シネマトゥデイ

大沢たかお&石原さとみ
『風に立つライオン』
自分がむき出しになったアフリカロケ
『風に立つライオン』大沢たかお&石原さとみ 単独インタビュー

取材・文:高山亜紀 写真:高野広美

さだまさしが1987年に発表した楽曲「風に立つライオン」は、ケニアで医療活動に従事した実在の日本人医師を歌った曲。大沢たかおは、かねてよりこの曲の映画化を熱望し、何年もかけてさだを口説き落とした。さだは主人公の航一郎に大沢をイメージして原作小説を執筆。ついに念願の企画を実現させた大沢が、航一郎の右腕となる看護師・和歌子を好演した石原さとみと共に、映画『風に立つライオン』の濃密なケニアロケを振り返った。

■エネルギーがむき出しのケニア

Q:まずはケニアロケについて教えてください。

大沢たかお(以下、大沢):大地、風、現地の子供たちもそうですが、本当にエネルギーがむき出しなんです。だから、頭で理解して芝居しようとすると、うまくいかなくなる。そういう意味では、自分のさまざまな殻みたいなものが取れた中で、仕事ができている感覚がありましたね。

石原さとみ(以下、石原):ぜいたくですよね。日本映画なのに、アフリカのケニアに行って、現地の人たちと現地の物を食べながら、時にはスワヒリ語で現地の話をしたりして……。夢みたいな撮影でした。「こういう現場を経験したかったんだ!」ってすごく思いました。撮影中はあまり客観視できなかったんですけど、取材を受けるたびにいい経験をさせてもらえたんだなぁとかみしめています。

■悩む石原に監督がひと言「大沢に会えばわかる!」

Q:航一郎と和歌子の関係をどのように意識して演じましたか。

大沢:僕は現地で、石原さんと言葉を交わしたり、一緒に作業をしたり、子供たちと接すれば、程良い距離感になるなと何となく感じていたので、特に「こうしなきゃ、こうしよう」とは意識していませんでした。本当に自然の流れに任せていました。

石原:アフリカに行く前に大沢さんにお会いしたこともなかったので、どんな方なのかも全然わからなかったんです。なのに監督は「大沢さんに会えば、航一郎との関係性はできるから。大丈夫!」としか言ってくださらない(笑)。でも、その通りでした。二人でベンチでお茶を飲みながら話すシーンも、台本を読んだときはいろいろ頭の中で引っ掛かることがあったんですけど、現地に着いたら悩んでいたことすら忘れるぐらい、すんなり演じられました。監督が「大沢さんに会えばわかる」っておっしゃっていたことが、理屈ではなく感覚としてしっくりきたんですよね。

大沢:僕は先に撮影を始めていたからいいけど、石原さんは大変だったろうなと思いますよ。突然、アフリカに連れてこられて、いきなり(役柄で)手術させられて。でも、本当にりんとしていた。現場に入ってきたときから、もうそこに和歌子がいるような感じでした。一緒にいても、すごく楽しかった。「いつ本番でもいい」という状態でやらせてもらえて、彼女に感謝しています。

石原:たぶん、監督はわたしが頭で考え過ぎているのがわかったんでしょうね。わたしは舞台とかでも、稽古がすごく好きな人間なんです。なのに、今回はテストも全然ないですし、台本で説明を受けて、その後すぐ本番。次第に変な緊張が解けて、むしろ集中しやすくなった気がします。

■大沢の「救い」になった石原の言葉

Q:この映画は楽曲から生まれたものですが、大沢さんは最初から映像が頭に浮かんでいたのでしょうか。

大沢:全く浮かんでいないです。ただ、映像で観たい。映画で観たい。いい席で観たい。それだけです。それをずっと8年間、思い続けていただけなんです。

Q:石原さんはこの曲をご存じでしたか。

石原:何年か前に偶然、テレビで知って、すごくいい歌詞だなと感動したのを覚えていますね。テーマは壮大なのに、歌っているのはただ一人の人間に対しての思い。人の心の中ってどこに行っても変わらないんだなって。

Q:大沢さんは今回、クレジットで「企画」の文字を見たときはどんな気持ちでしたか。

大沢:俳優でいるときは、演じることしか考えていないんですよね。1ミリもほかのことは考えなかった。でも、エンドロールを見て、現実に戻ったときに、恐怖に襲われました。「さださんは小説を書いて良かったと思っているかな」「出演者、監督は嫌な思いをしていないだろうか」と、心中は穏やかではありませんでした。あまりに心配で石原さんにも確認しました。「大丈夫だった?」って。そしたら、すごくいい言葉を掛けてくれて、ちょっとホッとしました。

石原:「心から参加できて良かった」ってお伝えしたかったんです。だって、観た後、ちゃんと涙が出て、心が動いたんですから。女優としてだけでなく、一人の人間として、影響を受けるような時間を過ごせた気がします。それって本当に幸せなことですよね。

■大沢が語る、演じることの苦しさとやりがい

Q:石原さんから見た大沢さんの印象は?

石原:素晴らしい方です。コミュニケーション能力が高くて、人を楽しませるのが大好きで、いつも明るくユーモアにあふれていて、頼りがいがある。お芝居にしても、現場での居方にしても、尊敬できます。「こういう方が本物の俳優なんだ」って、間近で接して実感しました。

Q:航一郎が「頑張れ」と自分自身を鼓舞する場面が印象的ですが、今回、そういう気持ちになったことはありましたか。

大沢:僕はないかな。ベストを尽くしているつもりですから。ただ、航一郎とは逆になっちゃうけど、周りの人には思いましたよね。スタッフは誰も弱音を吐かずに、やけど状態になりながら使命感を持って、それぞれの仕事をこなしている。監督は100%集中し切っている。そんな現場ってめったにないですよ。石原さんだってそう。とにかく暑いし、砂埃は舞うし、本番中に砂嵐が通過していく。そんな状況下で、嫌な顔一つしない。ギラギラしている男たちの中に放り込まれて、それでも臆することなくしっかり立っている。そんな彼女の姿を見て、心の中で何度も「頑張れ!」って思いました。もちろん、言わないですよ。実際に頑張っていますから。

石原:わたしは帰った後がつらかったです。帰る機内とか、グッとくるものがあって……。帰国した翌日にはもう別の現場、全く違う環境にいたんですけど、アフリカで得たものがすごく自分の中で大きくて、「強く生きよう」と思いました。

大沢:そのギャップには僕も毎回、苦しみます。自分をむき出しにしてみんなと仕事していた後、いきなりコンクリートの世界のルールに舞い戻ると、どうしたって苦しい。でも苦しんだぶん、その思いが作品に反映される。それが、この仕事のいいところなんでしょうね。

役柄では絶妙な距離感を保っていた航一郎と和歌子だが、スチール撮影中に「石原さんはかわいいけど、俺は“オッサンが何やってんだよ”って感じにならない?」と大沢が冗談を言えば、石原が「何言っているんですか、大丈夫ですよ!」とフォロー。初共演とは思えないほど息の合った二人。アフリカロケを一緒に乗り切った仲でしか紡げない信頼関係がそこにあった。

映画『風に立つライオン』は3月14日より全国東宝系にて公開

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