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ぐるっと!世界の映画祭 第27回 サマー・フィルム・スクール・ウヘルスケー・フラジシュチェ

第27回 サマー・フィルム・スクール・ウヘルスケー・フラジシュチェ(チェコ共和国)

チェコ共和国といえばカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭が有名ですが、同国東南部でも40回も続いている映画祭があります。それが「サマー・フィルム・スクール・ウヘルスケー・フラジシュチェ」。期間中、約5,000人が集った第40回大会(2014年7月25日~8月2日)の様子を、公益社団法人ユニジャパン国際事業部に所属する村上静香さんがレポートします。(取材・文:中山治美 写真:村上静香)

サマー・フィルム・スクール・ウヘルスケー・フラジシュチェ」オフィシャルサイト→

人口約2万6千人の町で1964年にスタート

サマーキャンプ
映画祭の名前どおりにのんびりした雰囲気の映画祭会場。家族連れもふらりと遊びに来ているようだ。

同映画祭は、1964年にチェコ映画界の交流を目的にスタート。共産主義国から共和国に変動する中で中断もあったが、2000年あたりからチェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランドの4か国(ビシェグラード4か国)の学生を対象にしたワークショップ「サマー・フィルム・キャンプ」で活気づいている。国際基督教大学の学生時代、チェコの歴史を専攻していたという村上さんも、まさに“サマースクール”いう映画祭の名前に惹(ひ)かれて初参加したという。

劇場前
上映会場の一つのKlub Kultury。劇場はどこも30分前に行かないと入れないほど、観客でにぎわっていたという。

『存在の耐えられない軽さ』などで知られるチェコ生まれの作家ミラン・クンデラの小説を読んで、あまりにも自分にはわからない感覚だったので、“チェコの歴史を勉強したい!”と思ったのがきっかけです。そこからチェコ・ヌーベルバーグを知り、映画の世界へとたどり着きました」(村上さん)

舞台
満席のKlub Kulturyの劇場内の様子。

映画祭全体が映画学校

屋台
会場には屋台も多数あり、まさにお祭りムード。

他の映画祭のようなレッドカーペットやコンペティションはないが、さまざまな角度から切り取ったプログラムが豊富。今年はロベール・ブレッソン回顧特集に始まり、スペイン、スクリューボールコメディー、ポルノアートなどの特集があった。「“フル参戦したらフィルム・ヒストリーが網羅できるのでは?”そう思うほど、押し付け過ぎない教育的な映画のプログラミングだと思いました」(村上さん)。

料理
チェコのソーセージは絶品! オープンサンドで野外ランチ。

村上さんが着目したのがこの映画祭ならではのビシェグラード特集で、ポーランドのセックスコメディー『SFバイオワールド/女帝国の謎』(1984)も上映され、村上さんもタイトルに惹(ひ)かれて観賞。「どの会場も若い観客であふれ、上映30分前に並ばないと着席できないほどでした」(村上さん)。熱気あふれる様子が伝わってくるかのようだ。

映画祭ニュース
毎日発行される映画祭新聞。今年はピーター・グリーナウェイ監督がゲストとしてやって来た!

チェコ映画界の現状は?

チェコ映画館
プラハにある趣深い映画館Kino Lucerna。1907年建築。

チェコは、1989年に共産主義体制が終結し、1993年にスロバキアと分離・独立した経緯があるため、長編映画の製作本数は2013年で30本と、そう多くはない。それでも、映画『のだめカンタービレ 最終楽章』2部作などの外国作品のロケ撮影誘致や、他国との合作も増加している。「この映画祭もチェコ映画クラブ協会が主催し、サマー・フィルム・キャンプにはエミール・クストリッツァ監督の母校でもあるチェコ国立芸術アカデミー映画学部(FAMU)とパートナーシップを結んでおり、映画業界と学校が非常に近いのでより実践に基づいた協力体制がとれるようです」(村上さん)。

ゾートロープ
映画祭会場の一つBez Klikyでは、巨大なゾートロープ(回転のぞき絵)がお客様をお出迎え。ミュージアムも併設している。

映画祭で行われた現代英国社会映画特集でも、英国史の教授によるレクチャーが行われ、「かなりアカデミックな内容だった」とか。この映画祭から、将来のチェコ映画界を担う逸材が出るかもしれない。

宿泊もワイルドだぜ

駅
愛らしいウヘルスケー・フラジシュチェ駅。プラハからは列車で約4時間、バスで約3~4時間。オーストリア・ウィーンからは約2時間半。

この映画祭が行われたウヘルスケー・フラジシュチェには、プラハかオーストリアのウィーンから、列車かバスで。宿泊は、体育館が開放されているので、寝袋を持ち込めば無料でも可能。また野宿する人も多いという。学生さんに優しい映画祭なのだ。

宿
宿泊は、インターネットで個人の空き家を仲介してもらう「Airbnb」を活用し、地元のワイン農家に宿泊(1泊約2,000円)。ウヘルスケー・フラジシュチェが属するモラビア地方はチェコ有数のワイン産地でもある。

村上さんは、空き家を活用したインターネットサービス「Airbnb」(エアビーアンドビー)で見つけたワイン農家に宿泊。その家で貸してくれた自転車に乗って、会場まで約3キロメートルの道のりを通ったという。なんとも牧歌的だ。「その農家のオーナーいわく、映画祭期間中の無料コンサートや野外上映を楽しみにしているそうです」(村上さん)。映画祭は小さい街の、市民に親しまれている夏恒例行事となっているようだ。

ライブ会場
映画祭会場ではライブや野外上映も楽しめる。

足を延ばしてプラハへ

フィルムスクール
プラハではエミール・クストリッツァを輩出したチェコ国立芸術アカデミー映画学部(FAMU)を見学。アメリカのエンタメ業界誌「ハリウッド・リポーター」が発表した世界の映画学校ベスト25に選ばれたこともある。

ウヘルスケー・フラジシュチェは歩いて回れる小さな街なので、村上さんは足を延ばしてプラハにあるチェコ国立芸術アカデミー映画学部や、イフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭とそのマーケットを主催しているドキュメンタリー・フィルム・インスティテュートを訪問したという。

共産時代のポスター
映画グッズショップで見つけた磯見忠彦監督作『アフリカの鳥』(1975)のポスター。共産主義時代は自分たちの解釈でポスターを手描きしていた。こんな発掘も楽しい。

「そのドキュメンタリー・フィルム・インスティテュートでは、作品のオンラインライブラリー化を進めており、チェコ映画の情報発信を積極的にやっていました。それは、まだチェコ映画の製作本数が少ないからできることでもあるのですが。でも現在、日本映画を促進していくための情報を集約したホームページのリニューアルに取り組んでいるので、非常に参考になりました」(村上さん)

東欧に興味ある人はぜひ

映画祭グッズ
ヒッチコック監督も天国で笑ってる? 『サイコ』をパロディーにした映画祭バッグと、映画祭のカタログ。

映画祭の上映作品は英語字幕付き、パスを購入すれば誰でも参加可能だ。「チェコは小さい国ゆえに世界の映画界からは見落とされがちですが、だからこそ彼らの、業界や町が一体となって行っている取り組み方は、今の日本映画界にとっても学ぶことが多いと思います。体育館での上映には小学生がボランティアで参加するなど、町ぐるみで映画祭を盛り上げようとしているのが心地よかったです」(村上さん)。

レポート・写真:村上静香
取材・文:中山治美

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