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トム・ハーディ&シャーリーズ・セロン
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
伝説の男をオファーされた時、吐きそうになった
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』トム・ハーディ&シャーリーズ・セロン 単独インタビュー

取材・文:細谷佳史 写真: (C) Armando Gallo / Corbis / amanaimages

1980年代に一世を風靡(ふうび)した『マッドマックス』シリーズが30年ぶりに復活。シリーズの生みの親であるジョージ・ミラー監督が再びメガホンを取った新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、CG満載のハリウッド映画の主流に逆らい、過激なアクションをそのままカメラで捉えた、圧倒的なスリルとテンションに満ちた衝撃のアクション映画だ。アフリカ・ナミビアのナミブ砂漠における半年もの過酷な撮影に耐えた二人の主演俳優、トム・ハーディとシャーリーズ・セロンが、役柄への思いや撮影の裏話を語った。

■伝説の男マックス役のプレッシャー

Q:メル・ギブソンがつくり上げた伝説的な役をオファーされた時のお気持ちはいかがでしたか。

トム・ハーディ(以下、トム):その瞬間、吐き気がした。いや、実際には吐かなかったけど、「ガーン!」といった感じだった。妻は実際に吐きそうになっていたけどね。なぜなら、この映画をやるということは、僕が1年くらい家から離れることを意味していたからさ。

Q:俳優人生にとっても大きな出来事ですよね。

トム:この役をやることが僕の人生に大きな変化をもたらすことはわかっていた。マックスを演じるのは、普通のキャラクターをやるのとは違う。有名な役だし、やりたいと切望していた役者は他にもたくさんいたはずさ。そのため、マックス役を狙っていた役者たちや、『マッドマックス』のファンに一挙手一投足を観察され、批判されることになる。「自分ならこうやった」とか「もっと違う方法で表現した」とかね。それだけでも、とんでもない責任を感じずにはいられないよね? だからオファーが来た時の、最初の反応は吐き気だったんだ。ただやりたい役が自分に来て、「やったぜ!」と喜ぶだけでは済まないものだったよ。

Q:そのプレッシャーをどう乗り越えたのですか?

トム:最初の反応の後は、「こんなに素晴らしいチャンスを与えられたんだから それに応えるにはどうしたらいいのか、何から始めるべきか?」といったことで、頭がいっぱいになったんだ。すると、メルが演じたマックスのことを考えて、「あんなに素晴らしいマックスの後で、自分に何ができるっていうんだ?」と心配と不安が渦巻いた。でも、(シェイクスピア劇の)「ハムレット」だって、いろんな人がさまざまな解釈で面白いハムレット像をつくり上げているじゃないかと納得したんだ。ただ、どうしてもメルと話をしたくて、人を通して「あなたと話したい」と伝えてもらった。そして、「よかったじゃないか。頑張れよ」と言ってもらえたよ。

■マックスと並ぶ女戦士に惹かれた!

Q:『マッドマックス』 に関心を持たれた経緯を教えてください。

シャーリーズ・セロン(以下、シャーリーズ):これまでのキャリアで出会ってきた監督たちとジョージ(・ミラー)の話をして、彼らがいかにジョージに敬意を抱いているかを聞いてきたの。だから彼がこの作品をやろうとしているのを聞いて、とても興奮したわ。そして、マックスの横に立つ素晴らしい女性のキャラクターが登場すると聞いて、女優としてとても惹(ひ)かれたのよ。

Q:あなたの演じた女戦士フュリオサは、女性の強さを伝えていますね。彼女のような女性についてどう感じましたか?

シャーリーズ:多くの人は、女性は自分たちが強いと認めてもらいたがっていると誤解している。男性より強いってことをね。確かにそういった面はあるけれど、それ以外にも実に多くの面を持っている。男性と同じようにダークで、葛藤していて、興味深い存在なのよ。フュリオサが強いのは環境のせい。彼女は強くて、傷つきやすくて、痛みを抱えていて、意志が強くて、怒りに燃えていて、その全てが彼女を形づくっている。なぜなら彼女はそういった世界で生きているから。マックスと同じように、人間が持つ野蛮な面に頼っているの。生きるか死ぬかといった状況でね。だから、映画の中で彼女の唯一の目的は死なないということなのよ。感情的にも肉体的にもね。

Q:役名のフュリオサは、furious(激怒)から来ているのだと思いますが、あなた自身はどんなことに怒りを覚えますか?

シャーリーズ:旅行をするのが大好きで、その先で、世界で何が起きているかを知り、人間同士がお互いにどんなことをしているか、それがどれだけの苦しみを生んでいるかを知ると、怒りを覚えることはあるわね。でもわたし自身はとてもハッピーな人間で、できるだけそうはならないように心掛けている。そういえば、誰かに言われたことがあるわ。「(本作が撮影された)ナミビアは神がとても怒った時に作った場所だ」って。それはナミビアの神話なの。そこでわたしたちがこの映画を撮ったというのも、面白いわね。

■ヒーローではないマックスの魅力

Q:アクション映画の面白さを再認識させてくれる見事な出来栄えでしたが、この作品のポイントはどこにあると考えていますか?

シャーリーズ:わたしは(この映画に登場する)女性たちが、ものすごく正直な点が大好き。この映画では誰もヒーローになろうとしていないし、地球を救おうともしていない。彼らを動かしているのはとても個人的な理由なの。でも、一番心に響くものが、必ずしも人間の最もヒーロー的な面じゃないというのは、よくあることよ。単に自分を正しい方向に向かわせたいというフュリオサやマックスの思いには、とても共感できるところがある。そういったことを映画で観るのは大好きよ。「わたしだけじゃない」って感じられるものをね。

Q:ミラー監督からアドバイスなどはありましたか?

シャーリーズ:この作品でわたしに最も響いてくる部分は、ジョージがわたしたち俳優の一人一人に教えてくれた、それぞれのキャラクターのバックストーリーなの。それは必ずしも映画の中で説明されてはいないけれど、感情面でこのストーリーを動かしているわ。役者たちはそれによって自分たちの役を深く理解しているから、映画を観たら、それぞれのキャラが抱えている痛みが(演技から)伝わってくるの。何も言わなくてもね。彼らの目を見たらわかるのよ。

Q:一方のマックスは、セリフが非常に少ないヒーローですよね。どんなことに気を配ったのでしょう?

トム:マックスは、生きることに痛みが伴う荒廃した世界における、スーパーヒーロー的な存在、アイコニックなキャラクターなんだ。観客も、彼にスーパーヒーロー的な行動を期待している。でも実際に鳥のように飛ぶことはできないし、何マイルも先の物音を聞き取れる聴力を持っているわけでもない。でも、彼がこの世界で前に進んで行くためには、恐ろしい量の殺りくを乗り越えていかなければならないんだ。ただただ家に帰りたいと願い、目の前の出来事に向き合っているだけなのにね。だから僕は、「人生の不幸をイヤというほど経験しながら、何が何でも家に帰り、安息を得たいと思っている男」というイメージを思い浮かべながらマックスを演じた。家に帰ってセーターを羽織って、犬をはべらせて、古ぼけたテレビの前に座ってゆっくりすることを切望しながら生き抜いている男といったね。しかし実際、マックスには帰る家も、犬も、テレビもない。彼は全てを失っているんだ。

寡黙なヒーロー・マックスと、彼の片腕の女戦士フュリオサを、これ以上は望めないであろうというほど完璧に演じたトムとシャーリーズ。『怒りのデス・ロード』を、単なるアクション映画以上のものにしているのは、セリフに頼らずとも巧みな感情表現ができる二人の卓越した演技力にあるのは言うまでもない。この夏一番のアクション映画というだけでなく、今後のアクション映画の流れを変える傑作が誕生した。

(C) 2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は6月20日より全国公開

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