショックを受けていた。それは事故後のニキの気持ちを理解するのにも役立ったよ。

Q:本作でのジェームスとニキをどう思いますか?

クリス:ロン(・ハワード監督)とピーター(・モーガン=脚本家)がしっかり脚本で描いてくれていた。時間がたつにつれて、ジェームスをどんどん好きになっていったよ。その率直さ、自由さ。会えないのが残念だ。ジェームスとニキは、性格からレースへのアプローチまで全然違う。それをそのまま描いているのは称賛すべきことだと思う。

ダニエル:あまりにも、そのまますぎるくらいだよね。ニキはドイツではレジェンドなんだ。これほど有名で今も活躍する人物を演じるのは、荷が重かった。でも、本人に手伝ってもらえたのは良かった。彼は全プロセスに関わって、どんな質問にも答えてくれた。正確に描けたと誇れるよ。

■懐かしさと悲しみをもって振り返る1970年代

Q:復帰記者会見でニキの様変わりした顔について、ひどいことを言った記者をジェームスが殴ったというのは事実ですか?

クリス:記者の失礼な発言があったのは事実だよ。でも、殴るところはピーターが撮影現場で思い付いたんだ。「よし! どうすればいいかわかった!」とね。事実ではないにしても、ジェームスのキャラクターをよく表すシーンだと思う。

ダニエル:ジェームスが殴ったことをニキが知るか、知らないままでいるかでちょっと議論になったよね。結果、知らないままがいいということになった。ピーターは天才だよ。

Q:ハワード監督は、ピーター・モーガンと『フロスト×ニクソン』でもタッグを組んでいますね。同作も1970年代の物語でした。

ハワード監督:『フロスト×ニクソン』も1970年代の話だったけど、今回は時代が変わっていく途中の不安定さがあった。性革命後でエイズの発見前だから「自由」という感覚があった。人々が、ドラッグは人生を滅ぼすと気付く前だ。個々人が本当の意味で受け止められ、肯定されていた頃ともいえる。残念なことにそれは継続できるものではなかったけど、振り返ってみると、懐かしさと悲しさを感じさせる時代だよ。そういうことがこの映画の要素にもなっている。

命を懸けて戦う者だけにしか理解できない部分で、わかり合っていたジェームスとニキ。演じたクリスとダニエルからも、あわやという場面を一緒に体験した仲間意識が感じられた。ハワード監督の「懐かしさと悲しさ」という言葉が、華やかな1970年代の息吹と共に、そこに生きた者の痛みが描かれる本作のエッセンスを見事に伝えている。

映画『ラッシュ/プライドと友情』は2月7日よりTOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開

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