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市川海老蔵&柴咲コウ&三池崇史
『喰女−クイメ−』
単にホラーとかドラマでは済まされない、女性が共感できる作品
『喰女−クイメ−』市川海老蔵&柴咲コウ&三池崇史 単独インタビュー

取材・文:金澤誠 写真:杉映貴子

『一命』の市川海老蔵と『着信アリ』の柴咲コウが、再び三池崇史監督と組んだ戦慄(せんりつ)のホラー映画『喰女−クイメ−』。鶴屋南北の歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」がモチーフの舞台に出演する俳優が、劇中劇の世界と現実世界をオーバーラップさせながら、愛憎と狂気の世界へ入り込んでいく。本作で企画にも名を連ね、女を裏切る“色悪”の男を演じた市川海老蔵と、4時間以上もかかる特殊メイクで「四谷怪談」のお岩になりきった柴咲コウ、そして意外にも「ホラーはあまり得意じゃない」と語る三池監督が、作品の魅力を語った。

■「四谷怪談」の本質をわかりやすく伝える

Q:劇中劇で「東海道四谷怪談」を取り上げるというアイデアは、どういうところから発想したんですか?

三池崇史監督(以下、三池監督):最初は普通の「四谷怪談」をやろうとしたんですが、自然に今のような脚本になっていきました。ただ、「四谷怪談」を劇中劇として演じてもらっていますが、中身は変わっていない。それに、これが書かれた時代の仕組みは違うけれど、気持ちの部分では現代と同じだと感じたんです。だから今回のように、時代劇と現代劇という境界線をぼかしてしまったんだけれど、それを演じる海老蔵さんがまさにそういう存在じゃないですか。歌舞伎を継承しながら、現代人として刺激を与え続けるという。

市川海老蔵(以下、海老蔵):「四谷怪談」の伊右衛門は、実は結構、筋が通っている男なんですよ。一応、妻のお岩のことも思っているし。でもこの演目ができた江戸時代のお嬢さん方は、伊右衛門はすごく悪い人物に感じたと思うんです。ただそれをそのまま時代劇でやっても、今の人には伝わりにくい。先日この映画を女子高生たちに観せたら、僕が現代劇のパートで演じた浩介に対して「浩介サイテー」というご意見が多かったらしいんです。それはよかったなと。つまり彼女たちは伊右衛門を演じる現代人の浩介を通して、昔の人たちが伊右衛門に持っていた感情を浩介に向けている。その部分がちゃんと映っているということでは、時代劇でやるよりもわかりやすくなったと思うんですよ。

柴咲コウ(以下、柴咲):わたしは「四谷怪談」のお岩と、それを演じる美雪を演じましたが、お岩は着物を着た古風な女性で、そのシチュエーションだけ見ると全て共感できるというわけじゃないんです。やはり社会も女性の立ち位置も変わってきていますし。でもお岩のように家に居ようが、美雪のように外で働いていようが、一人で生きる女性の孤独感は変わらないと思うんですね。そこではリンクするものを感じました。

■三池監督との仕事

Q:お二人とも三池監督とは2度目のお仕事ですね。監督とまたやってみたいと思っていたんですか?

柴咲:普段は脚本を読んで慎重に出演するかどうかを決めるんですが、今回は三池監督だから何でもいいと思いました(笑)。

海老蔵:監督に対して信頼があるよね。

柴咲:そうですね。とにかく三池監督との仕事は楽しいんです。撮影現場でお芝居をしていても、これがどういうふうに編集されるんだろうというのが、あまり読めないことも面白くて。普通はそれが不安感につながると思うんですが、そうじゃないんです。どんな監督さんもその場しのぎのことは言わないし、自分が撮りたいものを撮るんだろうけれど、三池監督は最初にやらせていただいた『着信アリ』でも、無邪気に豊かなものを生み出していく感じがして。しかもその場で降って湧いたものではなく、ちゃんとプランがあって追求している感じがあって、演じる側として監督に動かされているのがすごく楽しいんです。

海老蔵:僕も監督との仕事が楽しかったので、今度は俳優の方向からだけではなく、どうやって三池監督が映画を作られていくのか勉強したいと思って、企画から参加させていただきました。監督の場合は、脚本はもちろんあるんですけれど、途中からその場で「こういう感じでやろうか」とアイデアを提供してくださる。決め込まないでその場で作っていく感じが楽しかったですし、勉強になりました。

■市川海老蔵は宇宙人!?

Q:柴咲さんは、お岩の特殊メイクが大変ではなかったですか。顔が崩れていくメイクは何段階かあって、最長4時間以上もかかったそうですね?

柴咲:特殊メイクをしている間は動けないのですが、わたしは動かないことがあまり苦じゃないんです。

海老蔵:僕は絶対にダメ。動かずにじっとしているなんてできないよ。

柴咲:一人っ子だからですかね。一人でボーっと考えているのが好きなんです。

Q:海老蔵さんと柴咲さんは、性格的には対照的なようですが、お互いの印象は?

柴咲:最初は、海老蔵さんのことを宇宙人かと思いました。あまり近くに居てほしくないタイプですよ(笑)。周りが大変ですから。

海老蔵:そんなことないよ。でも最近よくそう言われるんだよね(笑)。僕はコウちゃんが持っている温度にびっくりした。僕はじっとしていられないタイプだから、ある意味対極でしょ。この人の時間の流れ方ってすごいと思った。僕の場合だと温度がすぐに急上昇する感じだけれど、コウちゃんはあまり温度が上がらない感じが常にあって。でも今日久々に会ったら、ちょっと温度が変わった感じがしたね。

柴咲:よく気が付きましたね。占い師みたい(笑)。実はこの映画を撮っているときにも温度のことを言われて、交感神経(体を興奮状態にしたり活発に活動させるときに働く神経)と血圧を測りに行ったんです。そうしたら「柴咲さんは8割が副交感神経(心臓の活動を抑え、体をリラックスさせて、ゆったりとした状態のときに働く神経)で生きています。これが9割になると体調を崩してしまいますよ」とお医者さんに言われたんです。普通の人は交感神経優位で活動しているんですって。

海老蔵:それを僕は感じたんだろうね。でも今は変わったよ。8割が6.5割くらいになったんじゃない。

柴咲:よかった。バランスが取れてきたかもしれない(笑)。

■人間の本質やリアルな男女を描いた映画

Q:撮影中にお話を伺った際、柴咲さんはどんなふうに編集されるのか楽しみだとおっしゃっていましたが、完成した作品の印象はいかがでしたか?

柴咲:10代や20代の頃には脅かし系のホラーを友達と笑いながら観ていたんですけれど、もうそういうものはおなかがいっぱいかなと思っていて。もう少しその作品が作られる意義みたいなものが欲しいと思っていたんです。この映画は、わかってはいるけれどやめられないという、男女間にあるいろんなことを、あらためて実感させられるところがありました。だから単にホラーとかドラマでは済まされない、女性が共感できる作品になったと思いますね。

海老蔵:「四谷怪談」というものを現代人として感じられる、面白いものになったと思うんです。また女性や男性というものがよく出ている作品だと思います。人間の本質の部分をちゃんと突いているのは、さすがに三池さんだと思いましたね。

三池監督:僕は自分でホラーは不得意だと思っているんです。いわゆるホラーの怖さというのは専門職の作り方があって、そのための表現だったり物語がある。どうもその感じが得意じゃないんですね。ただそういう怖さを期待する人もいるだろうから、最低限の感じは入れ込もうとしましたけれど。

柴咲:真面目ですね(笑)。

三池監督:日本人的な生真面目さですよ(笑)。その辺では葛藤があるんですけれど、自分としてはそれとは違った怖さや面白さを作りたいと。今回なら恋をしている女性とか、恋に憧れている女性に楽しんでもらいたい。どちらかといえば、そういう女性を応援している映画だと思っています。浩介も伊右衛門も、美雪やお岩を好きじゃないかといえばそうではない。今はそれが冷めつつあるかもしれないけれど、それは求めている方向や見えているその先が少しずれているだけであってね。実生活においても男女の方向性が完全に一致することはないじゃないですか。そういう意味でもリアルな男女を描いた映画だと思います。

昨年、撮影中の現場に伺った際も、ホラー映画を撮っているとは思えないほど楽しげだった監督と主役の二人。その雰囲気は今回のインタビュー中も健在で、互いに飾らない言葉でツッコミを入れてくる。その要となるのが三池監督の存在だ。劇中「四谷怪談」の宅悦役で登場する伊藤英明を含め、かつて三池監督と仕事をしたことがある俳優は、その演出に全幅の信頼を置いていた。監督と俳優との、ブレのない幸せな関係がそこにあった。

(C) 2014「喰女−クイメ−」製作委員会

映画『喰女−クイメ−』は8月23日より全国公開

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