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堂珍嘉邦&高梨臨
『醒めながら見る夢』
永遠に会えなくなっても、覚えていてほしい
『醒めながら見る夢』堂珍嘉邦&高梨臨 単独インタビュー

取材・文:須永貴子 写真:本房哲治

2001年のデビュー以来、音楽シーンの最前線を走ってきた堂珍嘉邦。彼が過去の過ちの記憶と、愛する人の喪失に苦しむ、人気劇団の演出家・優児を演じ、映画初主演を果たした作品が『醒めながら見る夢』だ。彼が愛する女性・亜紀を演じるのは注目の若手女優、高梨臨。夏の京都を舞台に、永遠の愛というテーマに向き合い、幻想的な映像作品を創り上げたのは、小説家、ミュージシャン、演出家と、多彩な顔を持つ辻仁成監督。独自の道を突き進む表現者・辻監督の作品に参加した堂珍と高梨が感じたものとは?

■二人の共通項は「ナゾ系」!?

Q:この作品に出演した経緯から教えてください。

堂珍嘉邦(以下、堂珍):2011年に、「醒めながら見る夢」という音楽劇のお話をいただいたことがそもそものきっかけです。グループとしての音楽活動がルーティンワークになっていて、一度音楽を外から見ることが自分にとって必要だと思っていた時期でもあって。辻さんの懐に飛び込んでみようと思って音楽劇に参加しました。というのも、音楽、本、映画とマルチに活躍されている辻さんの、作品を発表するときの少年のような表情に共感するところがあったんです。作りながら走り続けていくことの大変さもわかりますし。「映画化したいなー」という話もふんわりと聞いていたのですけど、正式に映画のお話をいただいたときは純粋にうれしかったです。尊敬する辻さんの作品ですし、優児役への愛着と責任も感じたので、ぜひ、とお返事しました。

高梨臨(以下、高梨):わたしは辻さんが去年上演した「辻仁成 その後のふたり」という朗読劇で、初めて辻さんとお会いしました。稽古1日、本番1日で終わってしまったんですけど、「またぜひ一緒に仕事をしよう」と言ってくださって、すぐにこの映画のお話をいただきました。脚本に書かれている言葉がすごくきれいで、世界観がすてきだなと思って、演じさせていただきました。

Q:堂珍さん演じる優児と、高梨さん演じる亜紀は恋人同士です。初対面だったということですが、どのように関係を作っていきましたか?

堂珍:僕は俳優としての経験が何もないですし、高梨さんの方がキャリアは長い。でも、年齢だけは自分が上というところで勝手にプラマイ0に換算して、壁を作らないようにしました。ましてや恋人役ですから、話したほうがお芝居もしやすいし。

高梨:堂珍さんからすごく歩み寄ってくれたおかげで、気さくに話ができて、距離もすぐに縮まりました。最初はやっぱり「アーティストの堂珍さんだ!」と構えてしまう部分があったんです。アーティストの方ってわたしからすると謎ですし。

堂珍:高梨さんもナゾ系って言われますよね?

高梨:あ、確かに言われます(笑)。

Q:誰が一番謎かといえば、辻監督のような気も……(笑)。お二人から見た監督はどんな人ですか?

堂珍:言葉で表現するのが難しいのですけど……。他者の意見に惑わされず、自分の世界観や思いを貫いて、何とか形にして人に届けようとする人ですね。エキセントリックに見えるかもしれないけれど、ものづくりをする人間として尊敬します。

高梨:普段はかわいらしいんですけど、カメラを回し始めると役者や役柄の気持ちになっちゃうのか、芝居のまんまの温度でカットをかけるんです。情熱的なシーンは情熱的に、沈んだシーンは沈みがちに。ものすごく気持ちを乗せて撮る、パッションのある方だなって思います。

堂珍:すごく気持ちが強い現場だけど、終始、穏やかだったよね。

高梨:はい。すごく。

堂珍:辻組はみんな仲良しだから。

高梨:スタッフの皆さんが、辻さんのことが大好きで集まってきていることがわかります。辻さんは愛されているなって思いました。

■真夏の京都の魅力

Q:オールロケで捉えた京都の映像がとてもすてきです。京都ロケの思い出は?

堂珍:撮影で何度も行った鴨川ですね。中でも一番印象的なのは、ラストシーン。マジックアワーという30分ほどしかないタイミングを狙って撮影したので一発勝負だったんです。感情表現が難しいし、川にも入らなきゃいけないから転んだらどうしようという物理的な心配事もありました。失敗したら、また別日に朝2時起きしなきゃいけない。迷惑を掛けられないので、前の晩に似たような川で練習しました。辻さんが事前に下さった、お手本のお芝居の映像を参考に。

高梨:え? 辻さんが優児を演じた映像ですか?

堂珍:うん。それを見て、河原でブツブツとイメトレしました。ジョギングするおじいちゃんや、2時間くらいイチャイチャするカップルをはた目に、邪念を振り払いながら。(笑)

高梨:あのシーンは、わたしも緊張しました。浴衣に下駄だったんですけど、河原だから足場が悪くて。転んだりしたら台無しになってしまうので。

Q:めでたく一発OK?

高梨:はい。

■辻監督が作品に込めたメッセージ

Q:この映画には「永遠の愛」について、もっと言うと「愛した人との永遠の別れをどう乗り越えるか」というテーマが描かれていますね。

堂珍:2011年に舞台を作ったときは震災直後で、辻さんには「とにかくみんなに元気になってほしい」という思いがあったそうです。「死者を忘れない」というセリフがあるんですけど、亡くなった人も、生きている人の心の中で思い出としてよみがえることができる。それを映画にしてもう一度伝えたいとおっしゃっていました。

高梨:脚本の段階で、そのメッセージは明確でした。わたしが演じた亜紀は優児の思いが作り上げたような存在。最後にいなくなることで、残された人がつらい記憶を乗り越えて生きていくというお話もいいけれど、この映画のラストシーンは「別れた人との思い出を受け入れて生きていく姿」が描かれていて、すごくすてきだなと思うんです。辻さんの「忘れなくていいんだよ、無理に乗り越えなくていいんだよ」というメッセージが伝わればいいなと思いました。

Q:もしも自分がいなくなってしまったら、愛した人にどう生きてほしいですか?

堂珍:やっぱりねぇ、覚えていてほしいですよね。

高梨:ずっと引きずってほしい? それとも切り替えて次の恋で幸せになってほしい?

堂珍:うーん……(しばらく考えて)、あんまり悩まずに受け入れてほしいから、まさにこの映画のメッセージと一緒かもしれない。ただ、違う男性との恋愛は、見ないでおこうかな、みたいな(笑)。

■堂珍嘉邦の今後の表現活動は?

Q:堂珍さんが今後、演技のお仕事をどうするのかが気になります。

堂珍:この夏は、フェスでバンドをやるぞというモードです。

Q:外から音楽を見たこの経験は、どんな栄養になりそうですか?

堂珍:んー、正直、1本じゃわかんないです。ただ、音楽と演技に、似ていると思う部分はあります。ドラムのカウントでガーンと音を出して歌うのと、カチンコの音で空気を変えてパッとお芝居にする瞬発力は同じだなって。でもそれ以上に、どっちも本当に好きじゃないと続けることはできませんよね。自分はまだいっぱいいっぱいなので、演技を好きと思える段階にないです。基本的には音楽があってこその自分だと思うので、音楽をなおざりにして演技の仕事をする、ということも絶対にないです。いいタイミングでいい出会いがあれば喜んでやらせていただきます、という感じです。

高梨:堂珍さんは気持ちでお芝居をされる方。生のお芝居を間近で見ることができてすごく刺激になりました。

堂珍:今度は歌っているところもぜひ生で見てください。

高梨:ぜひ!

完成披露試写会前に行われた取材。ドレスコードにして映画のイメージカラーの青色を衣装のどこに入れたかをお互いにチェックすると、堂珍は青ではなく赤をポイントにしてしまったことが発覚し、笑い合う一幕も。堂珍と高梨が口を揃えて「本当に穏やかでした」と言う現場の空気が、二人の間に流れていた。幻想的で美しい青が彩る風景の中にたたずむ、美しい恋人たちの姿を堪能することができる。

(C) 2014「醒めながら見る夢」製作委員会

映画『醒めながら見る夢』は5月17日より全国公開

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