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多くの人々に衝撃を与えたリドリー・スコット監督の名作『エイリアン』(1979)のクリーチャーをデザインし、第52回アカデミー賞では視覚効果賞を受賞したことでも知られる画家・デザイナーのH・R・ギーガーさん。階段から転落し、昨年5月12日に74歳で急逝してからもう1年がたつ。そんな折にアメリカでプレミア上映されたドキュメンタリー映画『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)/ Dark Star: H. R. Giger's World』のベリンダ・サリン監督を直撃し、ギーガーさんの功績と人柄をひもといてみた。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

親切で友好的、チャーミングな人柄

H・R・ギーガー
H・R・ギーガーさんと猫 - 映画『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)』より

 1940年、スイスのクールで生まれたギーガーさん。チューリヒで建築とインダストリアルデザインを学んだ後、レコードなどのカバーアート制作に携わり、アルバム自体が成功を収めたエマーソン、レイク&パーマーの「恐怖の頭脳改革」のジャケット原画を担当したことでその名を知られることになった。『エイリアン』のほか、『スピーシーズ/種の起源』『キラーコンドーム』でモンスターデザインを担当。陰影の強いモノクロで描かれるギーガーさんのエアブラシ作品は、下地なしに直接描かれたものだ。日本でも人気があり、1980年代後半には東京・白金にギーガーさんがデザインした飲食店ギーガーバーが存在したこともあった。

 『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)』のサリン監督は、H・R・ギーガー美術館のディレクターでギーガーさんの妻であるカルメンさんの紹介でギーガーさんと知り合いになり、彼が亡くなる2年半前から撮影を行った。ギーガーさんは人と距離を置くダークな人物かと思いきや、実際はその正反対で、親切で友好的、さらにチャーミングだったそう。ただ若い頃も晩年も、シャイでスポットライトを浴びたがらない人物だったという。

「エイリアン」誕生に恋人の死

H・R・ギーガー
H・R・ギーガーさんとガイコツ - 映画『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)』より

 ギーガーさんは、どんな作品から影響を受けたかという質問に、「人生そのもの。全てのものに僕は影響を受けている」と語ったという。モデルで女優だったリ・トブラーとの恋愛関係もギーガーさんの創作活動に大きな影響を与えたが、『エイリアン』でオスカーを獲得したことが活動の妨げになることはなかった。

サリン監督:「リ・トブラーの自殺後、ギーガーの作品はよりダークになったと思う。彼女の死後、彼の書籍『ネクロノミコン』が発表されたの。映画『エイリアン』の脚本家ダン・オバノンリドリー・スコット監督にその本を見せると、スコット監督は『おお、これこそが(僕の作品の)モンスターだ!』と語ったそうよ」

サリン監督:「ギーガーは、自分が制作しなければいけないと思ったものを制作してきた。もちろんオスカー自体はそれなりに彼に衝撃を与えただろうけれど、でもアーティストとしては違った。彼は他の誰かがどう自身の作品を解釈しようと、あくまで自分の夢と道を突き進んでいったわ。それがわたしの彼の好きな点で、彼のアート作品は挑発的なの」

たくさんの悪夢に悩まされていた

H・R・ギーガー
悪夢もイマジネーションに…… - 映画『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)』より

 彼の作品には人間と機械を融合した描写、性器をモチーフにしたダークなものが多い。実際、たくさんの悪夢に悩まされていたという。

サリン監督:「でも、人生が彼に与えた影響と同様に、彼の悪夢も彼に影響を与えていたの。映画『H.R.ギーガーのパッサーゲン』(日本未公開)のモノクロームの絵は、彼が悪夢を見た影響から描かれたものなのよ」

H・R・ギーガー
映画『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)』ポスタービジュアルとベリンダ・サリン監督

 『ダーク・スター:H・R・ギーガーズ・ワールド(原題)』のオープニングでは、彫刻などさまざまなアート作品が置かれた庭、そして自身の作品を含めた多くの作品が羅列されたギーガーさんの自宅が映し出され、ギーガーさんがそれらに囲まれながら作業していたことがうかがえる。

サリン監督:「彼はとても知的でユングやフロイトの書物も読んでいた。今作で映し出される数多くの書物も全て読んでいるの。でも彼は、影響を受けたことに関してはいろいろ話してくれたけれど、自分の作品に関して説明することは嫌っていた」

頓挫したホドロフスキー監督の『DUNE』

H・R・ギーガー
作品に囲まれ食事するH・R・ギーガーさん

 ちなみにギーガーさんは、プリプロダクションから参加していたアレハンドロ・ホドロフスキー監督によるフランク・ハーバートの小説「デューン」の映画化企画が頓挫したことをとても残念に思っていたそう。

サリン監督:「そのことについてギーガーはとても失望していた。彼は多くのデザインをあの映画のために手掛けていたし、彼がデザインしたハルコンネン男爵の椅子を見たことがある。(数年後同作の監督をすることになった)デヴィッド・リンチがなぜギーガーと仕事をしなかったのか、その理由はわからないけれど、彼が失望していたことは間違いないわ」

 先日には『第9地区』などのニール・ブロムカンプ監督が『エイリアン』シリーズ最新作を手掛けることが発表されたが、人の心に宿る闇を美しく描くギーガーさんの世界観は唯一無二だった。鋼鉄のような長い頭部、鋭い歯を持った巨大なエイリアンが、われわれの脳裏を離れることはないだろう。

【今月のHOTライター】

細木信宏/Nobuhiro Hosoki 海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして活動中。

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