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藤野涼子&佐々木蔵之介
『ソロモンの偽証 前篇・事件』
ずっとお父さんと娘だった
『ソロモンの偽証 前篇・事件』藤野涼子&佐々木蔵之介 単独インタビュー

取材・文:早川あゆみ 写真:高野広美

ベストセラー作家・宮部みゆきの最高傑作ともいわれるミステリー巨編を、『八日目の蝉』の成島出監督とそのチームが2部作として映画化した『ソロモンの偽証』。1万人の中からオーディションで選ばれた期待の新鋭であり、劇中の人物名でデビューする主演の藤野涼子とその父親を演じた佐々木蔵之介が、撮影の様子を語った。1990年代を舞台に、同級生の死の真相を探る中学生の学校内裁判を描く異色作は、どんな現場から生まれたのか。

■リアルな父娘のような関係

Q:お二人が最初にお会いになったのは?

佐々木蔵之介(以下、佐々木):撮影開始の1か月くらい前に、母親役の夏川(結衣)さんと涼子を含めた子供たちと家族5人で、藤野家のロケをする家でお弁当を食べました。そこからリハーサルが始まって。普通、そういうことは映画ではなかなかないので、ありがたかったです。

藤野涼子(以下、藤野):わたしは最初、こんなカッコいいお父さんだと緊張して演技に身が入らないんじゃないかと思いましたが、蔵之介さんがリードしてくださって、まるで本当のお父さんのように感じられました。何というか……面と向かって話すのが恥ずかしいなって(笑)。

Q:まさにリアルな思春期の娘とその父親のようですね。佐々木さんの作品はご覧になっていましたか?

藤野:『超高速!参勤交代』を拝見しました。

佐々木:お父さんチョンマゲしてるもんなあ(笑)。

藤野:びっくりしました(笑)。

Q:お父さんらしさを出すために、佐々木さんのほうで工夫したことはありますか?

佐々木:娘役ではありますが、一人の女優さんとして一緒に仕事をするという感覚はいつもと変わりませんでした。ただ、今回は成島組が、その役を「演じる」のではなく、その役を「生きる」ということに重点を置いていた。彼女たちは、クランクインの前からワークショップで監督にそういうふうに鍛えられていましたね。芝居の技術よりも「そこで生きる」ことが大事で、だから僕らも演じるのではなく、「そこに存在する」ことが必要だった。こちらが何かを意識するというより、そういう場にいさせてくれる現場でした。とてもぜいたくな現場だったと思います。

■ハイレベルな芝居

Q:藤野さんは、俳優の先輩として佐々木さんからアドバイスを受けたことはありましたか?

藤野:そういう話はあんまりしませんでした。カットがかかってもずっとお父さんと娘だったので、普通にそんな会話をしていました。「さっきの演技はよかったよ」みたいなことも、なかったと思います。

佐々木:スタートとカットの間だけ芝居をすればいいわけじゃなくて、余白の部分をエチュードで求められるわけですよ。監督は「涼子や子供たちのためにお願いします」って言うんですけど、僕らにしてもそれはちょっと難しい。「夏川さん、これ大変だよなあ」って話していました(笑)。コヒさん(校長先生役の小日向文世)とかも「ちょっと困ったなあ」って。すごくハイレベルなものを求められていると思いました。監督は「高みを求めて、それに近づけた」とおっしゃっていましたね。僕は成島組が初めてで、参加してみたくてこの作品の出演を決めた面もあるんですが、すごくいい経験になりました。

藤野:一度、監督が仕方なくオッケーしてくれたように見えてわたしが落ち込んでいたとき、夏川さんが「監督がオッケーならオッケーなんだよ」と言ってくださったことがありました。それには救われましたし、うれしかったです。蔵之介さんは、目線とかで問い掛けてくれたので、言葉にしなくても大丈夫でした。

佐々木:やっぱり見ていると「こうやったらいいのに」ってところはたくさんあるんです。でも、そんな技術的な表現はこの現場では必要ない。だから、外から何かを言うことはないし、見守るのが正解だったと思います。ただ、僕は『前篇・事件』を観て「お父さん何もしてへんやんけ」とは思いましたが(笑)。娘がどんなふうに思っているか、どんな目に遭ったかを父親が知らないというのは、そこもまたリアルなんだと思います。『後篇・裁判』では、ちゃんとわかっていきますよ(笑)。

■感動的なミステリー

Q:撮影現場で印象深かったシーンはどこでしたか?

藤野:『後篇』の、お父さんに追い掛けられてトラックにひかれそうになるシーンです。トラックに向かっていかなきゃいけないのは怖いですし、その状態で演じなければいけなくて、パニックになりました。苦しかったです。

佐々木:そりゃあ怖かったと思いますよ。監督はこの子たちにその世界で生きることを求めていますから、こう来たらこう避けるとかではなく、本気でぶつかりにいくわけです。涼子にしてみれば本当に事故に遭うようなものですよ。そのときだけはさすがに見かねて「こう倒れたらいいんじゃないか」ってアドバイスしましたね。ひかれそうになって倒れて震えて、言葉が出てこない。彼女がそこまで自分を持っていけたのは、成島組とこの作品の力だと思いました。

藤野:そのシーンの最後のところは、自分が何をやっているのかわからなくて、ただ前に進むだけでした。

Q:では最後に、この映画の見どころを教えてください。

藤野:今はITの時代で、SNSとかでしかつながらなくて友人関係が深くない。でも、この映画の舞台になっている1990年代は携帯電話もないので、面と向かって目を見て人と話さないといけない時代でした。わたしは自分が中学生なので中学生に向けて言いたいんですが、浅く広くではなく、深い友達をちゃんと作ってほしい。物語の最後、尾野真千子さん演じる23年後の涼子の一言がそれを象徴するような言葉で、とてもステキなんです。注目してもらいたいポイントですね。

佐々木:ものすごく深いミステリーです。そして、誰がいいとか悪いとかではなく、何があったのか、真実だけが明かされていく。そのことで、それぞれの人物の心の奥に閉じ込めていた気持ちも解きほぐされていって、そこのドラマに感動します。僕たちが14歳の多感な頃に何を考えていたか思い出させてくれるし、深く突き刺さってくると思います。子供に戻っていろいろなことを感じられて、だったら僕ら大人がどんなふうに大人としてあったらいいのか。そういったことを、優しく考えさせてくれる映画だと思いました。

撮影からわずか半年弱なのに、さらに大人びた表情を見せるようになっていた藤野。そのしっかりした発言からは芯の強さが感じられ、将来大輪の華を咲かせるだろうという予感を抱かせる。だが、やはりまだまだ取材には緊張する様子で、カメラの前では笑顔もぎこちない。佐々木は、それをさりげなくフォローして大人の余裕を見せつつも、彼女ら若手俳優たちから得た刺激を熱く語っており、きっと撮影現場でもこんな関係だったのだろうと感じさせた。彼らの熱意と魂が込められた今作。一刻も早く『後篇』が観たくなることは間違いない。

『ソロモンの偽証 前篇・事件』は3月7日より公開/『ソロモンの偽証 後篇・裁判』は4月11日より公開

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