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映画『HERO』祭り:木村拓哉インタビュー

昨年夏のドラマで復活を遂げた「HERO」が、今度はスクリーンに戻ってくる。この国民的人気シリーズについて、主演の木村拓哉はどのような思いを抱いているのか。自身が演じる主人公、久利生公平に対する飾らない言葉から、その本音が見えてくる。

久利生はツッコミどころがある男

Q:今回の映画では、8年ぶりに雨宮舞子(松たか子)がシリーズに帰ってきましたね。
松さんが演じる雨宮は、久利生にとって大きい存在なんだなとあらためて思いましたね。映画の中で、久利生が麻木千佳(北川景子)に「おまえ、自分と雨宮、比べんなよ」と言うんですが、その尺度自体、雨宮の存在がないと出てこないものじゃないですか。前の映画ではキスして終わっていた二人なんですけど、いざフタを開けてみたら、なかなか際どい言葉のキャッチボールもあるし、最後は最後で、雨宮からすごく印象的なセリフがあったりもする。今まで、いろいろなことをちゃんと整理してきた『HERO』ですが、今回の久利生と雨宮に関しては整理したら整理したでつまんなくなっちゃうのかなと。あの二人は「片付かない関係」なのかなとは思いましたね。

Q:変わらない部分と時を経た感じが、両方あります。
今では雨宮も検事になっていて、以前の検事と事務官という関係ではなくなっているので、その影響もあるのかもしれません。

Q:久利生は検事としては真っ当すぎるほど真っ当な人ですが、こと恋愛に関してはよくわからない男性ですよね。
雨宮に限らず、女性というものに対する久利生のアンテナには、電流が流れているのか流れていないのか、わからないぐらい。果たして電波を受け取る機能が作動しているのかどうか……とにかく(女性の)優先順位が相当、後ろの方にいっているんじゃないですか。あれだけ長い間一緒にいても、麻木とはまったく進展ないですからね。さっきの「おまえ、自分と雨宮、比べんなよ」というのも、あくまでも仕事の話ですから(笑)。非常にツッコミどころのある男だと思います。

「久利生方程式」が通用しない相手は?

Q:今回、久利生が向き合うのは「治外法権」という越えられない壁ですね。大使館は「外交特権」で守られているため、日本の司法が及びません。
久利生にとっては、事件を追っていったら、たまたまそこに大使館があった。この「たまたま」と正面切って言えるのが、『HERO』という作品のスタンスだと思います。大使館をめぐるさまざまな約束事は、それで国と国とがバランスを保てている面があるわけですが、そのバランスを久利生的には無視して突っ込んでいく。たぶん、久利生じゃなかったら、許されていないんじゃないですかね。本来であれば「バカか? おまえ」の一言で片付けられちゃうっていうか。ただ、今まで彼が培ってきたエピソードがあるから「ですよね」ということになる。皆さんが、この作品とコミュニケーションをとってきたからこそ成立する話だと思います。

Q:シリーズが始まって14年半。とはいえ、7年演じていない期間もあったりしますよね。
ヘンな話、久利生公平のキャラクターがすごくしっかりしてくれているので、助かるんですよ。キャラクターに向き合うという作業においては、あまり悩む必要がないというか。自分も、観てくださっている人たちと同じ時間、久利生と付き合ってきたので、「ここで彼がどうするか?」と言われたら、「あいつだったらこうするでしょ」と言えるんです。彼の中にある「方程式」は変わっていない。相手が中学生であろうが、「治外法権」であろうが、「久利生方程式」に当てはめれば、答えは全部出てくる。そこは不変なんです。ただ、そこにハマらないのが、女性という存在で(笑)。

Q:計算式が見つかっていないんですか。
計算式が変わって、すんなりいけばいいんですけど、たぶん、久利生にとっては円周率並みなんじゃないですか。どこまでいくの? っていうくらい。

Q:割り切れないじゃないですか(笑)。
うん。じゃあ、もう面倒くさいから「π」で表現しちゃおうよ、ということになっているのかもしれませんね。

「何でもなさ」から始める可能性

Q:そういう意味では、決してパーフェクトな人ではないですよね。
私生活っていうものが全然出てこないですからね。そういえば、前はスペイン語にハマっていたけど、どうなったんだろう? 今回はそこ、皆無でしたね(笑)。

Q:マイブームだったのかな。
ですね。通販に関してはいまだにハマっているけど。あと、ちょっとにおいが感じられるのは、サッカーはなんとなく好き、っていうことぐらい(笑)。

Q:でも、今回は冒頭で久利生の寝起きシーンがあります。朝、彼は自分の部屋であんなふうに過ごしているのだなと。
あの「もしかしたら要らないかもしれない」シーンは、監督に相談して入れてもらったんです。交通事故で女性が死ぬというオープニングなので、一回フラットにしないと『HERO』が始まらないなと思って。「何でもないこと」から始めたかったんです。基本、何でもない人たちの集まりだから、『HERO』は。

Q:ある意味、日常から『HERO』を始めたかったということですか。
『HERO』というタイトルは、すごく見栄を張っているなあといまだに思うんです。だって、何の特殊技能も能力もない、何でもない人たちの話ですからね。でもだからこそ、このタイトルを掲げるっていうことは、とんでもない可能性を掲げることにもなると思っていて。あくまでも、確固たる気持ちや熱意を持っている人たちの群像劇ですから。そこに「何でもなさ」がなかったら、(このシリーズは)もういいよ(おなかいっぱい)ということになっていたんじゃないですかね。

取材後記

アンテナ、電流、電波、方程式に円周率、そしてπ。さまざまな比喩で、久利生を表現する姿には、自身が演じ続けてきたキャラクターとの「かなり近い」距離感が見てとれる。そのカジュアルな役との「付き合い方」こそ、木村拓哉が大事にしている「何でもなさ」なのかもしれない。(取材・文/相田冬二)

映画『HERO』は7月18日より全国公開

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