シネマトゥデイ

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『ホビット 竜に奪われた王国』が生まれた場所!ニュージーランド訪問記

 全国映画動員ランキングで、今年公開された洋画では初となる初登場1位を獲得した『ホビット 竜に奪われた王国』。舞台となる“中つ国”の壮大なビジュアルは人々を魅了してやみませんが、そのロケ地となっているのが、前シリーズ『ロード・オブ・ザ・リング』に引き続きピーター・ジャクソン監督の出身地でもあるニュージーランドです。連載第2回では“中つ国”そのままの姿のニュージーランドを旅し、本作のスーパーバイジング・ロケーションマネージャーに話を聞きました。(取材・文・構成:編集部・市川遥)

本当の“中つ国”はニュージーランドにあった!

オークランド

オークランド 日本からの直行便が到着するオークランドは、ニュージーランド一の人口を誇る活気に満ちた都市。クルーザーの所有率は世界ナンバーワンで、クルーザーやヨットで楽しむ人々がたくさんいました。

ホビット庄

マタマタ オークランドの華やかな都市ぶりから一転、車で南へ2時間ほど行けば見覚えのある丘陵地帯が! マタマタは、『ロード・オブ・ザ・リング』および『ホビット』シリーズでホビット庄として使われた場所です。

ホビット庄

 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ撮影後には、ホビットたちの真ん丸なドアから小道具まで全て撤収されたため、ただの穴が開いた丘になってしまいましたが、『ホビット』シリーズ撮影後に「永久に残せるように」と建築基準にのっとって再建されて現在の“映画のままのホビット庄”に。見どころが満載なのでホビット庄のレポートは連載第5回で詳しくお伝えします。

ワイトモ・ケーブ

ルアクリ・ケーブ&ワイトモ・ケーブ マタマタから車で1時間ほどのところにあるのは、第1部『ホビット 思いがけない冒険』でゴブリンの洞窟の音響サンプルを採ったルアクリ・ケーブです。すぐそばのワイトモ・ケーブでは、ゴムチューブの浮き輪で地下を流れる川を探検する「ブラック・ウォーター・ラフティング」というアクティビティーもあり、地下の湖畔に暮らすゴラムの気分にちょっぴりなれます。

ナルア・ケーブ

ナルア・ケーブ&タカカ・ヒル オークランドから飛行機で1時間弱ほどの距離にあるのが、南島北部の街ネルソンです。そこから1時間半ほど車を走らせると、(またまた)ゴブリンの洞窟をほうふつさせる美しいナルア・ケーブがあります。

タカカ・ヒル

 長い洞窟を抜けて地上へ上ると『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの撮影で使われたタカカ・ヒルが。大理石の盛り上がりが特徴的で、フロドたちが旅を続ける姿が目に浮かぶようです。

ケープ・フェアウェル
ケープ・フェアウェル

ケープ・フェアウェル タカカ・ヒルから車で1時間半程度行くと『ホビット』でドワーフの一団が急な尾根を越えて旅を続けるシーンの撮影に使われたカイホカがあります。撮影が行われたのは私有地ですが、ケープ・フェアウェル・ホース・トレックでは馬に乗って崖を上っていくことができ、ロケ地の雰囲気を味わえます。ただ想像以上に高さがあったため(馬たちはとても賢くておとなしいのですが)、慣れるまでは初めてポニーに乗って固まるビルボ状態でした。

ケープ・フェアウェル

 また『ホビット 竜に奪われた王国』でガンダルフが乗っている大きな濃い灰色の馬は、もともとこの牧場にいたとのこと! 名前はビッグ・ニック。現在は動物プロダクションに入ってスーパースターになったそうです。

ペロルス川

ペロルス川 『ホビット 竜に奪われた王国』のハイライトの一つといえるドワーフたちのたるでの川下りのシーンのロケ地となったのが、ネルソンとワインの産地として名高いマルボロの中間に位置するペロルス川

ペロルス川

 ごつごつした岩に小さな滝……など感動的なまでに映画に出てくるままの姿でした。実際にカヤックに乗って川を下ればオークに追われていると錯覚しそうに……!

ウェリントン

ウェリントン 北島南端部に位置する首都にして、ニュージーランドの映画産業の中心地。文化的な都市でありながら、中心地から車で数分で美しい海岸や山など豊かな自然に触れることができます。ここからさらに山を登ると……、

ウェリントン

 ……!! でも森のエルフの王スランドゥイルは乗っていませんでした。

ウェリントン

 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでフロドとサムが登る岸壁の型はここから取ったそうです。

ウェリントン

 アシカがものすごくダラダラしています。

ウェリントン

 市中心部から徒歩圏内にあるビクトリア山は、森で危険を察知したフロドが、キノコ狩りに夢中になるサム、ピピン、メリーを「Get off the road!(道を離れろ!)」と一喝するという『ロード・オブ・ザ・リング』の冒頭シーンが撮影された場所です。こんな街の近くにホビットたちの森があるなんて!

ウェリントン

 カラカ・ベイにあるカフェ「Scorch O Rama」の隣の壁。レゴラス役のオーランド・ブルームは、『ホビット』シリーズの撮影に当時の妻ミランダ・カーを連れてきていました。この場所でポーズを決めるミランダをオーランドが写した写真は今もインターネット上に出回っています。

 さらに中心部から数十分車を走らせると、アンドゥイン川、アイゼンガルド、裂け谷のロケ地があります。

■ハット川

ウェリントン

 アンドゥイン川のロケ地。『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』エクステンデッド・エディションに収録されている、ボロミアとファラミアのシーンが撮影されました。

■カイトケ・リージョナル・パーク

ウェリントン

 裂け谷のロケ地。この木のそばにレゴラス役のオーランド・ブルームが立つシーンがあります。

ウェリントン

 キャラクターと背比べができます。

ウェリントン

 リベンデール(裂け谷)の標識が!

■ハーコート・パーク

ウェリントン
ウェリントン

 アイゼンガルドのロケ地。『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフがサルマンを訪ねに馬を飛ばしてくるシーン、サルマンの庭をサルマンとガンダルフが会話をしながら歩くシーン、オークたちがロープを使って木を倒すシーンが撮影されました。

『ホビット』のスーパーバイジング・ロケーションマネージャーを直撃!

ジャレッド・コノン
スーパーバイジング・ロケーションマネージャーのジャレッド・コノン

ジャレッド・コノン

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ以降、『キング・コング』『ラブリーボーン』『ホビット』シリーズとピーター・ジャクソン監督のニュージーランドでの作品全てに関わっているウェリントン在住のロケーションマネージャー。

 19歳からこの業界で働き始め、『ホビット』シリーズではスーパーバイジング・ロケーションマネージャーとして50人のチームを率いたジャレッドに、ジャクソン監督との出会いを含めた自身のキャリアについて、そして『ロード・オブ・ザ・リング』および『ホビット』シリーズのロケ地に関する裏話を教えてもらいました。

ジャレッド: 19歳の時は何の経験もなくて映画業界で働こうなんて思っていなかったんだけど、学校の友達が職業訓練コースで政府からの援助を得るために人を探していた。彼らが「援助してもらうためにあと1人必要で、それは車の免許を持っている人じゃなきゃいけないんだ。君、免許持っているでしょ?」って言うから、面白そうだし了承してテレビ番組の仕事を始めたんだ。そこでロケーションマネージャーをしていたロビン・マーフィの下で働くようになって、彼女は僕を訓練してくれた。そしてロケーションマネージャーとしての次の仕事が来たら申し込んで、その仕事をして……って繰り返していたら、この仕事がとても自分に合っていることに気付いた。写真を撮ってドライブして回るのも楽しかったし、クルーともうまくいった。製作のすごく初期の段階から関わることができ、さらに脚本をもらって計画を立てて、そして最後にロケ地を元通りにするまで、最初から最後までやり通せるという部分でもとてもやりがいのある仕事だと思った。そしてそれから20年間、これ以外の仕事はしていないよ(笑)。

 ひょんなことから天職に就いたジャレッドは、またまたひょんなことから『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに関わることになります。ジャレッドを最初に訓練したロビンこそ、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのスーパーバイジング・ロケーションマネージャーとなる人だったのです。しかし『ロード・オブ・ザ・リング』の仕事をするにはウェリントンに行かなくてはならなかったため、当時オークランドで働いていたジャレッドはロビンの誘いを断り続けました。

ジャレッド・コノン
ビールをたくさん飲まされ、押し切られてしまったと明かしたジャレッド

ジャレッド:彼女はウェリントンに居て、チームに加わらないかと何度も誘ってくれた。当時の僕は『ロード・オブ・ザ・リング』の仕事がどんなものかわかっていなかったから、『嫌だよ。僕はオークランドで順調だから』と言い続けていたんだ。でも、ある時パーティーで会った時にたくさんビールを飲まされ、隅に連れていかれ押し切られてしまった(笑)。そして数週間のつもりでウェリントンに行って、そこでピーターがやっていることを見た。どれだけ大規模で素晴らしい人々が働いていたか……。1週間後には『映画が完成するまでここに残るよ。何でもやる。素晴らしいんだもの』とロビンに言っていたよ。

 こうして『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに携わることになったジャレッドですが、ジャクソン監督とはホビット庄での最初のロケまで会う機会がありませんでした。そしてジャクソン監督との初対面、そして2度目の対面はとても印象深いものだったといいます。

ホビット庄
ジャレッドとピーター・ジャクソン監督が初対面を果たしたホビット庄

ジャレッド:僕はホビット庄担当で全体をまとめていたから、ピーターがホビット庄にやって来た時はロケ地をドライブして他の撮影地も見て回った。彼は下っ端だった僕にも自己紹介してくれて、僕も「僕はジャレッドです。ここの担当をしています」と自己紹介したけど、それ以外のことは何も話さなかった。それから結構時間がたったある日、別のロケ地の撮影でピーターとヘリコプターで一緒になった。「……きっと覚えていないと思いますけど、ホビット庄で一度会っているんですよ」と言い終わらないうちに、ピーターは「覚えているよ! ジャレッド!(早口)」って(笑)。絶対覚えてないと思ったからびっくりした。

ホビット庄
ビルボとフロドの袋小路屋敷

ジャレッド:ピーターの素晴らしいところの一つは、ものすごい記憶力があるということ。1年前のことだったとしても誰とどんな会話をしたかを完璧に覚えている。映像記憶能力のようなものだと思うよ。そして彼の創造性は別にして、ピーターのこの能力が映画を成功させたんだと思う。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの時は五つのクルーがバラバラに撮影していたり、本当にいろんなことが同時進行していたんだけど、彼はその全てを把握していた。驚異的だよ。このシリーズが特別なのは、3作に完璧な一貫性がある点だと思う。

ロケーションマネージャーってどんな仕事?

ジャレッド・コノン

ジャレッド:『ホビット』で最初にやったのは、脚本をもらい、デザイナーたちは何をスタジオに作るのか、具体的にどのシーンのロケ地を探してほしいのかを確認することだった。1作目には100シーンあるんだけど、そのうち20シーンはロケーションで、80シーンはスタジオだった。そして2週間のロケーションのスカウトに出掛けて、3週目にはロケーションマネージャーのチームで集まって写真を見せ合って、そしてピーターをはじめとしたクリエイティブチームの前でプレゼンテーションを行った。ピーターにどれを気に入ったか、どれが気に入らないかを言ってもらって、それを受けて再び国中でロケ地を探して……っていうのを1年間、全部で4回は繰り返したね。そしてロケ地が固まれば、実際にピーターと20人くらいのチームと共にその場所を訪ねるんだ。

マーティン・フリーマン
キャスト・スタッフが撮影に専念できるのもロケーションマネージャーのおかげです

 ロケーションマネージャーの仕事は、ロケ地を見つけて映画の撮影に使う許可を取ることだけではありません。撮影中はロケ地にテントや駐車場のあるベースキャンプを作ってケータリングやトイレを用意したり、ロケ地に加えてスタジオでも、撮影が滞りなく進むようカメラに映らない全ての部分の面倒を見ているそうです。

ジャレッド:『ホビット』では9週間半に及ぶロケに入る前に1年半から2年ロケ地のスカウトをして、それと同時にスタジオでの撮影の面倒も見ていた。メインの撮影が終わった後も、追加でロケ地での撮影がいくつか必要になることもあるからそれにも対応する。あとスタジオの外に町並みが建てられた「バックロット」というところので撮影もあって、それの面倒も見ているよ。

ジャレッド・コノン
ものすごく多岐にわたる仕事ですね

 さらに撮影後にも仕事が残っています。

ジャレッド:撮影後はロケ地を片付けて、草を植え直して、元通りにする。僕は最初に土地の所有者と会った時に「覚えておいてほしいのは、今、映画を撮影していいか頼んでいるけど、撮影後にまた来てほしいと言ってもらえるようにしたいと思っているんだ。僕はいい仕事がしたい。なぜならあなたの土地は素晴らしいから、また違うクルーとも撮影に来たい。これっきりというのは嫌なんだ」と言うようにしている。撮影後には「あなたの言っていた意味がわかったよ」と言ってもらえるよ。僕は撮影隊のニーズに応えると同時に、土地の所有者のニーズにも応える。なぜなら彼らの土地、そして彼らとの関係は映画業界にとっての財産だから。ちゃんとケアしなければ二度と協力してもらえないだろう。地元の人々とコミュニケーションを取るのも楽しいよ。小学校に行って何をしているのかを語ったりもする。500人のクルーが突然町に現れたりするわけだからね。だから僕たちのことについて話して地元の人々に還元し、一緒に映画作りを楽しんでもらうんだ。

『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』のロケ地の裏話

ハーコート・パーク
サルマンの居城であるアイゼンガルドのシーンが撮影されたハーコート・パーク

 『ロード・オブ・ザ・リング』でロケ地として使われたハーコート・パークは、広々としていて芝生や木々は美しいですがいわゆる“普通の公園”です。この場所がなぜサルマンの居城であるアイゼンガルドというドラマチックなロケ地に選ばれたのでしょうか?

ハーコート・パーク
サルマンの庭

ジャレッド:ここは僕が選んだんだ場所じゃないんだけど、まずオークがロープを使って木を倒そうとするシーンをハーコート・パークで撮影したんだ。なぜなら撮影しやすくて、街からもアクセスしやすかったから。このシーンは夜に撮影したんだけど、たくさん木を植えて、ロープで倒して、クレーンで持ち上げて、また倒して……って何度もやったよ(笑)。照明部門のトラックもやってきやすい場所だった。その時撮影しやすかったから、ピーターは他のアイゼンガルドでのシーンもそこで撮ることにしたんだと思うな。ガンダルフが馬に乗ってアイゼンガルドへの道を走っていくのと、サルマンと木の間で話をするっていうシーンだよね。一つ目のシーンはガンダルフのみだし、二人のショットはクローズアップでそんなに背景は要らない。ロケ地を選ぶのは実際的な部分もあって、美しいロケーションというだけでなく、監督が仕事をしやすい場所を選ばないといけない。ニュージーランドにはたくさんの素晴らしいロケーションがあるけど、撮影隊がそこに行けない、撮影にお金が掛かり過ぎるとなったらだめだからね。

ペロルス川
ペロルス川で撮影するピーター・ジャクソン監督

 『ホビット 竜に奪われた王国』で見つけるのが最も難しかったロケ地は、ドワーフたちのたるでの川下りのシーンで使われたペロルス川でした。

ペロルス川
ピーター・ジャクソン監督の要望を満たしたペロルス川

ジャレッド:ピーターに川の写真を全て見せたんだけど、彼には確固としたイメージがあった。両サイドに固い岩がある小さな峡谷のような川がよくて、砂や小さな石がある川は嫌だったんだ。だけど、たるが着く浅い岸辺は必要。これが難しかった。なぜなら峡谷だと深すぎるし、岸辺がある川は一般的に石ころが多いから。「自然はピーターの思い通りにはいかないよ!」と思ったけど、彼は思い描くままのドラマチックな川でないと納得しないんだ(笑)。川というのは見つけるのが最も難しいロケ地の一つ。雨が降れば水量が増すし、常に変化している。海だったら潮が満ちて引く、という感じである程度予測することができるけど、川は全く予測できないんだ。『ロード・オブ・ザ・リング』では川にセットを作ったけど、洪水になって全部流されてしまったこともあった。撮影する前にね。

ペロルス川
橋にはカバーをかけて見えなくしたそうです

 今回は俳優たちが入ったたるを川に浮かべる必要があったため、川の水位には特に気を使い、ジャレッドは撮影隊が到着する3日~4日前から現場に入って川の様子をチェックしていたといいます。

リチャード・アーミティッジ
トーリン役のリチャード・アーミティッジも川へ!

ジャレッド:撮影前に雨が降って、撮影日になっても水位が高くて危険な状態だったから、全ユニットを連れて5時間かけて別のロケーションに行った。次の日は水位も落ち着いたんだけど川は汚くてひどい状態。だから掃除してきれいにしなくちゃいけなかったよ。でも完成版を観ると素晴らしいよね。ペロルス川は最後に見つけたロケーションでもあるんだ。撮影が始まったけど見つけることができなかったから、製作陣に「土地のスカウトをするために、僕たちは新しい地域に行く必要がある」と伝えてね。新しい地域に行くとなると大移動になるから撮影日を丸1日失うことになるし、避けるべきことなんだけど見つけられなかったから仕方ない。だけど、みんなあの川のシーンのことを“最高のチェイスシーン”と言ってくれるし結果的にうまくいったと思う。ドラゴンのシーンと双璧を成すシーンになったよね。

ドワーフ
川は水位が上がると危険!

 また本作でのお気に入りのシーンは、ドワーフたちがはなれ山のすぐそばに来て、谷間の国を後にしてはなれ山に入るという、ほんの数十秒のシーンだそうです。

谷間の国
荒れ果てた谷間の国を眼下にしたドワーフ一行

ジャレッド:二つのロケ地が使われているんだけど、どちらも僕のお気に入り。そのうち一つは許可を得るために18か月交渉したんだ。撮影は1日で、スクリーンに映るのは数十秒。あれだけ努力したシーンというのは誰もわかってくれないだろうな(笑)。でも完成版は素晴らしかったから報われたよ。

ニュージーランドで仕事を続けることを決めた理由

ジャレッド・コノン
ロンドンでの経験を語るジャレッド

 ジャレッドは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを終えた後、海外で働くいいチャンスだと考え、イギリスに飛びました。『ロード・オブ・ザ・リング』の成功が信頼となり、誰もが彼と一緒に働くことを喜んでくれたといいます。しかし、知らない土地でロケーションマネージャーとして働けるものなのでしょうか?

ジャレッド:何度も仕事をした監督がいるんだけど、彼は僕がロンドンのことを知らないのに、いつも興味深いロケ地を提案するのを面白がっていた。ロンドンに住んでいるロケーションマネージャーたちが提案するのは似たような場所になってしまっていたんだ。監督は「ここを選ぶなんて奇妙だな……でも興味深い。気に入ったよ!」って感じで(笑)、思いもかけない場所を提案して喜んでもらえた。

 また、仕事柄、街のことはすぐにわかるようになり、2年間ロンドンで働きましたが、イギリスの映画産業はニュージーランドのものよりももっと巨大であるということを実感させられたそうです。イギリスの映画業界には豊富な経験がある人はたくさんいて、大きなプロジェクトに雇われるのは決まってそういう人でした。

ピーター・ジャクソン監督とマーティン・フリーマン
ピーター・ジャクソン監督との仕事はやはり特別でした

ジャレッド:だからニュージーランドに戻ることに決めた。大きなプロジェクトに携われる信頼を得るためにこれから何十年も基本的な仕事するより、すぐにニュージーランドで大きな仕事をしようとね。そしてこれはいい決断だったと思う。今、イギリスの映画業界はすごく面白いことになっているけど、後悔はしていない。この美しい国に戻ってこられてうれしいし、イギリスの映画業界の友達とは今でもやりとりしているけど、彼らも「『ホビット』の仕事ができるんだったらイギリスでの全てのキャリアを捨ててそこに行くよ」と言っているし(笑)。僕は『ロード・オブ・ザ・リング』以降、ピーターのニュージーランドでの全ての映画に関わっている。大切な関係だよ。彼は僕のクライアントで、僕は彼、そして彼のプロジェクトのために最高の仕事をする。なんたって彼のプロジェクトは最高だから。全てのプロジェクトはそれぞれ違ったものだけど、ピーターと働くのは本当に楽しい。大きくて、いろんなことが進行していて、本当にエキサイティングなんだ。

 しかし、ジャレッドは大きなプロジェクトに携わるのと同時に、テレビ番組などの小さなプロジェクトにも進んで参加し、また製作費の少ない作品にはボランティアで協力するといいます。なぜならこれまでの経験をニュージーランドの映画業界に還元することが、いかに重要であるかを理解しているからです。

ジャレッド:今はテレビで『ホビット』とは正反対の仕事をしている。予算もなくて、小さいプロジェクト。だけどとても楽しい。なぜなら小さなチームで一緒に働いて、一人一人のプロジェクトへの貢献度がすごく高いから。小さい規模の映画も同じ意味で楽しいよ。クルーにこれまでの僕の経験を伝えることで彼らを助けることもできるし、それがこの業界のためにもなる。短編映画の製作者には全然お金がないから、彼らにはボランティアで協力している。僕にも養う家族がいるから、そういったプロジェクトに完全にコミットすることはできないけどね(笑)。あと、僕はたくさんのニュージーランド全土の写真を持っているからそれをロケ地選びの参考に見せてほしいという人には見せてあげている。もちろん大きなプロダクションだったら対価を払ってもらわないといけないけど、地元の小さな映画製作者には協力してあげている。僕が自分の撮った写真を見てもらうのが好きという部分もあるけどね(笑)。ただ、地元の映画産業に貢献するというのは大切なことだ。僕の最初の仕事では、まだ見習いだったけど政府が週150ニュージーランドドルとか出してくれた。だから経験を得たら、それを還元し続け、新しい人たちをこの業界に入れ、訓練することが大切だ。そうすれば経験とスキルを持った人材が増える。ニュージーランドでの映画業界の問題の一つは、仕事が継続的ではないということ。仕事がなくて他の仕事を見つけなくてはならないから、この業界を去る人が多いんだ。だから人々を呼び込んで、経験をシェアすることは大事なんだと思うよ。

川

 昨今、ニュージーランドの映画業界が世界の中でも存在感を増してきているのは、まるで“中つ国”のような風光明媚(めいび)なロケーション、そしてジャクソン監督、ジャレッド、そして連載第1回で取り上げたWetaワークショップの面々といった才能あふれる人材に恵まれていることに加え、彼らが常に地元のことを考えて仕事をしているからなのでしょう。

映画『ホビット 竜に奪われた王国』は公開中
(C) 2013 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC.

『ホビット 竜に奪われた王国』が生まれた場所!ニュージーランド訪問記~バックナンバー

第1回:制作会社Wetaワークショップを直撃!

『ホビット 竜に奪われた王国』キャストインタビュー

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『ホビット 竜に奪われた王国』関連サイト

『ホビット 竜に奪われた王国』オフィシャルサイト
『ホビット 竜に奪われた王国』特集:一緒に冒険に出たい!あなた好みのステキ男子を探せ!ワイルド&スイートな6人のイケメンたちを徹底マーク
ニュージーランド政府観光局オフィシャルサイト
ニュージーランド航空オフィシャルサイト

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