伝説的スパニッシュホラーついに完結！『REC』シリーズ人気の謎に迫る！

■伝説的スパニッシュホラーついに完結！『REC』シリーズ人気の謎に迫る！

　封鎖されたアパートを舞台に展開する感染パニックを手持ちカメラによるPOV（ポイント・オブ・ビュー）方式で映し出し、世界中を震え上がらせたパニックホラー『REC/レック』シリーズがついに完結！　スペイン発の低予算映画がここまで支持を受けてきた理由はどこに？　POV方式をかなぐり捨ててまで進化を求めてきたシリーズ人気の理由と隠された謎を探ります！（編集部・入倉功一）

　警報が響く消防署。出動する消防士たちの後を女性リポーターとカメラクルーが追う。彼らが駆け付けたアパートのロビーには、不安げな表情の住人たち。閉ざされた部屋の前でリポーターが語る。「今、ドアの前にいます。中にいる老女に何かあったようで叫び声がしたそうです……」警官と消防士たちが突入した先には、肌着一枚で立ち尽くす血まみれの老女が。そして次の瞬間、老女が警官の喉を食いちぎった……！

■ゾンビ×POV！二大ジャンルの融合とリアリズムの追求

　世界中のホラー映画ファンを熱狂の渦に巻き込んだ『REC/レック』は、ドキュメンタリー番組「眠らぬ街」の収録風景から幕を開ける。その正体は、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』（1999）以降ブームが再燃したフェイクドキュメンタリー形式のホラーと、現在に至るまで大量の類似作が生み出されているゾンビ映画が融合したパニックホラーだ。凶暴化した住人がアパート内で人々に襲い掛かり、かまれた者もまた謎のウイルスに感染していく……。

　スピーディーな展開と絶望的な物語で観客の度肝を抜いた本作を手掛けたのは、監督デビュー作『ネイムレス　無名恐怖』（1999）で国内外から高い評価を集め、当時、英語圏に活躍の場を広げていたジャウマ・バラゲロ監督と、同じくスペイン国内で活躍していたパコ・プラサ監督。ホラー映画ファンであることを公言してはばからない彼らが本作に懸けた思いは「誰も観たことがない新しいホラー映画を作りたい」という一点だった。

　｢フェイク」ドキュメンタリーである以上、役者には演技をさせなくてはならず、どうしてもリアリティーは失われてしまう。しかし本作では、冒頭、本物の消防署で、本物の消防士たちに対して実際に取材を敢行。このオープニングが作品のトーンを決定し、絶対的なリアリティーをもたらした。

　さらに製作陣は、可能な限り真実味を追求したいという意向から無名の俳優を起用。出演者たちには、詳細なストーリーを教えない体制が取られた。撮影は1日平均12時間。何が起きるかわからない状況の中、役者たちが長時間の撮影に耐えなければならない、「イラついた」状態に置かれたことで、極度の緊張感が生まれた。劇中、主人公たちがアパートから脱出しようとすると、外に待機した大量の警官隊によって建物が封鎖される場面があるが、このシーンも役者たちに一切説明はなく、完全ドッキリ体制によって撮影されている。

■タンクトップがセクシー！主人公アンヘラの魅力！

　無名キャストの起用を希望する一方、監督たちは、「眠らぬ街」のリポーターで、本作のヒロインとなるアンヘラに対してだけは、特別な条件を付けた。それは、実際のリポーターであること。オーディションの結果、実際に人気番組でリポーターを務めていたマヌエラ・ベラスコがアンヘラ役に抜てきされた。

　撮影当時すでに30代だったマヌエラは、ペドロ・アルモドバル監督の『欲望の法則』（1987）で、12歳にして映画デビュー。少女のあどけなさを残した彼女が、白いタンクトップを血まみれにしながら真相に迫っていく姿に多くの観客が共感。スペインのアカデミー賞ともいわれるゴヤ賞の新人女優賞とシッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭の最優秀女優賞を受賞し、シリーズを象徴するヒロインとなった。

　セクシーで力強いタンクトップ姿は最終章でも健在だが、1作目では、撮影を通してずっと同じタンクトップを着ていなければならず、強烈な臭いを消毒剤でごまかしながら撮影に臨んでいたという……。

■悪魔を具現化！謎が謎を呼ぶ設定に興奮！

　製作陣は、本作において悪魔の存在を、ウイルスという形で具現化したかったと語っている。感染者たちは悪魔にとりつかれた状態にあるため、パート2では、聖書の言葉を聞くと極端に活動が鈍くなる描写が登場。過去に起きた事件を絡ませたオカルト要素も、多くのファンの興味を引き付けた。

　ウイルス感染のキーワードとなるのが、悪魔につかれた少女メデイロスの存在だ。パート1では、事件のはるか以前、「悪魔つき」と判断された一人の少女メデイロスが入院先の病院から姿を消し、ローマ教皇庁によってアパートに監禁され、拷問に近い治療を受けていたことが断片的に明かされる。長い年月を経て彼女の姿は怪物そのものとなり、クライマックスでは、暗視映像の中、異様に長い手足に垂れ下がった乳房を揺らしながら、カナヅチで周囲をぶったたきまくるという狂気の演技を披露。ラストでは、必死に身を隠すアンヘラを闇の奥に引きずりこむが……。

■何でカメラを捨てない？の疑問に答えたパート2！

　1作目のヒットの後、2009年にすぐさまパート2が公開。物語は1の数時間後からスタートし、事件の調査と沈静化のため建物に乗り込んだ、一人の医師と警察の特殊部隊が遭遇する恐怖を描き出す。

　パニック状態を映し出す『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド/HAKAISHA』といったフェイクドキュメンタリーで誰もが抱く疑問の一つは「なぜ、どんなピンチであってもカメラを手放さないのか？（しかも対象はバッチリ撮影されている！）」ということだろう。しかし、このパート2では、特殊部隊のヘルメットに装着されたCCDカメラの映像という設定にすることでこの疑問を解消。

　主観的な様相が強まったことで1作目よりも臨場感は増し、警官隊が主人公ということで、よりアクション要素も濃くなり、パート1と同じ舞台で、同じ手法をとりながらも、全く違う驚きを観客に提供してみせた。

■POVはヤメだ！大きくかじを切ったパート3！

　そして2012年にシリーズ第3作『REC/レック3 ジェネシス』が公開。前2作で共同監督を務めたジャウマがクリエイティブプロデューサーに回り、パコが単独で監督に挑戦。パート1と同じ時間帯に、全く違う場所で行われた結婚式を舞台にウイルスパニックが展開する。

　本作では、シリーズの流れを一変させる大進化が起きている。POV方式で物語が進行するのは前半の15分ほどだけ。アンヘラも登場することはなく、純白のウエディングドレスに身を包んだ新ヒロイン、クララ（レティシア・ドレラ）と婚約者のサバイバルが描かれるのだ。

　POV方式を捨てたことで、もはや『REC』というタイトルの意味さえなくなってしまったパート3。このあまりの展開には、当然、ファンが困惑を示した。しかし、ドレスの裾を破ったクララが、生脚もあらわにチェーンソーを携え、感染者を文字通り真っ二つにする、『悪魔のいけにえ』チックなスプラッター描写には、多くのホラー映画ファンが喝采を送りたくなるはず。人でごった返す結婚式場で、次から次へと感染のコンボがつながっていく、思わず笑ってしまうような惨状が展開するさまなど、監督のホラー映画に対する愛情の深さが伝わってくる快作となっている。

■全ての謎が明かされる！アンヘラ大活躍のパート4！

　そして、ついに日本公開を迎える最終章では、ヒロインのアンヘラが復活。パート1、2では、悪魔にとりつかれたかのような描写もあった彼女が、真っ白なタンクトップもそのままに、オノを片手にウイルスとの最終決戦に挑む。

　ジャウマ・バラゲロ監督が単独でメガホンを取り、のっけからPOV方式を放棄。劇映画形式で、海上に隔離された巨大貨物船で起きるウイルスパニックが描かれる。これまでの前シリーズのキャラクターが登場し、ウイルス発生の原因やアンヘラの運命など、これまで示されていた全ての謎に決着がつく、まさに大団円を迎える本作。ジャンル映画ファン以外にとって食傷気味でもある二つのジャンルを組み合わせることでホラー映画界に新風を吹き込み、世界中で大ヒットを記録した伝説の最後にふさわしい一本になったといえるだろう。

映画『REC／レック4 ワールドエンド』は1月31日全国公開
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