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藤原竜也&品川ヒロシ監督
『サンブンノイチ』
スタッフも俳優部もみんな、うそ偽りなく監督のことが大好きな現場だった
『サンブンノイチ』藤原竜也&品川ヒロシ監督 単独インタビュー

取材・文:進藤良彦 写真:尾鷲陽介

お笑い芸人の品川ヒロシが『ドロップ』『漫才ギャング』に続く監督第3作として発表したクライムエンターテインメント『サンブンノイチ』。社会のどん底で追い詰められて銀行強盗に手を染めた3人の男たちと、彼らを取り巻く闇社会の人間たちとの二転三転するだまし合いを、軽妙な掛け合いとアクションで描いていく。強盗団のリーダー格・シュウを演じるのは、数々のヒット作で正統派のヒーローから残虐な殺人犯まで幅広い役柄を演じてきた藤原竜也。主演俳優と監督として本作で初めて顔を合わせた二人が、作品の舞台裏を語った。

■紛れもなくすごい“映画監督”

Q:品川監督の前2作はいずれもご自身の原作小説を映画化したものですが、今回は木下半太さんの同名小説が原作ですね。

品川ヒロシ(以下、品川):はい。角川映画のプロデューサーから薦められて読んでみたら本当に面白かったので、撮ってみたいなと思ったのが最初のきっかけです。自分発信で出していた別の企画もあったんですけど、それより先に『サンブンノイチ』が決まって、何度も脚本を書き直しているうちに「これって原作にあるセリフだったっけ? それとも俺が書いたセリフだっけ?」というくらい自分の中に溶け込んできてしまったので、他の人が書いた原作をやっているという意識は意外と薄かったですね。原作者の半太さんも「これって品川くんが書いたやつだっけ?」って(笑)。

Q:藤原さんから見た品川監督の印象はいかがでしたか?

藤原竜也(以下、藤原):初めは、やはりテレビ画面を通しての芸人さんというイメージがあって……。

品川:(苦笑)

藤原:でも、第一線で活躍されている人たちは皆さんそうなんでしょうけど、やっぱり努力と苦悩をたくさん抱えながら、懸命にもがいて、それで突出してきているわけじゃないですか。そこで才能を発揮して、品川さんは映画監督もやって3作目を撮ってしまうという。『ドロップ』も『漫才ギャング』も観させてもらいましたけど、その2作を撮っているという実績はすごいことだと思うんですよね。実際、一緒に仕事をしてみたら、すごく細かいところまで監督独特のアイデアやギャグのセンスがちりばめられていて、本業は芸人さんだけど、僕としてはもう、紛れもなくすごい“映画監督”だなと思いました。サービス精神で現場をにぎやかに盛り上げてくださったりもするけど、そこも監督の優しさだなと思って見ていましたね。監督はよく「いい人を演じているだけ」って言いますけど(笑)。

品川:映画を撮っている時って楽しいから、いい人でいられるんですよ。もちろん、すごくピリピリした現場で面白い映画を撮るタイプの監督さんもいらっしゃると思うけど、僕の映画はどう考えてもそういうタイプじゃないじゃないですか。例えば凶悪な殺人鬼の話を撮るのに、僕が現場でヘラヘラして「じゃあ、パーッといっちゃおうよ」みたいな感じだったら、それは絶対邪魔ですよ(笑)。

藤原:いや、それもアリですけどね(笑)。

品川:『サンブンノイチ』みたいな映画で、僕がピリピリしてどうするんだ、と。映画の現場ってスタッフの間で怒号が飛び交ったりするから、自分の部下を叱る時は裏に行ってやってくれって、スタッフにはよくお願いしています。楽しい現場作りは、自分でもすごく意識していますね。

■“蜷川”から“品川”まで!?

Q:反対に、品川さんは俳優・藤原竜也をどうご覧になっていたんですか?

品川:いやあ、僕がどうこう言うような方じゃないですよね。素晴らしい役者さんなので、本当に尊敬しています。

藤原:やめてくださいよ(笑)。

品川:現場でも何か魔法にかかっているみたいな感じで、だって、僕が藤原竜也を演出しているわけですよ。あの世界の蜷川(幸雄)が認める藤原竜也を! “蜷川”から“品川”までって、ダジャレみたいですけど(笑)。撮影している間は「俺は映画監督なんだ」と信じて、自分もだまし、他人もだましてやっているんですけど、終わった後で竜也くんが出ている舞台とか観に行くと、やっぱりすごい人を相手にしていたんだな、と。現場で「ここ、もっとこうしてくれる?」とか何を偉そうにしゃべっていたんだろうって、今となっては思いますからね。

藤原:いやいや、何言ってんすか(笑)。

品川:怖いのは、もしこの先、竜也くんと同じ映画で共演することになったら……。

藤原:ああ、それは面白いですね。

品川:あんな偉そうなこと言っていたのに、自分が演じる側になったら全然できないじゃん、みたいに思われたら怖いなって。多分、死ぬ気でセリフ覚えていくと思いますけどね。

■何を考えているかわからない男

Q:藤原さんが演じたシュウという主人公はキャバクラの雇われ店長で、追い詰められた揚げ句に銀行強盗に走ってしまうわけですけれども、演じる上で何か意識したり、気を付けたことはありましたか?

藤原:脚本の段階から本当に面白かったので、それを忠実になぞって、そのままの感情でいれば成立する役だと思いました。クランクインの前から監督が細かくリハーサルを重ねてくれて、そのおかげで、田中聖くんとブラマヨ(ブラックマヨネーズ)の小杉(竜一)さんとの3人の関係も生まれていったし、妙な緊張感もなくて、すごく楽な気持ちで撮影を迎えられたんです。なので、自分で意識したり気を付けたというよりは、監督をはじめ周りの人たちみんなに助けられて、一緒にこのシュウというキャラクターを作っていった印象でした。

品川:シュウって、すごく人間的でもあるけど、何を考えているかわからないところもいっぱいあるキャラクターで、竜也くんはそういうところをすごく上手に出してくれるんですよね。最初のホン読みだとかリハーサルの時からすでに、腹の中で何を考えているのかわからない雰囲気が、竜也くんからものすごく感じられて、僕も改めてシュウの魅力に気付いたというか。初めに竜也くんがそれを提示してくれたから、僕もそれに乗っかって、いろいろ話し合いながら煮詰めていった感じでした。

藤原:でも、監督のお芝居に対する要求はすごく細かくて、きちんとそれを言葉にして伝えてくださるんですよね。シュウだけじゃなくて、コジ(田中)にも健さん(小杉)にも、それから窪塚(洋介)くんが演じた破魔翔にも、全て自己投影というか、自分を重ね合わせているところがあるんじゃないかなと思って。

品川:ああ、それは確かにそうですね。

藤原:「俺はこの映画で挑戦してやるぜ」という強い意志を持ってやられているという印象を、僕は受けました。

■とても居心地のいい現場

Q:実際の現場の雰囲気はいかがでしたか?

藤原:監督が本当に頼もしかったですよ。スタッフも俳優部もみんな、うそ偽りなく監督のことは大好きでしたし、みんなが必死に監督についていっていましたよね。

品川:うん(照れてうなずく)。

藤原:本当にいいカットを撮りたい、いいシーンを成立させたいという明確な意志を持って、監督が一切妥協しませんでしたから、納得いくまで何度も何度も撮り直しをしても、みんなが必死についていった。ワンシーンワンカットの芝居が多くて僕らは大変だったんですけど(笑)、聖や小杉さんと「今の良かったんじゃない」って話していたら、監督が「ごめん、もう一回行く!」って、「クソーッ!」と思いながらまたやったり。

品川:(大笑い)

藤原:でも、それが映画じゃないですか。本当に楽しかったし、僕は品川組だけでしたよ、こんなに毎日、現場で笑っていられたのは(笑)。ヘラヘラしているわけじゃなくて、いい意味で毎日笑っていられる、とても居心地のいい現場でした。監督、スタッフの皆さんにその空間を作ってもらったことが、何よりも大きな収穫でしたね。

品川:僕は撮影している間は、映画を撮っているということだけで楽しくてハイになっているから、夢中で何も気にしていないんですよ。アドレナリンが出ている時は殴られても全然痛くないのと一緒で、さっき言ったみたいな「俺、藤原竜也を演出しちゃってるよ」っていうのも(笑)、そのすごさを全然忘れて夢中でやっている。その分、出来上がったものをスタッフ・キャストみんなに観てもらう時がものすごいプレッシャーで、怖くて仕方ないんです。「うわ、こんな映画に出て失敗だったな」って思われたら最悪じゃないですか。しかも今回は、半太さんという原作者の方がこの映画をどう思うかという初めてのプレッシャーまでプラスされて、それだけで今までより倍くらいの重圧を感じましたね。

自分の映画に対する思いを熱く語ることもあれば、クールで客観的な視点ものぞかせる品川の言葉。芸人らしく“笑い”を盛り込んだ時には、藤原がすかさず反応してはじけたように笑う。お互いへの信頼と息の合ったコンビぶりが短いやり取りからも感じられ、ジャンルは異なっても互いに良き先輩後輩であり、共闘者としての関係が築かれているのだとわかる。藤原の褒め言葉に照れくさそうな笑みを浮かべていた品川の表情が印象的だった。

【藤原竜也】ヘアメイク:赤塚修二(メーキャップルーム) スタイリスト:小林新(takahashi office)/【品川ヒロシ】スタイリスト:渡辺浩司

(C) 『サンブンノイチ』製作委員会

映画『サンブンノイチ』は4月1日より全国公開

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