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東出昌大&桐谷健太&土屋アンナ
『GONIN サーガ』
殴り合いは本気だからこそリアル!
『GONIN サーガ』東出昌大&桐谷健太&土屋アンナ 単独インタビュー

取材・文:高山亜紀 写真:高野広美

伝説的バイオレンスアクション『GONIN』から20年。鬼才・石井隆監督がオリジナルの19年後を舞台にした新たなる物語を作り上げた。すさまじい復讐(ふくしゅう)で親を失い、運命を狂わされた男女を東出昌大、桐谷健太、土屋アンナが熱演。根津甚八や佐藤浩市らオリジナルキャストと奇跡的共演を果たし、昼夜を問わない過酷な撮影の日々を駆け抜けた三人が石井ワールドの魅力を赤裸々に語った。

■1日30時間? 仮眠しては撮影の日々

Q:魂を感じる熱い演技に圧倒されました。

東出昌大(以下、東出):ありがとうございます。毎日、仮眠しては撮影という感じで暗い場所にずっと居たこともあり、表に出てやっと昼か夜かわかるほど、濃密な時間を過ごしました。「1日30時間くらいあるのかな」と思うくらい時間の感覚が麻痺(まひ)して、わけがわからなくなることもありました(笑)。

桐谷健太(以下、桐谷):そうそう。床下でのシーンは3日くらいかけて撮ったと思うのですが、どんな感じだったかも覚えていないほどで、とにかく朝から晩までずっと撮影していた感覚でしたよね。

土屋アンナ(以下、土屋):みんなヘトヘトになりながらもそれぞれ自分の演技に集中していたから、わたしはいい意味で自分が女だということを気にせず仕事ができました。待ち時間は竹中(直人)さんが口笛を吹いたり、鼻歌を歌うのが楽しみで、和みました。

Q:東出さんは主演ということを撮影現場で意識することはありましたか?

東出:いえいえ、恐れ多いです。完成作は2時間10分ですが、編集前は4時間半あったそうです。順撮りではない200カット超の撮影だったので、土屋さんがおっしゃったように、みんな自分の最善を尽くすのみ。思い思いに、その瞬間、瞬間を芝居するという感じでした。

Q:全編通してほぼ雨の印象ですが、雨量もハンパじゃなかったですね。

桐谷:とにかく雨と水があふれて、とどまらないので、ずっとぬれていました。雨降らしをしなくても自然に降って、また雨。常に雨という感じでしたが、雨のシーンって、カッコよく見せてくれるんですよ。

東出:マイクが取れてしまうアクシデントや、雨ゆえのデメリットもありましたが、雨の中だとセリフを相手にぶつけようと自然と声も大きくなるし、石井監督作品の感覚を肌で味わうことができました。

桐谷:強盗するためにマスクを着けて素早くビル内に入るシーンでは、自然の雨に足を取られて、思いっきりこけたんですよ。

東出:後ろを走っていて突然消えたので、最初は芝居かなって思っていたんですが、セリフを言ってもなかなか起き上がってこないので、「あ、これは芝居じゃないんだ」って。

桐谷:やっぱり、変なテンションになるんです。最後のシーンでも、「よ~い」と言っているときからスプリンクラーが回っていて、ずっと水が出ている。なかなか目も開けられないし、普通の環境とは全く違うので、平然とした顔はできない。そういったことから、引き出された演技もあったと思います。

土屋:すごく寒かったよね。あのときは「無」になりました。でも、人間の真理みたいなものが作品ににじみ出て、かっこいい。とてもリアルだし、あれだけぬれたら、ああなるしかないなって(笑)。

■「あ、やられる」と感じるリアル

Q:リアルといえば、殴り合いのシーンは本当に殴っているように見えます。

土屋:本気で殴り合っていたよね? あれは安藤(政信)さんか(笑)。

桐谷:僕らはとことんリアルに近づけるアクションで、安藤さんはアクションに近づけるリアル(笑)。それはそれで、すごく面白かったです。やっぱり、緊張感がありましたね。「あ、やられる」って、空気でわかるんです。石井監督が「ああいう役者は面白い」と言っていた意味がよくわかりました。大事なのは、ケガをしていないこと。ギリギリの線を安藤さんは知っているんだと思います。

東出:僕も安藤さんから蹴りを入れられましたけど、嫌に感じるということはなく、やられた分、なにくそと思うのが役の糧になる。だからうれしかったです。ケガがないことさえ守られていれば、いくらやってもいいと思います。

土屋:演技とリアルのはざまって難しいですよね。安藤さんの相手役として向き合っているわたしが「リアルだな」と感じるからこそ、こっちも本気でぶつかっていける。石井監督はそれをわかっているから、台本にはない結果になっていっても、カットをかけないんですよ。

Q:石井ワールドにどっぷりとつかって、自分自身の発見はありましたか?

東出:僕が演じた久松勇人の父親(鶴見辰吾)も相当ぶっ飛んだ人だったのですが、勇人もちょっと常識がないというか、タガが外れてからは罪悪感を抱かないんです。不気味というか、現代のキレる若者の感情みたいなものを今回は感じていました。

桐谷:僕はこう見えて、ガンアクションは初めてだったんです。持ったことはあっても、撃ったことはなかった。だから興奮したし、大輔という役を通して違った一面が出ていたらうれしいです。また、性別を超えて男女が組んで巨悪に立ち向かうのはかっこいいと前から思っていたので、石井監督の作品で初めてやれたのはとてもラッキーでした。

土屋:わたしは、自分の中にはない女の部分を出さなければならなかったので、そこは「わかんね~!」と思いながら麻美という役をやらせていただきました(笑)。石井監督から「ケツばっかり撮る」と言われていて、「ケツンナ」という別名もありました。

桐谷:石井ワールドでは、女性の体の神秘は重要ポイントだから、そこは大事だよ!

■根津甚八の生きる力が、人に力を与える

Q:最後に、俳優引退後、今回限りの復帰を果たした根津さんとの共演はいかがでしたか?

東出:芝居をしている最中に感情が動くことは当たり前にあることなのですが、シーン以外で、瞬間的に「うわ、すごいな」と感動したのは初めてで、その日撮影が終わってもずっと心から消えませんでした。それは、役としての感動だけではなく、役者同士、同じ現場を経験できたことで大先輩から感じさせていただいた感動だったのだと思います。

桐谷:僕も「役者でいられるこの世界が魅力的なものなんだ」とあらためて感じさせてもらいました。芝居して、カメラを回して、その前に立てるということはすごく恵まれているし、素晴らしいこと。健康な人間が太ったり、痩せたり、歯を抜いたり、そういう役者魂もすごいと思うけど、根津さんのようにお体を悪くされた方が役者として表に出るという魂は、違うレベルの脅威。そう感じて、めっちゃうれしかったです。

土屋:わたしは根津さんの作品から受ける印象しか持っていなかったので、現状などはスタッフさんが話しているのを聞いて知りました。だから、現場ではリスペクトしている方を男性陣が取り囲んでいる様子を一歩下がって見ているという距離感でいました。完成した作品で根津さんの演技を見た瞬間、「このことをみんなが言っていたんだ」と思いました。ご一緒できて、学ばせていただき、根津さんの素晴らしさを知ることができた。もっと前から知っていたかったという思いもあるけど、根津さんの生きる力がいろんな人に力を与えるんだと実感して、演技って究極、何なんだろうって考えさせられました。

静かな勇人の秘めた暴力性、麻美を守る大輔の二枚目っぷり、そして、露出度満点の麻美のお色気アクション。東出、桐谷、土屋の三人は本作で新たな魅力を発揮した。真摯(しんし)な東出、ムードメーカーの桐谷、明るく元気な土屋と普段の三人はイメージ通りのキャラクターで、劇中とのギャップに「さすが、プロ」と思わずにはいられない。根津甚八や安藤政信からの洗礼も彼らにはしっかり糧となったよう。三人のサーガ(伝説)は始まったばかりだ。

映画『GONIN サーガ』は9月26日より全国公開

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