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『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』特集:ディズニートゥーンスタジオに潜入!~『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』ができるまで~

 今月19日より公開される『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』は、世界的大ヒットを記録した『アナと雪の女王』の後、ディズニー傘下のスタジオが初めて発表するアニメーション映画です。1作ごとに新たなチャレンジを続けているディズニーは、『アナと雪の女王』では、これまでのアニメーション技術では不可能といわれていた“雪”と“氷”をスクリーン上で表現することを成功しましたが、今作『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』では、いったいどんな新境地を開いているのでしょうか?

取材・文:編集部 福田麗

教えて、ディズニー!
『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』
『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』より
『プレーンズ2』
Buena Vista Pictures/Photofest/MediaVast Japan

 連載の第1回第2回で紹介した通り、今作『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』は、現在、ディズニー・スタジオ / ピクサー / トゥーン・スタジオのチーフ・クリエイティヴ・オフィサーを務めるジョン・ラセターが監督した『カーズ』の世界観を引き継いだ『プレーンズ』シリーズの第2弾にあたります。そのため、何をするにも前提となるのは「『カーズ』の世界観を大事にする」ということになります。

『プレーンズ2』
ディズニートゥーン・スタジオの人々に突撃!

 ですが、ただ「世界観を大事にする」といっても、具体的にどういうことなのかはよく伝わってきませんね。それに世の中には「原作の世界観を大事にする」といって失敗に終わった映画作品も多いですから……トゥーン・スタジオの人々は、どのようにして、その最初にして最大の課題をクリアしているのでしょう?

 すると、驚くべきことに、複数のスタッフから言い方は異なれど、同じ答えが返ってきました。

『プレーンズ2』
こちらはリサーチ中のボブス・ガナウェイ監督

ジョン・ラセターは、素晴らしいストーリーを作るためには三つのことが必要だと話している。その一つが『信ぴょう性のある世界』ということなんだ」ボブス・ガナウェイ(監督)

ジョン・ラセターは『題材の真実性』と呼んでいるんだけど、それは綿密なリサーチをすれば、真実からストーリーを見つけることができるし、ストーリーをより良くできるし、ビジュアルもより良くできるという考え方なんだ」ジェイソン・マッキンレー(フライト・スーパーバイザー)

『プレーンズ2』
リサーチを担当したクリエイティブ・ディベロップメントのディレクター、ポール・ジェラルド

「アニメーションに関して大事なことは……リサーチをすることだね。リサーチに代わるものはないよ。リサーチ、リサーチ、リサーチをして、プランを立てて、キャラクターと、作ろうとしている映画についてよく知り、楽しんで作ることだよ」ダグ・リトル(CGスーパーバイザー)

 このように誰もが同じことを言うとは思っていなかったので、いささか面食らってしまいましたが、このことは、トゥーン・スタジオにジョン・ラセターの哲学がどれほど浸透しているかを表しています。

 では、リサーチが、どのように『カーズ』の世界観を引き継ぐことにつながっているのでしょう? リサーチを担当したクリエイティブ・ディベロップメントのディレクター、ポール・ジェラルドは語ります。

『プレーンズ2』
専門家に話を聞きます!

「リサーチをやるのは、僕らのエグゼクティブ・プロデューサーであるジョン・ラセターが『題材の真実性』という考え方を信じているからだよ。それがどういうことかというと、しゃべる飛行機についての映画を作るというのは、かなりとっぴなアイデアだよね。だから、その世界の他のものは全て、これ以上ないほどに正確に描きたいわけだよ。その他の全てのものがまさに本当のことだと思えないと、しゃべる飛行機っていう存在もスクリーンの中で生きることができないんだ」

 「『カーズ』の世界観を引き継ぐ」というと、「乗り物がしゃべる」という表面的な要素だけをコピーするのだと思われがちですが、より重要なのは「乗り物がしゃべる」ということの本質にある“リアリティー”。『プレーンズ』はそうした精神を引き継いでいるんですね。

 次項では、リサーチを基に、本作のスタッフがどのような課題にチャンレンジしたのかに迫ります!

ここが、こだわり。
『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』
『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』のコンセプトアート

リアルな炎の追求

『プレーンズ2』
本作に使われた“炎”の数々!

 レスキュー隊が題材になるということで、本作では多くの火事が描かれることになります。『アナと雪の女王』では“氷”と“雪”の表現に苦戦しましたが、本作における“炎”というのは同等……いえ、もしかしたら、それ以上の難物でした。というのも、“炎”を表現するというのは、“炎”だけで完結することではなく、“煙”“残骸”“光”といった要素も複合的に描かなくていけないからです。“燃える”という現象をアニメーションで表現するのは、想像以上に手間暇が掛かるものなのでした。

『プレーンズ2』
CGで炎ができるまで!

 そのため、「ファイアー・ライブラリー」「フォレスト・ファイアー・ポピュレーション・ソフトウェア」と呼ばれる新たな技術が本作のために開発されました。担当したのはトゥーン・スタジオで17年にわたって働き、約40本の映画を手掛けているCGスーパーバイザーのダグ・リトル。ダグは、今作において“炎”は単なる現象ではなく、メインキャラクターである「悪役」だったと断言します。

「僕たちは火事が今作の悪役になることがわかっていた。火事が今作のメインキャラクターだと考えていたんだ。普通なら、“炎”や“煙”といった特殊効果は制作過程の最後にあたるけど、今回は重要だとわかっていたので、アニメーターよりも先に“炎”や“煙”を作ったんだ」

 そのために、“炎”がどのように動くのか、気候や環境によって、どういった変化がもたらされるのかといった“炎”の「表情」や「行動」といったものを綿密にリサーチ。化学的な観点から、リアルな“炎”を生み出すことに成功しました。

 しかし、ここで思わぬ方向から難題が降り掛かってくることになります。

「僕たちが予想していなかったのは、アートディレクターや監督が炎や煙に口を挟んできたことだ。僕たちはかなりの時間を費やして、また化学や物理学を基にして、リアルな“炎”を作ったんだ。だけど、アートディレクターが『炎はもっと大きくないとだめだ』と言ってきてね……(笑)。だから僕たちは、“炎”をリアルにするだけではなくて、本物らしさと映画としての素晴らしさを両立させないといけなかった。それが、最大のチャレンジだったね」

ここが、こだわり。
『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』
『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』のコンセプトアートより

“乗り物化”された世界

『プレーンズ2』
舞台となるピストン・ピーク国立公園の地図

 本作では「ピストン・ピーク国立公園」が舞台になっています。ここは架空の国立公園ではあるのですが、ヨセミテをはじめ、全米にある国立公園を基にして作り上げられました。そのリアリティーは現実に存在していても遜色なく、直径2マイル(約3.2キロ)の大きさを、アートディレクターのトビー・ウィルソンは綿密にデザインしたといいます。例えば、松の木を例に取れば、その数は250万本。それらの一つ一つを作り、公園中に配置しました。

「250万本の木や葉は、パシフィック・ノースウエスト(太平洋岸北西地区)にある木や低木を基にしている。全て、ヨセミテ渓谷で見つけることができる木なんだ」

『プレーンズ2』
ここでももちろんリサーチ!自分の足でリサーチ!

 そして、ただ現実に存在する樹木を映画に持ち込むのではなく、飛行機や車が擬人化された『カーズ』=『プレーンズ』の世界観に合わせ、樹木は“乗り物化”されています。

「木の樹皮には、タイヤのわだちのスリップ痕が付いている。花はキャデラックのテールランプみたいにしたり……ほかの物も、エンジンカウリングやプロペラ、黄色いラジエーターファンみたいに見えるようにデザインしたんだよ」

『プレーンズ2』
これがV6バレー

 そうした“乗り物化”は、実は公園全体に及んでいます。「V6バレー」と名付けられた渓谷はV6エンジンを模しており、スペイン語で「グリル」を意味する「ラ・パリヤ」では、ヨセミテ渓谷のエルキャピタンと1920年代のジャガーの(フロント・)グリルを融合。そもそも「ピストン・ピーク国立公園」の由来が、車などの「ピストン」であることからも明らかなように、公園にあるものの一つ一つに「乗り物」の要素が盛り込まれているのです。

 考えただけでも大変そう……なぜ、そのようなことにチャレンジしたのでしょう?

「これは飛行機の映画だから、飛行機にフォーカスしたかったんだ。だから、何かをデザインするときには、飛行機のビジュアルを使うようにした。そしてできることならば、飛行機だけじゃなくて、RVとかボート、蒸気機関車とかも入れたかったんだ。飛行機と車は大きさがまるで違うから、そのバランスを取るのは苦労したけどね。よくよく見れば、映画の中には飛行機の形をしたツグミや、トラクターの形をした牛がいるのを見つけられるはずだよ」

『プレーンズ2』
アートディレクターのトビー・ウィルソン

 でも、そうして必死になって作り上げたものは結局、燃やされてしまうんですよね?

「ああ……それはとてもタフなことだったよ。美しい物を作るのにすごく努力しているのに、そして燃やされてしまうというのはね。でも、僕たちが作った物は最終的には、ストーリーや、観客が感じるであろうエモーションをサポートしないといけない。だから、火事がもたらす惨状をちゃんと見せようとした。でも、これは映画を観てもらわないといけないんだけど、僕たちが美しい物を作るからこそ、それが燃えるのを防ごうとする主人公たちの仕事があるんだよ」

 “炎”の描写にしても、“乗り物化”にしても、言われてみないとわからないほど細かいところです。でも、そんな大半の観客が気付かないであろうところに全力を注ぐのが、アニメーション制作陣の仕事なんですね。当たり前といえば当たり前なのですが、彼らの「プロフェッショナル」としか評しようのない丁寧な仕事ぶりを目の当たりにして、思わず敬礼してしまいました……。

写真で紹介!ディズニートゥーンスタジオ!

 この項では、記事中では紹介できなかった裏話やあれこれを写真をと共に紹介!
 今回はアートディレクターのトビー・ウィルソンに語っていただきました!

アメリカ南西部がモチーフの建物たち

『プレーンズ2』
ピストン・ピーク国立公園

 上の写真を見ればわかるように、『プレーンズ』の世界の建物は擬人化された乗り物たちが利用するため、大きさから何から全て、“乗り物”たちに合わせてデザインされています。特に舞台になったピストン・ピーク国立公園は「全ての乗り物のためのものにしたかった」とのこと。そのため、トビーはいろいろな乗り物が滞在できるようなロッジを作り上げました。

『プレーンズ2』

 それが、こちら。
 乗り物用に天井が高くなっていたり、廊下の幅が広くなっているのがわかるかと思います。また、インテリアにも凝っており、トビーは「ロッジのインテリアは、南西部のモチーフなんだ」と説明します。

「ネイティブアメリカンみたいな装飾やウエスタンの装飾を使っている。そして、それを“乗り物化”し、スタイル化した。例えば、ここにあるカーペットを見ると、真ん中に黄色い二重線があって、トラフィックコーン(道路工事中であることを示すために路上に置かれる円錐形の標識)がある。また暖炉は、1956年のシェヴィーの形をしていて、ヘッドライトや格子柄のフェンダーがあるんだ。それから、蒸気で動く大きな時計とかもあるよ」

 な、なるほど……!
 1枚の写真にもこんなに語ることがあるほどのこだわり。まさに“匠”といったところでしょうか。

映画『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』は7月19日より全国公開

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©KaoriSuzuki

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