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染谷将太&前田敦子
『さよなら歌舞伎町』
ラブホテルで繰り広げられる裸の人間模様
『さよなら歌舞伎町』染谷将太&前田敦子 単独インタビュー

取材・文:那須千里 撮影:平岩亨

不特定多数の男女が出入りするラブホテル、しかもさまざまな国籍の人が行き交う歌舞伎町という土地ならではの、人間味あふれる群像劇が完成した。それぞれ切実な事情を抱えた人々の人生模様を、廣木隆一監督&脚本家・荒井晴彦の名コンビが描く。その中で一流ホテルへの就職に失敗しラブホテルの店長として働く徹と、その恋人でミュージシャンを夢見る沙耶を演じたのが、染谷将太と前田敦子。若手俳優きっての注目株である二人が本作への愛と挑戦を語った。

■ラブホテルの従業員はジャージが鉄則!?

Q:撮影は実在のラブホテルで行われたそうですが、映画の舞台としてどんな印象を受けましたか?

染谷将太(以下、染谷):面白いシチュエーションだなあと思いました。いろんな人が同じ建物の中に集まっていて、しかも自分の役はスタッフとしてその様子を全体的に見る立ち位置にあって、さまざまな人間関係を把握しているポジションがまた面白いなと思いましたね。

前田敦子(以下、前田):外観と内部は別々の場所で撮ったんですけど、内装がすごく、かわいいですよね。キレイだしおしゃれだし、こういう舞台装置のおかげで来る人のテンションも上がるのかな……? と思いながら見ていました。

染谷:実際にラブホテルで働いた経験のある友達がいたので、その人に裏話を聞いたり、撮影していたホテルの従業員の方を観察したりもしました。勤務中の服装は、やっぱりみんなジャージなんですよ、劇中と同じような。ジャージに足元はクロックス(笑)。あと、撮影が昼夜逆転だったんですよね。毎日夕暮れぐらいに現場に入って、朝方に終わるという。

■ラブホテルで鉢合わせした男女のリアクション

Q:徹と沙耶はどちらも今の自分に満足していなくて、でも次の場所に行くこともできず、お互いを欺いてしまいます。

染谷:徹は基本的にナヨナヨしていると思ったんですよ。中途半端な人物だなという印象があったので、自分としてはもうちょっと極端になってもいいんじゃないかなと……アドバイスみたいになっちゃっていますけど(笑)。きっぱりと諦めて新しい道を見つけるのもいいですし、逆に今の仕事にやりがいを見いだしてそこにプライドを持ってやり続ける道もあると思うんです。でもそうはなっていなくて、ねちっとしている感じじゃないですかね。

前田:そんな徹の性格を含めて、同棲(どうせい)中の二人の関係も、自分の思っていることを率直に言い合うという状態を超えたものだったんじゃないですかね。表向きは穏やかだったとしても。

Q:徹が働くラブホテルで沙耶と鉢合わせしたときの、二人の対立はとても見応えのあるシーンでしたが、それぞれどんな心情だったのでしょうか?

前田:お互いに同じじゃないですか、状況は。どっちが悪いとかはわからないですけど、お互いに相手にうそをついていたわけですから……。ただ、思わず手が出ちゃった沙耶の気持ちは、わからなくはないんです。徹に謝るのもすがるのも違うし、もうどうしようもない感じが、あの一撃になって出たんだと思います。

染谷:一度目に徹が引き下がるリアクションについては、監督とも話していて。徹のあの反応は情けなくて面白くて好きなんです。乗り込もうとしたものの、いざ部屋の前まで来たらどうしていいかわからなくなっちゃって、でも何かが爆発して取りあえずドアを蹴っちゃって、とっさに隠れるっていう……(笑)。

前田:(笑)

染谷:結局、隠れてもどうしようもないなと思って出て行くんですけど、出て行ったときに沙耶と目が合うんですよね。そのときはもはや若干ドヤ顔になっているんですよ! オメー何やってんだよ!? みたいに強気になっちゃって。その「男の子っぽさ」には、自分でもどうしたらいいかわからないで動いているおかしさがあって、笑えましたね。

前田:でも、もしわたしがああいう状況に置かれたら、きっと二人の関係はもう「終わった」と思っちゃいますね。

■前田敦子、監督のむちゃぶりで弾き語りデビュー!

Q:前田さんは本編の中でギターの弾き語りにも挑戦していますが、あのときの沙耶の反応は、脚本通りだったのでしょうか?

前田:脚本にも書いてありました。曲の歌詞の内容が内容なので、わたしとしては歌詞だけでも泣けるっていう感じでした。全部が終わっちゃった直後ですから、絶対にああいうことになるだろう、と。むしろ一人で歌えるなんてすごいな、強いなと思いましたね。

Q:もともとギターは弾けたんですか?

前田:全く、です(笑)。

染谷:全くだったんですか?

前田:まーったく! です。なので撮影の前に1か月間、みっちり練習しました。初めて監督に会ったとき普通に「1曲弾いてね」と言われて、「まるまる1曲ですか!?」と焦ったんですけど、最終的にその1曲全部をすてきに効果的に使っていただけたので、頑張って良かったなと思いました。でもギターは難しかった~。弾き語りは余計に難しい! できそうだよね?

染谷:いやいや、できないです。

前田:弾ける楽器は?

染谷:えーと……ド、ドラムは、ちょっとたたけますけど……。

前田:へえー、すごい!

Q:ギターケースを背負った前田さんを染谷さんが後ろに乗せて走る、自転車のシーンもすてきでしたね。

前田:二人乗りは、わたしより染谷くんが大変だったんじゃない? ギターの重みもあったと思うから。

染谷:あの状態で転んで、前田さんにケガさせたら大変だな……! と思いながら必死にこいでいました(笑)。廣木さんの映画といえば自転車なので、やっぱりいいですよね。

■登場人物の「その後」を見たくなる恋愛映画

Q:今後、徹と沙耶の関係はどうなるんでしょうか?

染谷:それがわからなくていいなと思ったんですよね、自分でも演じていてわからなかったんですけど。この映画って、出てくる人たちがこの先どうなっていくのかを、もうちょっと見せてよというぐらいのところで終わるんです。だからみんなのことが気になるんですよ。気になったまま終わるというのは、観ていて自分が登場人物たちを愛していたんだなと思えて、それは本当にいいことだなあと。

前田:釜山国際映画祭での上映に参加したとき、す~ごい笑いが起きたんですよ。この映画って実は笑いのスパイスも結構いっぱいあるじゃないですか。それをお客さんがちゃんと拾ってくれて、温かかったですね。一番ウケていたのは、妹の正体を、徹が思わず口走りそうになっちゃうところ。大爆笑でしたね。かわいそうだけど滑稽な状況を、ちゃんと笑ってくれていたんです。

染谷:登場人物みんながどこかちょっと欠けていて、でもその欠けているところをもっと観たくなる。自分も見終わって純粋に心が温かくなりました。

前田:人間らしい人たちがたくさん出ている、本当にすてきな恋愛映画だなと思います。

実年齢でもほぼ同世代の二人。前田はもちろん、染谷も廣木隆一監督の現場は初体験だったが、両者とも「監督はコミュニケーション能力が高い!」と口をそろえる。そんな作品への惜しみない愛情は、飾らない、しかし実感のこもった言葉からもうかがえる。社会の裏側に生きる人々のドラマであるだけに、シビアな現実も描かれるが、徹と沙耶が共に暮らす部屋で過ごす、もん絶しそうなほどナチュラルに甘いひとときも見られるので、乞うご期待!

映画『さよなら歌舞伎町』は、1月24日より公開

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