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第26回 ニッポン・コネクション

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ぐるっと!世界の映画祭 第26回 ニッポン・コネクション

各国で日本映画専門の映画祭が増えているが、圧倒的な規模と実績を誇るのがドイツ・フランクフルトで開催される日本映画祭ニッポン・コネクション。2人の大学生の情熱から始まった映画祭は、いまや6日間の開催期間中に、約1万6,000人を動員するまでに成長しました。その2014年5月27日~6月1日に行われた第14回大会を、映画コーディネーターの中西佳代子さんがレポートします。(取材・文:中山治美 写真:中西佳代子)

ニッポン・コネクション」オフィシャルサイト→

外務大臣も認める貢献度

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グッズ
映画祭のメインカラーはピンク。映画祭グッズはピンクと茶が基調。

ニッポン・コネクションは2000年にスタート。日本文化に強い関心を持つドイツの映画学専攻の大学生だった、現・フェスティバル・ディレクターのマリオン・クロムファスと、ホルガー・ツィーグラーが、当時、現地ではめったに観ることができなかった日本映画を上映しようと企画したのがきっかけだ。その2人の行動力は周囲の関心を呼び、結果として予想をはるかに上回る約1万人を動員したという。その勢いに乗って2002年から毎年開催となり、2004年にはプログラムの一部がドイツのライプチヒとスペインのバルセロナでも上映された。

舞台挨拶
上映会場の様子。今年は日本から過去最大となる70人のゲストが参加した。

また、2013年には日独文化交流に多大なる貢献を果たしたとして、岸田文雄外務大臣からクロムファスに、外務大臣表彰が贈られている。「地元では一大カルチャーイベントとして定着しており、幅広い年齢層の観客が駆け付けています」(中西さん)

ツウも驚くプログラム

アーティストハウス
4か所ある会場の1つのアーティストハウス・ムゾーン塔。名前の通り通常はコンサートや演劇などが行われているフランクフルトのカルチャー発信基地。

中西さんと同映画祭の出会いは2005年。当時、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の海外窓口を担当していた中西さんは、審査員で参加していた、ニッポン・コネクションの立ち上げメンバーの一人であるアレックス・ツァールテンと交流が始まった。その後、中西さんは都合がつく限り参加しているが、その魅力は何といっても多彩なプログラムにあるという。今年は『福福荘の福ちゃん』をオープニングに、「ニッポン・レトロ」部門では中平康監督作9本を35ミリフィルムで、さらに「ニッポン・アニメーション」部門では山村浩二監督特集も行われた。

アダム
英国で日本映画の配給を手掛けている「サードウィンドウフィルムズ」のアダム・トレル(写真中央)による「日本映画を海外に売り込む実践法」のレクチャー。『福福荘の福ちゃん』の藤田容介監督や映画『恋の渦』の出演者たちも真摯(しんし)に拝聴中。

「メジャー作品から自主映画まで驚くようなラインナップで、他の映画祭にはまねのできない情報収集力にいつも驚かされています。近年は、各国の日本映画の専門家にとっても新たな才能・作品に出会える貴重な機会として注目されています」(中西さん)

ゲストにとっても交流の場

あいときぼうのまち
中西さんが海外窓口を担当した菅乃廣監督の『あいときぼうのまち』(写真)と井上淳一監督の『戦争と一人の女』は、実験的な作品を集めた「ニッポン・ビジョン」部門で上映された。‐‐(C)「あいときぼうのまち」映画製作プロジェクト

中西さんは今回、実験的な作品を上映する「ニッポン・ビジョン」部門に選出された井上淳一監督『戦争と一人の女』菅乃廣監督『あいときぼうのまち』の海外担当としての任務もあった。現地には井上が赴き、シンポジウムなどにも積極的に参加した。「今年は過去最多のゲスト人数で、ベテランや新人が入り交じって交流するような“日コネ”(ニッポン・コネクション)にしかないマジックを目の当たりにするたびに、映画祭の醍醐味(だいごみ)を感じます」(中西さん)

シンポジウム
「ニッポン・カルチャー」部門で行われたパネルディスカッション「今日の映画法‐日本映画産業における検閲とプロパガンダ」。同映画祭立ち上げメンバーの一人でもあるハーバード大学准教授アレックス・ツァールテンや、『祭の馬』の松林要樹監督、『戦争と一人の女』の井上淳一監督らが参加し、熱い議論が交わされたという。

観客の嗜好(しこう)は、コンペティションの「ニッポン・シネマ」部門で『ペコロスの母に会いに行く』が観客賞のニッポン・シネマ賞を受賞したように、娯楽性の高い作品が好まれるという。「他の映画祭ではなかなか見られない傾向ですが、コメディー映画が受賞(2013年は『鍵泥棒のメソッド』)することも多いです」(中西さん)

ペコロス
観客投票で決定するニッポン・シネマ賞は、森崎東監督の『ペコロスの母に会いに行く』。フランクフルト・メッツラー銀行から賞金2,000ユーロ(約28万円)が授与された。(1ユーロ140円計算)‐‐(C)2013『ペコロスの母に会いに行く』製作委員会

日本文化をまるごと体験

ゲーム、将棋、タイヤキ
ニッポン・カルチャー部門ではゲームに将棋、折り紙、弓道、茶道など日本文化を体験できるプログラムが多彩。今年は日本食グルメツアーなども初開催された。

日本からフランクフルトまでは直行便で約12時間。予算が厳しい映画祭ゆえ、コンペティション部門である「ニッポン・シネマ」などメインの出品作以外は、監督の渡航費や滞在費は自己負担での参加を覚悟した方がよさそうだ。「その場合でもスタッフやボランティアの家にホームステイするなど、できるだけ宿泊費の負担がかからないよう手配してくれます」(中西さん)

お多福風邪
映画祭会場内に出店しているソバ屋「お多福風邪」。店名は何ですが(苦笑)、中西さんいわく「あっさりだしでおいしかった」とのこと。

食環境は充実している。本映画祭の特徴の一つに音楽や美術、食など日本文化を体感できる「ニッポン・カルチャー」部門があり、ソバや日本式の弁当を出す店なども出現する。「ゲストにはカフェテリアの食事券(3食分に加え軽食も)と、バーでのドリンクチケット(1日3枚)が配布されます。こちらも極力ゲストがお金を掛けなくても済むように配慮されています」(中西さん)

ドイツ映画博物館は必見!

ドイツ映画博物館
上映会場の一つになっているドイツ映画博物館は、時間があったらぜひ訪れたい場所。11月2日までは「映画のシュールレアリスム」展を開催中。

会期中、ぜひ訪れたいのが「ニッポン・レトロ」部門の上映会場でもあるドイツ映画博物館だ。「数年前には『エイリアン』のデザイナーとして知られるH・R・ギーガー展が開催されており、見応えたっぷりでした。その博物館があるマイン川沿いは美術館通りとも呼ばれ、シュテーデル美術館のモネやピカソを所蔵する名画コレクションが有名。個人的には、市中心部にあるフランクフルト現代美術館も必見です」(中西さん)

シュニッツェル
ドイツ版カツレツのシュニッツェル。ドイツビールとの相性も最高。

また希望者には映画祭側が市内ツアーを用意しており、ゲーテ博物館を訪ねたり、名物のアップルワインを楽しむ催しもあるという。日本人にとってもドイツ文化に触れる絶好の機会だ。

海外映画祭初心者に最適

カフェ
どの会場にも併設されているカフェスペース。上映前後にはここが参加者たちの交流の場となる。

「運営全てがボランティアに任されているため、大きな映画祭のようなプロフェッショナルなスタッフの対応を期待すると物足りなく感じるかもしれません。しかしその分、熱意あるスタッフと映画祭を楽しみながら交流できるのが“日コネ”の素晴らしいところだと思います。スタッフは皆、日本が好きで日本語が堪能な人も多く、受け入れ体制はバッチリなので、“海外映画祭に参加するのは初めて”という方にこそオススメしたいですね」(中西さん)

中西さん自身は、今秋開催予定の第1回京都国際映画祭にて、プログラムコーディネートを担当するという。数々の映画祭を訪れた経験がどのように生かされるのか、期待したい。

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