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柳楽優弥&瀬戸康史
『合葬』
30歳を過ぎたら幕末のロマンを語り合いたい
『合葬』柳楽優弥&瀬戸康史 単独インタビュー

取材・文:前田かおり 写真:金井尭子

第39回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門に出品された映画『合葬』。江戸風俗研究家でもあった漫画家・杉浦日向子の日本漫画家協会優秀賞受賞作をベースに、幕末、徳川幕府の解体に反対し、最後まで阻止しようと戦った彰義隊の数奇な運命を描く。強い意志を持って彰義隊に加わった極役の柳楽優弥と、極に引きずられるようにして彰義隊に入隊した柾之助役の瀬戸康史。役を通して、激動の時代を生きた侍の心に触れた二人が作品への思いを語った。

■イマドキの若者のような幕末の志士に親近感

Q:幕末を扱った時代劇の中でも、彰義隊を描いた作品は少ないと思いますが、脚本を手にしたとき、作品やキャラクターをどう感じましたか。

瀬戸康史(以下、瀬戸):僕は、NHKの大河ドラマ(「花燃ゆ」)など時代劇を何作かやらせていただいていますが、この『合葬』で彰義隊の存在を初めて知りました。これまで僕が演じた役どころは志を強く持ち、それに向かって真っすぐに進む人物が多かった。それが今回の柾之助はふわふわしたり、迷い悩んでいたり……。幕末の時代にこんな人がいたということにびっくりしながら、僕自身はすごく親近感を持ちました。

柳楽優弥(以下:柳楽):そもそも時代劇は自分からすごく遠いものだと思っていたのですが、杉浦日向子さんの原作を読んで親近感が湧きました。テーマの一つに「青春」ということがあるからか、(クランク)インする前から楽しみでした。

瀬戸:僕は、大河の「花燃ゆ」では攘夷(じょうい)派の志士を演じたばかりですが、『合葬』では佐幕派。演じたキャラクターは両極端だけど、何か運命的なものを感じました。

柳楽:脚本が、『ジョゼと虎と魚たち』や、NHKの朝ドラ「カーネーション」を手掛けられた渡辺あやさんなので楽しみでした。それに照明の高屋齋さんは北野作品を手掛けられた照明の巨匠ですし、共演者には瀬戸さん、オダギリ(ジョー)さんもいる。ぜいたくなキャスト、スタッフに恵まれてラッキーだなと本当に思いました。

■“ザ・同じ”じゃないけど、演じたキャラとは相似形

Q:杉浦さんの原作を読んで、それを演技に生かしたところはありますか?

瀬戸:空気感ですかね。極、柾之助と、二人の幼なじみで彰義隊を嫌いながらも加わるハメになる悌二郎(岡山天音)。この三人が軸になって話が進みますけど、生きてきた環境とか、性格も違う三人の微妙で絶妙な空気感が原作の魅力だし、それを演じる上でも生かしたつもりです。

柳楽:実際、瀬戸さんの空気感は、柾之助みたいでしたよね。

瀬戸:演じていても好きだったんです。柾之助は、二人と近過ぎない距離感を保っているんですよね。それって、僕と柳楽くん、僕と天音くん。あるいは三人でいるときの空気感にどこか似ているような気がしていました。

柳楽:瀬戸さんが三人の中で年上だったので、場をまとめてくださっている感じでしたよね。それが、柾之助のふわっとしたような感じと似ている。瀬戸さんは先輩ということもあって、現場でもいろいろ相談していました。天音くんは、松竹のセットをぶっ壊すぐらいの熱意で殺陣をやっていましたね(笑)。

Q:演じたキャラクターと似ていると感じるところはありますか?

柳楽:たぶん極に似ていますね。“ザ・同じ”じゃないですけど。だって、僕は極みたいに死にたくないですよ。腹も切りたくない。

瀬戸:ハハハハハ。

柳楽:原作が傑作漫画でファンも非常に多いので、うまく極を演じられたかどうか、とても怖いです。

瀬戸:僕もです。

柳楽:それに、原作ファンに対してだけでなく、極というキャラクターを演じるのに正解はない。それがいいところでもあるけれど。撮影期間はやっぱり不安になりますよね。

Q:同じ男性として柾之助や極に共感したり、気持ちを理解することはできましたか?

瀬戸:柾之助自身はふわふわしているというのもあるけれど、とてもナチュラルなんです。激動の時代なのに、物事を客観的に見ることができている。まあ、時間が止まっているみたいな。それとはちょっと違うけれど、実は僕、ちょっと小心者で、周りの空気とかをすごく気にするタイプなんです。だから、そういうところは柾之助と似ているかなと思いました。それと悩んだり迷ったりというのは、今の若者でも共感するところなんじゃないかな。

柳楽:僕は中学生のころ、ケンカが強いグループを遠巻きに見て、強いのっていいなって憧れていました。だから、極みたいに強くて、一つのことを信じて真っすぐに向かっていく男には憧れます。

■あやめられる緊張感が、青春の一コマを濃厚にする

Q:では、幕末の男にロマンを感じますか?

柳楽:この間もインタビューで同じことを聞かれたんですが、僕は全く感じません。僕が出演した『許されざる者』でも同じ幕末を描いていたんですけど、今は、幕末という時代をもっと知りたい。ロマンを感じる境地に至るのは、30過ぎ、35歳ぐらいじゃないですね。そのころ、「幕末ってさ……」って浸って語っていたい(笑)。

瀬戸:僕も幕末はロマンばかりではないと思います。というか、彼らは自分のために行動するというか、自我はあまりないという見方もあるのかなと思いました。そんな生き方って切ない。ただ国のため、将軍のためといって誰かのために命をささげる。そういう犠牲的な精神は親にならないとわからないのかもしれないですね。

Q:物語の終盤、彰義隊は苦境に立たされて、敗北は見えているのに立ち向かっていく。逃げ出すこともせずに、やり遂げるしかない。何かに懸けるしかないという気持ちになったことってありますか?

柳楽:これは俳優に限らないことだと思いますが、人が生きていくのに将来の保証はもちろん、先が見えないものですよね。だからもうやるしかないみたいなことってありますよね……瀬戸さん。

瀬戸:そうだね(笑)。

柳楽:そのことによって、苦しい状況を突破できるヒントに近づけることもあるかもしれない。ただ、この時代はあやめられる緊張感がある。だから一つ一つが濃厚ですよね。

■見方によってさまざまな極と柾之助の友情

Q:三人で撮った写真が、後半のシーンで印象的に使われています。写真を撮影したとき、何か特別なエピソードはありましたか?

瀬戸:お話的にはまだ前半の出来事で、極と柾之助に悌二郎が再会してからの流れなんです。あのシーンは、セリフはあるんですけどエチュード的な感じで、決まったポーズもないし、ピストルを触る、帽子を触るといった指示も特にありませんでした。

柳楽:でも、あのシーンを撮ったころには僕たちかなり仲良くなっていたと思います。京都でロケに来ているというのも大きいですよ。一緒に食事も楽しめましたし。特に、時代劇はかつらを取って、着物を脱いで……という中でオンとオフが切り替わりますからね。オフになったときに、意外と撮影時にはわからなかったことがわかったりして(笑)。

Q:男の世界を描いた物語ですが、原作が杉浦さん、脚本が渡辺さん、プロデューサーにも女性が参加しているというところで、かなり女子目線が利いたものになっている気がしたのですが。

柳楽:確かに!

瀬戸:超テキトーに言ってない?(笑)。

柳楽:いやいや、本当にそう思ったんですよ。出来上がった作品を観た後に。

瀬戸:ほぉー、聞かせてもらおう。

柳楽:ちょっと思ったんですよ。ボーイズラブ的なニュアンスが感じられるというか。

瀬戸:なるほど、そういう要素もあるかもしれない。男たちの友情とか……。

柳楽:だから女性には観てもらいたい!

瀬戸:男性には、この時代の男の生きざまを見ていただきたいですね。

柳楽:そういや、昔、友達がばあちゃんに「男は生きざまが大事」って言われたってことを思い出した……。だから絶対、女性はこの映画好きですよ。

強い信念の下、時代の荒波に突っ込んでいった極のように、作品への思いを熱く語る柳楽と、年上らしく柳楽をフォローしながらも取材の場を盛り上げる瀬戸。「幕末のロマンはわからない」と言いつつ、現代の若者にも通じる悩みや迷い、憤りには共感したという二人が演じたはかなくも濃密な幕末青春記。瀬戸、柳楽ら絶妙なキャスティングによって醸し出される空気感と共に、鮮烈な物語を堪能できる一作になっている。

【柳楽優弥】ヘアメイク:内田香織(Otie)/スタイリスト:広沢健太郎
【瀬戸康史】ヘアメイク:須賀元子(星野事務所)/スタイリスト:小林洋治郎(Yolken)

映画『合葬』は新宿ピカデリーほか全国にて上映中

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