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竹野内豊&松雪泰子
『at Home アットホーム』
偽装夫婦に恋愛感情はあったのか?意見は真っ二つ!
『at Home アットホーム』竹野内豊&松雪泰子 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:尾鷲陽介

人気作家・本多孝好の短編小説を映画化した『at Home アットホーム』。泥棒の父と結婚詐欺師の母、そして、両親のなりわいを知る3人の子供たち。それぞれつらい過去を持つ他人同士の偽装家族が、誘拐された母を救出すべく奮闘するさまを描く。本作で、血のつながらない家族をひたむきに守ろうとする父・和彦を演じた竹野内豊と、家計を支えるために詐欺を働く母・皐月役の松雪泰子が、撮影時のエピソードを語り合った。

■泥棒と詐欺師、異色の役柄を体当たりで熱演

Q:犯罪で生計を立てる偽装家族の物語でありながらも、いつの間にかそんな彼らに共感を覚えてしまうという、ユニークな作品ですね。

竹野内豊(以下、竹野内):例えば、逃亡劇などでも、自然と逃げている側の人間を応援したくなる。そういった心理はあると思います。和彦は泥棒なんだけど、そこに至るまでには大変な人生があったわけです。泥棒という行為を良いか悪いかで判断するのなら、もちろん良いことではないのですが、それは自分の考え方なので、作品には関係ないと思って演じました。

松雪泰子(以下、松雪):わたしは演じる際に、基本的にはいつも演じる役の生き方に共感性を見いだせなくでもいいのではないかなと考えています。まったく違う世界の人物を演じるわけですから、まずは、その設定の中で生きてみることを第一に考えます。現象面として捉えれば、なりわいとしては悪い事をしているので共感はできないのですが、この作品は、傷ついた者同士だからこその思いやりや絆が描かれていて、寄り添い合って生きていく姿が美しい。だからこそ、どんどん共感できるようになっていくのではないかと思います。

Q:本作に出演するにあたって竹野内さんは、指名手配犯の両親と息子を描いた『旅立ちの時』(※リヴァー・フェニックス出演の1988年の青春映画)を例えに出されたそうですね?

竹野内:『旅立ちの時』は、今回の作品とは設定はまったく違うんですけど、家族がお互いを思い合うなど、根本的な部分ではつながるものがあるように感じたんです。あの映画を観たのはかなり昔ですけど、きちんと希望というものを描いているすがすがしい話だったなと、強烈に記憶に残っているんです。それを思い出して、あのような作品に近づくことができたらいいなとは思いました。

Q:松雪さんは、役づくりのために準備されたことはありますか?

松雪:結婚詐欺師という設定だったので、無理して若作りしている感じを出せたらいいなと思いました。若々しく転び過ぎず、でも、「何か無理していてイタイな」という雰囲気を、ヘアメイクさんとも相談しながら工夫して作っていきました。

■偽装夫婦に恋愛感情はあったのか……?

Q:一家の大黒柱である父・和彦と、優しい母として描かれている皐月。あの二人は、男女の愛情で結ばれていたと解釈していましたか? それとも、そういった感情とは別の部分でつながっていたのでしょうか?

竹野内:松雪さんと自分とでは考え方が違っているかもしれないんですけど、僕は最初、そういった感情が和彦にあるとは思っていなかったんですよ。蝶野(博)監督も、どちらかというと自分と同じ考えだったんです。でも、スタッフの女性陣は、「いや、あるでしょ」って言うんです(笑)。自分も含め、男性陣は「まだそういった感情はないのではないか」と思っていたのですが、女性の皆さんはもう少し現実的で、「一緒に住んでいるのだから、気持ちがないわけがない」っておっしゃるんです。

Q:なるほど、男女で捉え方が異なるなんて面白いですね。

竹野内:この家族が本当のスタートラインに立つのは、ラストシーンだと思う。初めは疑似的なところから始まるんだけど、それを超越していって、それぞれが希望を見いだしていくという。

松雪:「この先、どんな人生を歩んでいくのだろうか……?」と、登場人物たちの未来に想像を巡らす余白が、たくさんある作品なんですよね。

■共演者の村本大輔が本番中に爆睡!

Q:皐月が誘拐されてすさまじい暴力を受ける場面がありますが、松雪さんは撮影で苦労されることも多かったのでは?

竹野内:松雪さんは大変だったと思いますよ。あのシーンは、ホコリだらけでマスクをしていなかったら口の中がジャリジャリするような現場で撮影していたんです。そんな中で、ずっと長い時間、縛られて動けずにいたわけですから。

松雪:振り返ってみればそうですね。

Q:村本大輔(ウーマンラッシュアワー)さんが、“冷静にキレる”芸風とも重なる猟奇的な誘拐犯を演じていましたが、共演されていかがでしたか?

松雪:実際は、とってもいい方なんですよ。ただ、わたしが縛られている状態でリハーサルをしていたとき、村本さんから何度も電話番号を聞かれて、「今度、あのお店に行きましょうよ」とか言われたりすることがありました(苦笑)。

竹野内:その話、本当なんですか? 僕と一緒のときはとても静かで、それこそひと言もしゃべらない感じだったんですけど(笑)。

松雪:もちろん、ジョークだったと思いますよ。だから、わたしも「忙しいので」とお断りしました(笑)。村本さんがすごく緊張されていたようなので、なるべくリラックスできるように、わたしから積極的にお話をするようにしていたんです。

竹野内:あと、村本さんがうつ伏せになって横になるシーンがあるんですけど、本番でホントに寝ていたみたいです(笑)。

松雪:あー、そうでしたね(笑)。

竹野内:まあ、本当にお疲れのようだったので、われわれもそのまま起こさなかったんですけどね(苦笑)。

■子供をあやす竹野内に思わずほっこり

Q:3人の子供たち(坂口健太郎、黒島結菜、池田優斗)と過ごすだんらんシーンが、とても楽しそうでほほ笑ましかったです。撮影現場もあのような雰囲気だったのですか?

竹野内:そうですね。楽しい空気になるように、スタッフさんも心を配ってくださったんですよ。その雰囲気が、映像にも表れているのではないかと思います。松雪さんは飾るような方ではないですし、坂口くんも結菜ちゃんも本当に明るい子で。優斗くんも、プロフェッショナルな子役さん。時間がたつにつれて無邪気になっていって、とてもかわいかったですね。

松雪:わたしも自然に楽しく過ごしていました。休憩中に、竹野内さんが優斗くんを抱き上げて、“高い高い”をしていて、すごくステキな光景だったんですよ。

竹野内:いや、自分が運動不足だったので、いい重りだなと思ってやってみたら、優斗くんが喜んでくれたんです(笑)。

Q:お二人は、本作の“赤の他人同士が築いた理想的な家族”から、何を感じましたか?

竹野内:自分としては、理想の家族になりたかったというよりも、ごく自然に引き寄せられていった五人だと解釈しているんです。つらい過去を背負ったそれぞれが、本当に必要な人たちと出会ったからこそ、あのような関係が築けたのではないかと感じています。

松雪:血のつながりのある家族の方が、もっと殺伐としているところがあるような気がします。家族って、何かしらの問題を抱えていたりする。そこをいかに補っていけるのか、考えさせられました。この映画の中の家族のように、しっかりと思いやりを持って、それを深め合えたらいいなとあらためて思いました。

穏やかで思慮深く、近くで見れば見るほど麗しい竹野内と松雪。一緒にいる様子があまりにも自然に感じたのは、男女の愛を超越した、特別な絆で結ばれた偽装夫婦を演じたからだろう。一家で仲良く食卓を囲んだり、軽口をたたき合ったり、子供の進学について悩んだり……。その時々の二人の幸せそうな表情が、深く印象に残る作品だ。

(C) 映画『at Home』製作委員会

映画『at Home アットホーム』は8月22日より全国公開

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