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斎藤工
『虎影』
色気より、かぶり物の方が自分らしい
『虎影』斎藤工 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

斎藤工が本格ソードアクションに挑戦した『虎影』。かつて忍びの世界で最強といわれた男が、愛する家族を守るため、再び刀を抜き悪に立ち向かう姿を描く痛快エンターテインメントだ。メガホンを取るのは、独自のカラーで国内外の映画ファンから注目され、実写版『進撃の巨人』の特殊造型プロデューサーも務める西村喜廣監督。本作でまた新たな一面を披露した斎藤が、作品に対する思いや、自身の俳優としてのスタンスについて熱く語った。

■いい意味でヤバイにおいがする忍者アクション

Q:往年の忍者ドラマへのリスペクトを感じる作品ですね。

「仮面の忍者 赤影」をご存じの方には、パクリじゃないか! って言われそうですけど、今は「オマージュ」という便利な言葉がありまして(笑)。西村監督が白土三平(「カムイ伝」などで知られる漫画家)さんだったり、世界的に有名な忍者作品の影響を受けていらっしゃる方なので、思いは強かったような気がします。

Q:竹製のパワードスーツ、人間手裏剣、イノシシのかぶり物など、特殊造型のアイデアが秀逸でした。斎藤さんにとっても、チャレンジだった部分があったのでは?

そうですね。西村監督の作品って、企画段階では漠然としているんですけど、いい意味でヤバイにおいがするんです。確かに、細かいところではいろいろなトライをしています。でも、監督は観客の皆さんのことを誰よりも考えている方なので、大変ではありましたが、西村喜廣というクリエイターの世界に誘う役割を果たせたらいいなと思いました。

Q:殺陣などのアクションも見どころですが、相当な準備をされたのではないですか?

忍者アクションと聞いたときに、唯一懸念していたのがそれでした(笑)。アクションは世界共通で、字幕が要らない部分なんです。海外上映に向けての強みでもある。この作品も外国の映画祭に出品されますし、忍者アクションとうたっている以上は避けて通れないなと覚悟しました。アクションの訓練所に通って、監督が思い描くアクションを作り上げていきました。

Q:かなり白熱した現場だったのでしょうね。

僕以上に、僕のアクションを受ける役者さんの方が大変だったと思います。殺陣という集団アクションの中で大切なのは、斬られたりする受け身側の人たちの動きだと思うんですよね。受けてくださる方々が鍛錬されていたので、非常に助かりました。

■監督がシェフで、役者は調理される食材

Q:斎藤さん自らが、現場でアイデアを出すこともあったのですか?

今回はなかったです。出してほしいと言われたら、考えて持っていくことはありますけど、基本的に映画は監督がシェフだと思っています。僕らは食材でしかない。例えば、僕が野菜だったとして、刻んでいった方がいいのか、ある程度炒めていった方がいいのか、土の付いたままがいいのかとか、シェフのタイプごとに考えることはあります。西村監督の場合は、完成図をしっかり頭で構築される方なので、そこに合わせて土っぽくやるようにしていました。

Q:今回、最強といわれた男を演じましたが、ご自身の「ここは最強」と思うところがあったら教えてください。

引きこもり感です(笑)。今ってSNSの時代で、つながって広がっていることが常になっている気がするんですけど、僕はその逆で、「いかに人とつながっていかないか、知り合いを増やしていかないか」ということを常にしています。そこに関しては、最強だと思いますね。僕、興味のメモリーの数が少ないんですよ。多くの人と関係を広げていこうとする意識がまったくない。「閉鎖的」という言い方もできるのですが(苦笑)、薄く広くつながる方が、付き合う方々に失礼だと思うんです。

■色気を求められることに、自身が思うこととは?

Q:斎藤さんはセクシーなイメージを求められることも多いかと思うのですが、ご自身ではどう捉えているのでしょう?

まあ、去年の夏からですかね。環境を変えるキッカケではありました。そこで一気に、自分の露出の仕方に「ある色が付いたな」とは思っていましたけど(苦笑)。でも、間もなくその現象は終わります。もう終焉(しゅうえん)に向かっていますから。ブームというのは、一時的だからブームなんですよ。とはいっても、そこまでのブームだとは思っていませんけどね。

Q:客観的に見ていらっしゃるんですね。

僕がCMで野菜のかぶり物をしていたりすると、古い付き合いの人は「安心する」って言ってくれます(笑)。色気みたいなものを求められている僕を見て、近しい人たちはみんな鼻で笑っているんですよ。色気を出すより野菜をかぶっている方が、僕らしいと思うんでしょうね。

Q:役者として次のステージに移行したい、というお気持ちもあるんですか?

僕は自分が「線」だとは思っていないんです。次はこんな役をやって、などと考えるのは本人の周りだけであって、作品を観てくださる方にはどうでもいいことのような気がするんですよ。役者にとっては、作品の一つ一つが勝負。だから「点」でしかない仕事だと思っています。たとえ、求められることが毎回同じだったとしても、「それは前にやったしなあ」と考える意識すら、要らないと思う。「仕事を選べ」という声を聞くことがありますけど、それは気にしない(笑)。むしろ、自分という素材に対して意外な発想をしてくださった作り手の方々を、信用していった方が楽しいと感じています。

■俳優のみならず、いろいろな側面から映画に関わりたい

Q:この先も、そのようなフラットなスタンスでいかれるのでしょうか?

俳優としては、そうですね。ただ、もともと映画を作りたくてこの世界に入ったので、それは考えています。監督をやりたいわけではないのですが、勝手にプロットをいくつか考えていまして、形にしていきたいなと。それと今、移動映画館のプロジェクトも、被災地を中心に展開しているんです。役者というのは一つの側面なので、いろんな側面で映画に関われたらいいなと、摸索はしていますね。

Q:ちなみに、どういった作品を作りたいと考えているんですか?

前に園子温さんと飲んだときに、「多くの日本映画は海外から見ると、日本って平和な国なんだなという後味がある気がする。もっとすごい情勢の国がたくさんあるのだから、日本の問題も世界の問題として着眼しないと、通用しないのではないか」とおっしゃっていて、その通りだなと思いました。かといって、「過激なものを」ということではないんです。普遍的なものや本質的な物事を題材にしないと、その映画の活動範囲が狭まってしまう。僕、園さんの『TOKYO TRIBE』(セリフをラップで表現したアクション映画)を観て、やられたなって思ったんです。映画は言葉で観ているのではなく、感情を観ているのだなと。だから、自分も説明的ではないものを作りたい。日本映画をどうこうしようとか、大それたスローガンがあるわけではないのですが、映画のフォーマットを、いい意味で壊せたらいいですよね。西村監督や園さんのように、僕にも「前例のないものを作りたい」という思いはあります。

「役者は監督のコマに徹する仕事」という確固たるポリシーと、グローバルな視点が印象に残る斎藤。その根底にあるのは、日本映画に対する強い思いだ。インタビュー後に「最近、映画館で映画を観られていなくて……」と漏らしたときの表情にも、映画への深い愛情がにじんでいた。迫真のアクション、ビビッドな特殊造型、メタ的なギャグなど、西村監督ならではのセンスが光る本作では、そんな斎藤の本領発揮ともいえる姿を見ることができる。斬新さとレトロ感が同居するその世界観は、老若男女問わず幅広い層を魅了することだろう。

(C) 2014「虎影」製作委員会

映画『虎影』は6月20日より全国公開

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