シネマトゥデイ

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伊勢谷友介
『ジョーカー・ゲーム』
社会全体をケアする志を持って生きたい
『ジョーカー・ゲーム』伊勢谷友介 単独インタビュー

取材・文:森田真帆、山本優実 写真:高野広美

第2次世界大戦前夜を舞台に、ある機密文書をめぐって各国諜報(ちょうほう)員を相手にし烈な争奪戦に挑む日本人スパイの活躍を描いた『ジョーカー・ゲーム』。映画『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督が手掛けた本作で、スパイ組織「D機関」の司令塔・結城を演じた伊勢谷友介が、役へのアツい思いや役者としての今後を語った。

■シーンによってリズムを変える徹底した画作り

Q:『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督にとって初のメジャー大作で、かなり重責があったと思うのですが、一緒に仕事をされていかがでしたか。

その重責を感じさせないくらいのドライさでやっていらっしゃったと思います。監督が思う「エンターテインメントとしてどうあるべきか」というのが、しっかりと形になっていたと思いますね。観客を飽きさせないという、映画ではクリアにしなければならないところが達成されていたと思います。

Q:伊勢谷さん演じる結城は、映画の中でとても存在感がありました。

監督が、結城が登場するシーンのリズムを変えていたからだと思います。アクションシーンのときは細かくとか。そういった差を出されていたからだと。テクニカルな話ですけど。

Q:確かにアクションシーンと結城が登場するシーンは、ガラッとテンポが変わっていましたね。

あと嶋田(久作)さんと共演したシーンとかね。

Q:その嶋田さんが演じる軍人は、『帝都大戦』を思い出すくらい、めちゃくちゃ怖かったです。

嶋田さん自身は映画の役とは正反対で、周りにとても気を使ってくださる方なんですよ。『帝都大戦』の頃と比べると、「細かいおばさん」みたいな。いや、心配性というわけではなくて、丁寧に役と向き合う方という意味で、役に関しても自分の中でデザインされてから現場に入っていらっしゃる方なんですよ。

Q:小澤征悦さんや山本浩司さんや渋川清彦さんという、同世代の共演者も多かったですね。

この映画には「海外編」と「日本編」の撮影があったのですが、僕は今回、「日本編」のみの撮影と聞いて、僕らの世代ってそうなってきたんだなと思いました。『るろうに剣心』が終わって、もう動かなくていいのかなと(笑)。なんせ結城はつえついていますから……そうもいかないですね(笑)。

■キャラクターを演じる意義、そして思い

Q:結城は「昔の軍人」という役柄でしたが、どのように準備をされましたか?

結城は軍人ですが、D機関の人間なので軍人らしくしてはいけない立場ですよね。ただ、足が悪いということは常に意識しなければならないので、撮影前はつえを預からせてもらって、普段から使うようにしていました。つえが変わった形なので、持ち方も限定されているんですよ。それに普段からつえに慣れていないと、足を引きずるのが逆になってしまう場合がある。それだけは避けないといけないので。

Q:『ザ・テノール 真実の物語』などもそうですが、伊勢谷さんが演じられる役には、伊勢谷さんの思いが詰まっているように感じられます。今回は結城という役に対してどんな思いで演じられたのでしょうか。

結城は、軍が解決できていないところを掃除する役割ですよね。そういう大きい組織ができないことを小さい組織が対処するというのは、社会でもあることだと思うんですよ。政府がやっていることに対して、わたしたち一人一人がどうアクションしていくか。例えば『ザ・テノール~』では俳優として一個人として感情を育んで、愛情を持って撮影をするということに意義がありました。結城に関しては、ある意味、その捉えづらいところに意義がある。彼自身、恵まれた仕事をしているわけではないんですよね。でも軍に対して「バカだな」と思いながらも捨てるワケではなく、暗躍的に対処していく。自分の損得だけを考えている人ではできない仕事だと思うんです。社会全体のために、責任を持ってケアをしていく。そこが結城のかっこいいところでもあるし、僕もそういう志を持って生きているところがあるので、実はそこが共感するところでもあるんです。

■今の世代は「慎重」ではなく「進化」している

Q:主人公・嘉藤を演じた亀梨和也さんとの共演はいかがでしたか?

亀梨くんのこの映画に懸けるアツい思いや気合が、行動に出ていたと思います。素直に役と向き合っていて、好印象でしたね。

Q:『あしたのジョー』の山下智久さんなど、ジャニーズの方と共演されていますが、若い世代の方と共演してご自身の若い頃と重ねることはありますか?

ジャニーズの方々は育ち方が全然違うので、僕自身と重ねてしまっては申し訳ないと思います。僕らはいわゆる「ロック世代」なんですよね。「やっちゃえばいいじゃん! 楽しいんだし」みたいな、どこか「抜き気味」で生きているところがある。でもジャニーズの方々は差したり抜いたりできるから、そういう意味では本当に大人だなと。今の世代の子は、僕が持っていないところがあるので、すごいなと思います。

Q:その若い世代は、今「慎重だ」といわれていますが?

逆に、進化だと思います。「慎重」って消極的に見えることもあると思うんですが、現状を客観的に捉えた反応だと思うんですよね。実際、僕が活動しているリバースプロジェクトにもいろいろな思いや志を持っている若者はたくさんいる。だから今の世代をどうこう言うのは、大人の浅はかさだなと思うんです。そうした社会は僕ら大人が作り上げてきたものだし、まずは自責に戻さないといけないと思います。

■高倉健さんから学んだ、役者としての今後

Q:ラストシーンを観て、続編がありそうな印象を受けたのですが?

そうですよね。ただ、撮影中は2作目を意識して撮ったわけではないので。もしシリーズ化するなら『チャーリーズ・エンジェル』シリーズのチャーリーのようになりたいですね。外から指令を出すだけで、「あとは頑張って」って言って(笑)。アクションは体力が持っていかれるし、準備が大変なので極力避けたいかな(笑)。

Q:「体力が持っていかれる」とおっしゃいましたが、これから40代、50代を迎える上で、どのように体をキープすることが必要と思いますか?

僕自身は今、体を鍛えているのですが、体を鍛えるのかそうでないのかは、役者の方向性によって変わってくると思うんですよね。若い頃はいろいろなことに挑戦できますが、年を取るとそうはいかない。代謝も変わってくるし、体重を減らしたり増やしたりすることが難しくなってきます。だからこそ若いときより努力が必要だと思っています。ただ加齢と共に「覚悟」というものができてくると思うんですよね。

Q:昨年末に高倉健さんが亡くなられましたが、たくさんの方に影響を与えたと思います。今後どんな役者になりたいか、改めて思うことはありますか。

高倉健さんの芝居にはウソがなかったと思うんです。「不器用ですから」と表現されていて、高倉健さん自身が作られた。そうやって愚直なまでにキャラクターに真摯(しんし)に向き合われていたと思うんです。「あざとさ」というものが見えないのが高倉さんの演技。それって芝居ではなかなかできないことだと思うんです。役をこなしていくのではなく、一本一本と向き合っていく。僕の未来を見たときに「そうあれたらいいな」というのを体現し続けてくださいましたね。僕自身「不器用ですから」とは言えませんし、時代性もあっていろいろとやってきているので、不器用ではないと思っているんですが、役者として大切なことはスキルより、高倉健さんが最後まで抱えていらっしゃった役に対しての向き合い方、そしてその結果だと。本当に大事なものを見させていただいたなと思っています。

ドラマ撮影の合間を縫っての今回の取材。ハードスケジュールにもかかわらず、疲れた表情も見せず、結城というキャラクターに懸けた思い、そして今後の役者人生について真摯(しんし)に語った伊勢谷。アクションシーンと結城が登場するシーンのトーンの違いは、入江監督の手腕でもあるが、その存在感を示せるのは伊勢谷だからこそ。2015年、ますます脂が乗った役者・伊勢谷友介の活躍に期待したい。

(C) 2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

映画『ジョーカー・ゲーム』は全国公開中

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