『映画 中村勘三郎』特集：父として、歌舞伎俳優として……名語録＆名シーンから振り返る中村勘三郎の闘い続けた人生
希代の歌舞伎俳優・十八代目中村勘三郎を10年間にわたって追ったドキュメンタリー『映画 中村勘三郎』。歌舞伎俳優としてのプロフェッショナルな顔、父としての頼もしい顔。2012年の死の間際までエネルギッシュに生きた勘三郎の人生を名語録＆名シーンから振り返ります！
あらゆることに挑戦し続けた中村勘三郎の歌舞伎俳優人生。江戸時代を再現した平成中村座を立ち上げたり、その中村座をアメリカ・ニューヨークに持ち込んだり。また、野田秀樹、山田洋次、宮藤官九郎といったクリエイター陣とタッグを組み、歌舞伎界に新風を吹き込んだ。勘三郎の口から飛び出した、そのエネルギッシュな生きざまを表すひと言だ。
ひとたび舞台に上がると、観客の盛り上がりが断然違う。そんなカリスマ性を備えていた勘三郎。しかし、どんなに芝居がウケても安易に喜ぶことはなく、自分を戒めるような言葉が。そんなストイックさが勘三郎の芸を磨いていったのである。
共演者に思わず厳しい言葉が飛び出すのも、良い芝居を作りたいがための妥協のない姿勢の表れ。この時の演目は「仮名手本忠臣蔵」。勘三郎は「これは古典中の古典。先人たちが築いてきたものを習った通りにやりたい」と、意気込みと共に歌舞伎の原点への限りないリスペクトも垣間見せる。
勘三郎と息子たちが演技や振り付けで足を踏むタイミングが自然と合うことについて、「DNAだと思う」と語る勘三郎。勘九郎と七之助もそれは「無意識」だと即答。親子だからこそ息がぴったり合うというエピソードだ。師匠としては息子たちに厳しい勘三郎も、この時ばかりはうれしそうな父としての一面を見せている。
父である先代勘三郎のことを尊敬もし、畏怖しながらも、「大好きだった」と語る。自分のファンではなく父、そして中村屋についたファンに支えられているのだからと、「いつも新鮮なものを見せなくちゃならないという使命感」で観客の期待に応え、楽しませてきた。
勘九郎に泣く芝居を付ける勘三郎。そこには師匠としてのいつになく厳しい顔があった。気持ちを作り込まなくともその一瞬で芝居を見せられるのが歌舞伎の一つの方法であると、息子であり弟子である勘九郎に演技論を伝授。また、「型があるから型破り」と、型＝基本の大切さを強調するのが彼らしい。
2010年に難治性の難聴を患い、休養へ。その7か月後には、勘三郎は復帰興行のある長野県松本市にいた。劇場に入った途端、そこには多くのファンからの励ましの寄せ書きが。劇場の芸術監督で「法界坊」の演出家でもある盟友・串田和美と共にそのメッセージを読みながら、勘三郎は「おかえりなさい」の文字に号泣した。
2005年、歌舞伎座での襲名興行には歴代の付き人たちが祝いを言うために楽屋に駆け付け、勘三郎も思わず涙。付き人たちの表情から、勘三郎の人望がうかがえる。また、片岡仁左衛門や長男・中村勘太郎（当時）ら共演者からの襲名を祝す口上にも涙を浮かべていた。
勘三郎が生まれた年に中村屋に入門した中村源左衞門がガンで亡くなり、幼いころより世話をしてもらった古参の門弟の死に涙をこぼした勘三郎。襲名披露興行を締めくくる京都・南座での公演には、源左衛門の写真を胸に舞台に立った。
勘九郎が亡き父から受け継いだ名演目 平成中村座ニューヨーク公演「怪談乳房榎」
1990年に勘三郎が復活させ、2011年に勘九郎へと受け継がれ再演した演目。2014年に世界中から選ばれた舞台芸術の祭典である「リンカーンセンターフェスティバル」で、中村勘九郎、中村七之助、中村獅童らによって上演された。勘九郎の三役の早替り、本水を使用した大掛かりな滝のセットでの立廻りなど、見せ場が満載。
特集：勘三郎から勘九郎・七之助へ 受け継がれる魂 NYへの挑戦
『映画 中村勘三郎』
9月13日（土）18:45～【WOWOWプライム】
9月15日（月・祝）12:15～【WOWOWライブ】
平成中村座ニューヨーク公演「怪談乳房榎」
9月13日（土）20:30～【WOWOWプライム】
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コクーン歌舞伎「天日坊」9月6日(土)20:00～【WOWOWライブ】
『映画 中村勘三郎』© 2013フジテレビジョン
