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竹野内豊
『ニシノユキヒコの恋と冒険』
女性も男性もきっと恋がしたくなる
『ニシノユキヒコの恋と冒険』竹野内豊 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 撮影:吉岡希鼓斗

『人のセックスを笑うな』で知られる井口奈己監督が竹野内豊を主演に迎え、芥川賞作家・川上弘美の連作短編集を映画化した『ニシノユキヒコの恋と冒険』。完璧な容姿とスマートな物腰でどんな女性でもとりこにしてしまう希代のモテ男・ニシノユキヒコと、彼を取り巻く女性たちとの恋愛模様を、女性監督ならではのみずみずしい感性で切り取った切なくも美しいラブストーリーだ。恋に落ちていく男女の描写が驚くほどリアルなその秘密を、ユキヒコ役の竹野内が明かした。

■モテてはフラれ、またモテる究極のモテ男

Q:恋愛描写がとてもリアルで、特に女性の共感を呼びそうな作品ですね。

男性と女性とで意見が分かれる物語だと思います。男性目線でユキヒコという男を考えると、いろいろな女性にモテるんだけど、結局最後はフラれてしまうかわいそうな人。なぜモテるのかわからないんです。最初は自分だけかと思っていたんですけど、周りの男性スタッフになぜユキヒコがモテるのかを聞くと、「なんでなんですかね?」って首をかしげる。そこに女性を交えると、いろいろな解釈を話してくれるんだけど、その女性が席を立ったあとに「今のわかった?」って男性たちに聞いても、「いや、わからない」ってみんな言うんですよ(苦笑)。

Q:でも、超モテ男なのにどこかつかみどころのないユキヒコは、竹野内さんのイメージにピッタリだと思ってしまいました。

そう言っていただけるのは光栄です。でも、素直に喜んでいいものなのか……ちょっと複雑です(笑)。井口監督は、「ユキヒコはブラックホールのような人。例えば、自分の女友達がこういう男性と付き合っていたら、心配になって会いに行く。でも、会いに行ったら自分も吸い込まれてしまうような男なんです」と表現されていました。なるほどなと思いましたね。

■家族から見た竹野内は全然カッコよくない!?

Q:そんなユキヒコを演じるにあたって、どのようなアプローチをしたのでしょう?

撮影に入る前に「どう演じたらいいですか?」と井口監督に尋ねたら、「何も考えずに、普段の竹野内さんのままでいてください」とおっしゃっていたので、そう心掛けていたのですが、そのままって言われるのが一番困るんですよね(苦笑)。極端なことを言ってしまうと、時代劇の方がやりやすいんです。設定されたその世界に入っていけば、役は自然につくられていく。でも、今回はそういったものがなくてニュートラルな感じでいないといけない、とても困ってしまう現場でした。

Q:ということは、やはり竹野内さんの素に近いキャラクターだったのでは?

仕事でお付き合いしている人たちからは、「竹野内くんらしいよね」って言われるかもしれませんね。でも、家族が見たら「まったく違う!」と言うと思いますよ。昔から、好青年やエリートや、今回のようなカッコいいモテる役で声を掛けていただくことが多くて、それはとてもありがたいのですが、「どうしてそういう役が多いんだろうね?」って家族はよく言っていましたから(笑)。実際の自分は、演じてきたカッコいい役とまったく逆の人生を歩んできたので、家族も違和感を覚えるのだと思います。

Q:では、女性の気持ちを敏感に察して応えてあげるユキヒコの要素は、ご自身にもあると思いますか?

ユキヒコのそういうところは、むしろ男として見習わなきゃいけないと思います。自分では女性の気持ちがわかっていると思ってやっていたとしても、本当はそうじゃなかったりもするので、すごく難しいですよね。

■ラブシーンの撮影で、思わず素が出そうになった!

Q:独特の映像センスを持つ井口監督の演出はいかがでしたか?

自由にやらせてくださるので楽しいのですが、井口監督は予定調和なものではなく、その場のリアルな現実をそのまま切り抜きたいという思いが強いんでしょうね。だから、どのシーンも長回しで台本の部分が終わってもカットがかからないし、同じシーンを何テイクも繰り返すことがよくありました。

Q:尾野真千子さん演じる上司のマナミとじゃれ合ってキスをするシーンも、とても自然で胸キュン度満点でした。

あれが尾野さんとの初めての撮影だったんです。監督がカメラを止めてくれないので必死でやっていると、「これは素ではない!」と自分では思いたいんですけど、どうしても素が出そうになるんですね。カットがかかった瞬間に、今のはちょっとイヤだな、もう一度やらせてほしいなと感じたときに限って、監督は目をキラキラさせながら、「すごくいいのが撮れました。ありがとうございます」って言うんです。この人ってドSだなあと思いましたね(笑)。

Q:長回しをすることで、役者さんのベールがはがれるのを待っていらっしゃるのですね。

そうなんでしょうね。最初、ユキヒコをもっとプレーボーイ風な男だとイメージしていたんです。でも、井口監督は若干違っていた。最終的に監督がOKを出してくださったのは、頭で考えてやったものではなく、その場の状況や目の前の相手に対して、自分が本当に感じたことを表現できたときのような気がします。

■井口ワールドを楽しめば、誰もが恋をしたくなる

Q:マナミ(尾野)、人妻の夏美(麻生久美子)、隣人の昴(成海璃子)とタマ(木村文乃)、元カノのカノコ(本田翼)、妙齢のサユリ(阿川佐和子)。ニシノを愛する女性たちの中で、竹野内さんが惹(ひ)かれるタイプは?

どうだろう……一般的に考えたらマナミなんじゃないですか。すごく一生懸命で真っすぐで、誰もが好意を抱きそうな女性ですし。まあ、カノコもなかなかいい子だと思うんですけど、彼女はマナミよりエキセントリックだからなあ(笑)。それぞれ違った魅力のある女性ばかりなんですけど、一人だけ選ぶのであれば、やっぱりマナミですね。

Q:ユキヒコはマナミとの結婚を望みましたが、竹野内さんもご自身の結婚について考えたりすることはありますか?

そればっかりは縁とタイミングなのでねえ……なんてことを言い続けて、気が付いたらこんな年になってしまいました(苦笑)。もちろん、自分の家族を持つのもいいなと思っています。チャンスがあったらいつでも、という感じです。

Q:最近はシリアスからコメディーまで幅広い役に挑戦されていますが、40代を迎えて仕事への取り組み方に変化はありましたか?

変化は特にないです。最近はCMなどコミカルな作品に出演することも多いのですが、それはたまたまタイミングが重なっただけです。これからも、100人の方が観て全員が絶賛してくださる作品や役なんてないだろうとは思いますけど、100人の中でたった1人でも喜んでくださるようなものに出会えたらうれしいです。

Q:ちなみに、最後の最後までユキヒコがモテる理由はわかりませんでしたか? 今ならわかることもあるのでは?

いや、わからないです(笑)。結論としては、タイトルにもあるようにニシノユキヒコの“冒険”だから、わからなくてもいいのかなと考えるようになりました。観ていると引きずり込まれてしまいそうになる井口ワールドを、女性にも男性にも理屈抜きで楽しんでもらいたいですね。きっと恋がしたくなると思います。

竹野内はとてつもなく大きな包容力を感じさせる人だ。決して構えず、気取らず、どんな質問にも真摯(しんし)に答える。おそらく、演者が困るほどカメラを回し続けた井口監督の貪欲な要求も、全て受け入れて応え続けたのだろう。そんな彼だからこそ、女たちの秘めた欲望を見抜き、相手が「もういい」と思うまで満たしてあげるブラックホールのような男・ユキヒコを体現できたのかもしれない。本作は、恋のトキメキを感じたい女性やモテ男の極意を学びたい男性にとって見逃せない一本だ。

(C) 2014「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会

映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』は2月8日より全国公開

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