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映画とゲームの世界は融合する!ダグ・ライマン監督×小島秀夫監督特別対談!

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映画とゲームの世界は融合する! 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』公開記念!ダグ・ライマン監督×小島秀夫監督特別対談!

 作家・桜坂洋による日本の小説を、トム・クルーズ主演でハリウッド映画化したアクション大作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。原作の精神を見事に継承し、最高級のアクションとロマンスを詰め込んだ傑作を生み出したダグ・ライマン監督と、世界的人気ゲーム「メタルギア」シリーズ(KONAMI)の小島秀夫監督が特別対談! 小島作品が大好きだというライマン監督と、『ボーン・アイデンティティー』をはじめライマン作品の大ファンという小島監督が、双方への多大なるリスペクトを込めながら、本作について、そして映画とゲームの垣根を越えたコラボレーションの可能性について語った。

■小島監督のゲームが大好きなんだ!

Q:お二人は今回が初対面ということですが、お互いの作品に対する印象を教えていただけますか?

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ライマン監督01
ダグ・ライマン監督

ダグ・ライマン監督(以下、ライマン監督):小島監督のゲームは大好きで、ずっとプレイしていましたよ。実際のところ中毒になるくらいで、今後映画を作らないんじゃないかというくらいにハマっていました。だから今日はお会いできて本当にうれしいんです。

小島監督01
小島秀夫監督

小島秀夫監督(以下、小島監督):僕もダグさんの映画は『ボーン・アイデンティティー』をはじめ大好きで、『go』から『フェア・ゲーム』まで、『スウィンガーズ』以外は全部観ています。今日はお会いできて光栄です。

ライマン監督:(日本語で)アリガトウ!

場面写01
ケイジとリタの恋愛劇も見どころとなる (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

小島監督:ダグさんの映画はすごくスタイリッシュで、アクションだけではなくすごくユーモアもある。そして僕が一番気に入っているのは、ロマンチックな部分。ハードボイルド映画というと殺伐とした少し乾いた雰囲気の作品になるものですが、『ボーン・アイデンティティー』の(ボーンとヒロインの関係を描く)ヨーロッパの場面も、『Mr.&Mrs. スミス』のスミス夫妻の場面も、そして今回の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も、ダグさんの映画はキュートな……ロマンスがにおい立っているようで、そういうところがすごく好きなんです。

ライマン監督:サンキュー、アリガトウ。今回、桜坂洋先生の原作を読んだときも、ラブストーリーの部分に惹(ひ)かれたんです。もちろん原作にあるアクションもスペクタクルも好きだけど、恋愛要素に魅了された。物語の舞台は大きいのだけれど、本来は2人の人間についての話であり、同じ日を繰り返す中で、どうやって恋愛を成就できるのかという部分にすごく興味を持ったんですね。主人公のケイジ(トム・クルーズ)は、何回も生き返って同じ日を繰り返すわけだけど、ヒロインのリタ(エミリー・ブラント)が生き残る日は一度もなく、常に死んでしまう。そういった小説の要素が、この作品を気に入った理由なんです。

■小島監督絶賛!ゲームの構造を見事に映画化!

場面写07
(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

ライマン監督:僕は映画作りにおいて、ビデオゲームからすごくインスピレーションを受けているんです。小島作品も含めてね。もちろんこの作品もいろんなゲームから影響を受けています。『ボーン・アイデンティティー』を撮ったときは、作品をFPSゲームのように捉えていましたね。最初マット・デイモン演じるジェイソン・ボーンは、何も情報がない、武器も持っていない状態から始まって、そこからいかに資金を調達し、道具を手にするかという展開になる。まさにゲームのような感覚の映画だったんです。なので、僕の映画とビデオゲームは、最初からものすごく密接な関係にあったんですよ。

小島監督:ゲームでいうと、主人公はプレイヤーと近くなくてはいけないので、設定がありすぎるとプレイが阻害されるんです。『ボーン・アイデンティティー』がすごくうまいのは、これは僕もゲームでよく使う手法ですけど、主人公にはある役割があるんですが、それをあえて1回消すんですよ。そうしておいて、プレイしながら徐々に過去を思い出してプレイヤーと主人公の距離を詰めていくという手法です。あの映画はまさにそれをされていたので、今聞いてなるほどと思いました。

場面写02
主人公のケイジは、死にながらリセットされ1日を繰り返す。ゲームのように… (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

Q:『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も非常にゲームの影響を受けた作品だと感じました。小島監督は本作をどのように鑑賞されましたか?

小島監督:いわゆるゲームの構造というか、哲学というものがあるんです。それはゲームオーバーになってコンティニューするということ。それを繰り返すっていうのがゲームにはあるんですけど、この映画にはリセットという概念もあって、そこもうまく描かれている。タイムループの話って、いままで映画や小説のネタとしてはあったと思うんですけど、まさにゲームの構造、ゲームの哲学を映画の手法でうまく伝えた作品は今までなかったので、初めてそれを伝えた映画ではないかと思いますね。

小島監督&ライマン01
ライマン作品の魅力を語る小島監督


小島監督:それとゲームもそうなんですが、戦場で死んでも命が戻るという前提では、普通物語は創れないんですよね。怖くないので。死んでもいいやというふうに観客がなってしまうと、その時点で映画は負けなんです。ゲームもそういうところで、いかにプレイヤーにテンションを上げてもらおうかと、いろいろなことをしている。この映画はそういうゲームの構造を持っているのに、飽きさせずに観客を映画の世界に連れて行っているという部分が新しくて、そこは本当に感心しました。

ライマン監督:ありがたいことです。確かに小島監督のおっしゃったことが、この映画で最も挑戦的な部分だったんです。そこで僕らがしたことの一つが、キャラクターが死ぬたびに痛みを感じさせるということ。戻ってこられるとしても、死ぬ苦しさを味わうので、そんなに楽なものではないとね。

■原作の精神を尊重!ハリウッド的なラストにはしない!

場面写03
これまでにない役どころを見事に演じたトム (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

ライマン監督:トムの演じた、非常に臆病者で、少しでも傷ついて血を見るのも嫌だというキャラクターもよかった。それに、死ぬたびに同じ日の同じ地点まで、繰り返し戻らなくては前進することができない。ゲームでもそうですよね、1回死ぬと、また繰り返してやり直さなくちゃいけないと思う。ケイジもそんな気持ちで、ビル・パクストンの演じた曹長のスピーチを聞かなくてはいけない。だから死にたくはないという感情を彼は持っているわけです。いいところまで行っているのに、また戻るのかという思いですね。ビルのスピーチだけではなく、部隊の仕事もしなくてはいけない、戦場もまた経験しなくてはいけない、ヒロインとの関係も再構築しなくてはいけない……そういったところで死にたくないという気持ちを強くするようにしています。

小島監督02

小島監督:そこはゲームデザインの構造にすごく似ていますね。それと、エミリーとトムの関係は、毎回やり直しでゼロからのスタートなんですけど、観客は二人に近づいていくので、最終的に二人の関係がどうなるのか? すごく気になる。その上でエンディングで観客に提示しているものがゲームと違うところで、一番気に入っています。

ライマン監督02

ライマン監督:まさにそのラブストーリーの部分、一方は前日に起きたことを全く覚えていないという二人の関係を、どうやって前進させ発展させていくのか。これもチャレンジでした。そしてエンディング。もちろんネタバレをすることはできないけど、原作の小説はあまりキチンと終わっていないですよね。いわゆるハリウッド的な終わり方にはなっていない。そして僕は、その日本の小説の精神に忠実でありたいと思ったので、独創的なエンディングを用意したんです。

場面写03
臆病者だったケイジは、戦場でどんどん成長していく (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

Q:トムの演じるケイジもハリウッド的ではない、臆病な主人公でしたね。

小島監督:原作とは全然違うと思うんですけど、すごくうまいと思いましたね。トム・クルーズといえば、イコール『ミッション:インポッシブル』のイーサン・ハントなので、誰もが強いマッチョなトムを期待していたら、ケイジは広報担当で、血を見たら倒れてしまうようなキャラという(笑)。トムがあれをやることで、観ているこちらはビックリする。それが1日をどんどん繰り返すうちに、僕らの知っているトムに近づいていく、あの構造が非常に面白かったです。

ライマン監督:人々を驚かせるような、役と違ったタイプをキャスティングするのが好きなんですよ。これまで観てくれた僕の映画でもわかると思いますが、『ボーン・アイデンティティー』でマット・デイモンを起用したときも賛否両論がありましたし、『Mr.&Mrs. スミス』のアンジェリーナ・ジョリーも意外だと思われました。今回も、いままで観たことがない臆病者のダメな兵士で、映画の冒頭10分以内に殺される役をあえてトムにやらせたかった。彼ならやってくれると思っていましたしね。結構映画を通してずっと憶病者のままで、エミリーの役こそが地球を救おうとしているんです。でも彼女はそれができるパワーを持っていない。なのでパワーを持っているケイジを利用して、兵器として使って地球を救おうとしている。実際のヒーローは彼女なんですね。

■ゲームと映画が融合する未来

ライマン監督03
小島作品の大ファンだというライマン監督

Q:ライマン監督は、小島監督が編集された「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」(KONAMI)のトレイラーはご覧になりましたか?

ライマン監督:さっき観たところです。素晴らしかった。本当に驚くのが、ゲームエンジンで作る映像と、僕たちが俳優を使ってカメラを回して作る映像が融合しているというか。区別がつかないくらいになっているということですね。

小島監督03
ゲームの未来を見据える小島監督

小島監督:ゲームを作るプロセスがすごく実写映画に近くなってきていますからね。当然今回のトレイラーも、実在する俳優さんの演技を3Dキャプチャーして、動きも表情も全部本当の俳優さんでやっていますので、VFXがふんだんに使われている映画と行程は変わらなくなっています。

ライマン監督:これからはわれわれの世界とゲームの世界が完全に融合してくる気がしていますね。例えばトム・クルーズのアバターを作って、映画を作るようにゲームを作るということになるんじゃないかと。

小島監督:そうなるでしょうね。

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時代がトムに追いつく? (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

ライマン監督:一つだけ懸念があるとしたら、やはり劇中のユーモアはトムの演技があって可能になったという部分ですね。兵士たちが着る機動スーツも、最初はCGにしようと思っていたのですが、最終的には実際に作ったんです。それによって、まるでチャップリンのような肉体的なユーモアを生み出すことができた。そういった俳優の技量によって生まれる演技が果たしてコンピューターで再現きるかどうかは、ちょっと定かではないですね。

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いつかエミリー・ブラントのアバターも作れるかも?(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

小島監督:今はハードも進化して、シワの1本1本が描けますし、感情も表すことができるようになったんですけど、それまでは僕らがアニメーターのようにゼロからモデルを作っていたんです。けれども、ここまで表現力が高まると、本当の俳優さんには……例えば30代の方なら30年の人生が顔に刻まれているので、そういうものを人間がゼロから作ることは無理なんですよ。なので今のゲームというのは多くが俳優の容姿をキャプチャーし、演技してもらって動きをコンピューターでトレースして使っている。なので、ライマン監督のおっしゃることとまさに同じですね。物理では作れないものを要求されています。

■小島監督の映画が観たい!コラボレーションも約束?

小島監督&ライマン02
大ファンからのお願い!

ライマン監督:僕からも小島監督に質問があるのですが、いつ映画を撮るんですか?

小島監督:出来るとすれば、今の(「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」)が終わってからですよね。それなりに年をくってきたので。もう51歳になりますから(笑)。そろそろ映画もと思っているので、チャンスがあれば、近いうちに撮りたいですね。映画を撮るのものゲームを作るのも体力要りますので、若いうちに撮っておきたいなと。

ライマン監督:僕は48歳ですけど、ビデオゲームを作りたいですね。体力があるうちに。お互い立場をスイッチしましょうか(笑)。

小島監督:いやいや、一緒にやりましょう。

ライマン監督:それがいいね!

小島監督&ライマン03
一緒に何かやりたい! ゲームと映画の垣根を越えた傑作が生まれるかも!

Q:クリエイターとして、お互いにこんな作品を作ってほしい! など、期待していることはありますか?

小島監督:大作を撮らなくてはいけない立場だと思うんですけど、やはり僕は大ファンなので、『go』みたいなインディペンデント映画というか、本当にやりたいことをこの時期にやっていただきたいということ。そしてやはり一緒に、ゲーム創りとか、何かできたらと思いますね。

ライマン監督:僕もインディーズ作品をまた撮りたいと思っています。けど今回の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も、大作ではあるんですけど非常にインディーズっぽい作品だと思っているんですよ。トムと僕だけの撮影のときが何度もあって、トムはメイクもヘアメイクも自分でやっていたんです(笑)。だから大作とはいっても、インディーズのような雰囲気の中で作られた映画だったんです。

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ゲームと映画が融合する未来が来る! (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

ライマン監督:そして僕が小島監督に期待するのは、いままでゲームに注ぎ込んできた才能を、大きなスクリーン、映画という形で表現してもらいたいということ。そのときは、ぜひ僕も協力したい。ところでコラボレーションするにあたって、どちらがどちらの言葉を覚えた方がいいかな?

小島監督:では、日本語を覚えていただいて(笑)。

ライマン監督:僕の日本語より、現時点では小島監督の英語の方が上じゃないですか(笑)。

小島監督:絵を描いてやりましょう。何とかなりますよ!(笑)

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小島監督との出会いに大喜びだったライマン監督

知的でクールな雰囲気を醸し出していたライマン監督だったが、対談終了後、小島監督に「本当に今日は会えてうれしかった。ビッグファンなんだよ!」と力強く握手を求める姿が印象的だった。

小島監督&ライマン05
サインをお願いする小島監督、うれしそうです

一方の小島監督も、持参した『ボーン・アイデンティティー』のDVDにサインを求める表情は、純粋な映画少年そのもの。さらに監督がサインしたゲームをプレゼントされほほ笑むライマン監督。2人のトップクリエイターが将来生み出すであろう傑作に期待しつつ、まずはその意識を共有するきっかけとなった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』を楽しみたい。

■ダグ・ライマン監督×小島秀夫監督の対談を動画で!


場面写07
絶対に見逃すな! (C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BMI) LIMITED

映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は全国公開中

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』オフィシャルサイト

■取材・構成:シネマトゥデイ編集部 入倉功一

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