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吉永小百合&阿部寛&竹内結子&笑福亭鶴瓶
『ふしぎな岬の物語』
誰もが自分以外の人のことを思って、あったかい気持ちになる作品
『ふしぎな岬の物語』吉永小百合&阿部寛&竹内結子&笑福亭鶴瓶 単独インタビュー

取材・文:金澤誠 写真:三浦憲治

千葉県の岬に実在する喫茶店をモチーフに、それを営むヒロインと彼女を取り巻く人々との触れ合いを心温まるタッチで描いた成島出監督の『ふしぎな岬の物語』。この作品で初めて企画も兼任した主人公・悦子役の吉永小百合、その悦子をいちずに守ろうとするおい・浩司役の阿部寛、浩司と幼なじみのみどりを演じた竹内結子、悦子とひそかに思い合うタニさんにふんした笑福亭鶴瓶という主要キャスト4人が、今回の役づくりやお互いの印象、撮影時のエピソードなどを語った。

■企画の立ち上げと参加の経緯

Q:吉永さんは、この映画で企画にも名を連ねていますね。

吉永小百合(以下、吉永):はい、何げない題材なんですけれど、寂しい人やつらい思いをかかえた人たちが、その場所へ行って癒やされるという。そんなパワースポットみたいな岬のカフェが実際にあって、そこをモチーフに原作が作られています。この世界を映画で再現してみたいなと思ったんです。みんなで寄り添って明日に向かう感じの作品にしたいと思って、この題材を選びました。自分からこれをやりたいと言ったので、責任を取らざるを得ないかなと思って、企画に名前を出したんです。

Q:鶴瓶さんは吉永さんと3度目、阿部さんと竹内さんは初めての共演でしたね。

笑福亭鶴瓶(以下、鶴瓶):最初の共演は『母べえ』のおじさん役で、次が『おとうと』の弟役。「今度は夫婦役ね」とお互いに言っていたんですけれど、今回は吉永さんからお手紙をいただいて、夫婦役じゃないけれど、どこか互いに思い合っている役なんですがどうですかと。こういう話が来たのは不思議でしたね。

吉永:成島監督と相談して決めさせていただいたんですが、「ぜひ、このタニさんの役は鶴瓶さんにお願いしたい」と思って、すぐにお手紙を出しました。鶴瓶さんはお忙しい方ですから、一刻も早く打診しないといけないなって。

鶴瓶:どんなに忙しくても、あんな手紙いただいて断る芸人いませんよ!

阿部寛(以下、阿部):僕は以前にも吉永さんがお声を掛けてくださったことがあったんですけれど、その時はスケジュールが合わなくて駄目で。今回念願がかなった感じで、本当にうれしいです。

竹内結子(以下、竹内):わたしは、吉永さんは偉大な大先輩ですし、近付くのもためらってしまうくらい緊張していたんです。でも、お会いしてみたらとても気さくに話し掛けてくださるし、「一緒に頑張って作品を作りましょうね」と励ましてくださるとても頼もしい方で。「わたし、この人のために頑張りたい!」と思いました。

■吉永小百合と笑福亭鶴瓶の役づくり

Q:今回の役柄を吉永さんと鶴瓶さんはどのように捉えましたか?

吉永:悦子はあの岬のカフェで30年間コーヒーを淹(い)れ続けている女性ですから、まず岬へ行ってその空気や景色に触れてみることから始めました。それと、撮影は今年2月からでしたが、昨年の12月から毎日自分でコーヒーを淹(い)れるようにしたんです。指導してくださった方に教えていただいて、コーヒーって丹念に淹(い)れることによっておいしさが出てくるということを、初めて知りました。食べ物でも何でも、手作りの思いがこもることが大事なんだなって、あらためて気付かされましたね。悦子の30年間には追い付きませんけれど、一生懸命その感じが出せるようにしました。

鶴瓶:タニさんは悦子さんのことを30年間思い続けているんですけれど、僕自身はそういう性格じゃない。でも最初の方のシーンで、悦子さんに阿部さんの演じる浩司のことで感謝されるところでは、タニさんへの愛情もちょっと含まれているのを感じるから、僕自身もつられてタニさんの気持ちになって見てしまう。そこは女優さんとしてのお芝居なんだろうけれど、役としての気持ちが引き込まれていくんです。僕は女優さんというのは光を当ててほしい側の、月みたいな存在だと思っていたんです。でも吉永さんは、太陽やと思いますね。みんなに光を当てて、その人を光らすというか。だからプロデューサーに向いていると思うんですよ。

■阿部寛と竹内結子の役づくり

Q:阿部さんと竹内さんは、今回の役柄をどのように捉えましたか?

阿部:浩司は町全体の空気を引っ張っていかなきゃいけない役でもあるので、緊張しながらやっていました。皆さんもそうだと思いますが、最初にキャラクターのプロフィールを書いたものをいただきまして、それで叔母の悦ちゃんと浩司の関係を想像しました。吉永さんに「浩司が初めて悦子と会った時に近い年齢の写真をお借りできますか」と言われて、子供の頃の写真をお渡ししたたんですが、そのお返しに浩司が悦子と初めて会った頃の吉永さんの写真をいただいたんです。写真を見ると、もうその頃の吉永さんは女優をされていたので、ものすごくきれいな大人の女性なんですね。浩司は母親からろくな愛情を受けていないので、そんな人間が悦ちゃんのような人と出会ったら、思春期間近で女性的なものも意識しただろうといったことなど、写真を見たことでよりイメージしやすくなりましたね。

吉永:『おとうと』の時にも鶴瓶さんから、小学生の頃の写真をいただきまして、わたしはこの弟と一緒に大きくなったんだという思いを持ったんです。ですから今度も、悦子が施設から浩司を引き取ってきた小学6年生の頃に近い写真を、阿部さんから貸していただきました。

竹内:みどりは結婚に失敗して故郷の町に戻ってくるんですけれど、どんな心持ちでここへ帰ってきたのかといったことは、やはりキャラクターのプロフィールが手助けになりました。みどりは幼なじみの浩司兄ちゃんのことが好きで、浩司兄ちゃんは悦子さんのことが好きなんです。それはみどりにとってはあまりいい気持ちではないと思うんですけれど、「しょうがないよ、悦子さんだもん」というのが8割、「ちょっとなあ」という嫉妬心のようなものが2割くらいだと思いますね(笑)。ただそれも含めて、みどりは浩司兄ちゃんの人格全てが好きなんだと思うんですよ。

■共演者同士の印象

Q:先ほど鶴瓶さんが、吉永さんの演技に引き込まれたとおっしゃいましたが、皆さんが今回共演してみて感じたこととは?

吉永:阿部さんと竹内さんは『チーム・バチスタ』シリーズなどで共演していらっしゃるので、最初から息が合っていて。二人でしょっちゅう話していましたよね。

阿部:浩司が、飲めない酒を飲んで酔っ払うシーンは、結子ちゃんに助けられましたね。あそこは二人の人間的なところが一番出るところなのですが、長回しで一気に撮ったんです。完成した映画を観て、本当に助けられたなと思いましたよ。

竹内:阿部さんはその時に演じているキャラクターによって、まとう空気が違うんです。今回は、わたしのことを幼い頃からかわいがってくれているお兄さんという雰囲気を感じたので、今までにないくらい現場でずっとおしゃべりしていました。あの酔っぱらっているシーンは、自分よりずっと年上の浩司兄ちゃんを、何か子供っぽくみどりが感じるところだと思いました。それに、わたしは吉永さんにコーヒーの淹(い)れ方を教えてもらうシーンがあるんですけれど、想像していた以上に「なんて頼もしい方なんだろう」と感じました。「主演の方に、こんなに甘えていいんだ」という安心感があって。鶴瓶さんは、本番も休憩中も変わらない方なので、「本当に(テレビなどで見るイメージ)そのままなんですね?」と言ったら、「おまえ、どこの素人だ」と返されました(笑)。

阿部:鶴瓶さんは、タニさんそのものでしたね。浩司の兄であり、父親であるみたいな。全て受け入れてくれるので、浩司と同様に、僕は甘えていましたよ。

吉永:阿部さんはお芝居がすごく面白いけど、普段はとても真面目な方で。しっかりと役を研究してくるタイプの方だなと思いました。

阿部:後半で、吉永さんの独白を聞く長いシーンがあるんですけど、そこの撮影はあえてテストをやらずに本番一発だけだったんです。悦ちゃんのセリフを自分でも読んで、僕なりにイメージしてから撮影本番に臨んだんですが、吉永さんがやるともう全然違って。感情の動きもすごく立体的になり、浩司としては、気持ちを乗っけてその言葉を聞きながら見ているしかなかった。一緒に演じさせていただいたことで、すごいものをもらった気がします。

鶴瓶:この映画は、誰もが自分以外の人のことを思ってあったかい気持ちになる、落語のような世界を描いていると思うんです。そういう作品を吉永さんが作って、お客さんに届けたいと思った。それがうれしいし、ほんまに多くの人に観てもらいたい作品ですよ!

吉永小百合という存在の大きさを感じさせる取材だった。特に阿部寛はこの役のために船舶免許を取得するほどの気合の入れようで、吉永を心底リスペクトしていたようだ。「この人のために頑張りたい」と思った竹内や、寒い撮影現場に某有名うどん店の屋台を丸ごと差し入れしたという鶴瓶も含め、誰もが彼女のために何かしたいと思わせるのが、吉永小百合の人徳。吉永自身は企画者として、公開されるまで「子供を受験させるようで心配」と語っていたが、見事映画が「合格」することを、全ての関係者が願っていることだろう。

(C) 2014「ふしぎな岬の物語」製作委員会

映画『ふしぎな岬の物語』は10月11より全国公開

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