シネマトゥデイ

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ヘレン・ミレン
『黄金のアデーレ 名画の帰還』
若いころは理想ばかり追い求めていた
『黄金のアデーレ 名画の帰還』ヘレン・ミレン 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ編集部・石神恵美子 写真:金井尭子

第2次世界大戦中にナチスドイツによって奪われたオーストリアの画家グスタフ・クリムトの名画を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こしたマリア・アルトマンとその弁護士の奮闘を描く、実話に基づく人間ドラマ『黄金のアデーレ 名画の帰還』。本作で実在したユダヤ系女性のマリアを生き生きと体現した御年70歳のオスカー女優ヘレン・ミレンが、役づくりから共演のライアン・レイノルズとのエピソード、そして今後挑戦したい役どころなどについてチャーミングに語った。

■クリムト名画に隠された歴史に驚いた

Q:本作は衝撃的な実話が基になっていますが、この役を引き受ける前からご存じでしたか?

新聞はいつも読んでいるけど、なぜかこのニュースは知らなかったわ。だからこの役をオファーされたときに、ストーリーを読んでとても驚いた。もちろん、クリムトの名画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I」は知っていたわ。美術館で本物を見たこともあるし、わたしが学生のころ、皆がその絵のポスターを壁に飾っていたのをよく覚えている。それくらい有名な絵画でしょ。でも「黄金のアデーレ」にまつわるストーリーは、本当に何も知らなかった。

Q:役を引き受けた決め手は?

まずドラマチックなストーリーに惹(ひ)かれたわ。それにわたしが演じたマリア・アルトマンはとても特別な女性だった。芯が強くて、ユーモアがあって、それにセクシーでもあるから、すごく興味深い人物ね。面白いストーリーはたくさんあるけれど、面白いキャラクターに出会うことってなかなかないのよ。

Q:実在した人物を演じるのは大変だと思いますが、役づくりはどのようにしたのですか?

最初に彼女の写真を参考にして外見を近づけようとしたわ。彼女の映っている映像も見た。そんなにたくさんはなかったけどね。それ以上に、マリア・アルトマンの記憶をわたし自身に刻み込んだわ。そのために歴史についてたくさん読んだ。彼女はユダヤ系で、ストーリーにも絡んでくるホロコーストの歴史についてもね。

Q:マリアの相棒となるライアン・レイノルズふんする新米弁護士ランディとの関係が、時に友人、時に恋人、そして時に親子のようで観ていて面白かったです。ヘレンさん自身は二人の関係をどのようにとらえていますか?

とても難しい質問ね。あなたがとても上手に表現してくれたと思うわ。彼らの関係は変わるのよ。大きいくくりでパートナーシップと言えばいいかしら。パートナーシップって、ビジネス含めどんな場合であろうと、変化するものだと思うから。

■ライアン・レイノルズ、妻の妊娠をヘレンにいち早く報告

Q:息の合った演技を見せたライアンとの初共演はどうでしたか?

ライアンと働けたことは、わたしの人生においてすごく素敵な経験になったわ。彼はとてもチャーミングで、勤勉、それに自信に満ちているの。すごく愛敬があるから一緒に働いている間中、楽しかった。それがスクリーンを通しても伝わってくると思うけど、彼はいつも共演者を幸せにしてくれるのよ。

Q:どのように演じるのか、ライアンと相談することはありましたか?

特に話して決めたことはないわね。演技に関しては成り行きに任せていたわ。

Q:二人のやりとりは自然なものだったんですね。

そう、自然に起こったもの。とても直感的だったわ。2人ともキャラクターを演じていたけど、わたしとライアン自身でもあると言えるわね。

Q:それはセットを離れてもいい関係を築けていたということですよね。お二人の仲睦まじい様子の写真をライアンの妻、ブレイク・ライヴリーが冗談めかしてInstagramに投稿していたりしましたよね?

そうね(笑)。でもこの撮影期間中、ブレイクは妊娠していたから彼女に会ったことはないの。実はブレイクが妊娠していることは秘密だったんだけど、ライアンはわたしに教えてくれて。彼は撮影中も生まれてくる子のことをよく考えていて、とても楽しみにしていたわ。

■国が歴史の暗部を肯定するのは重要なプロセス

Q:撮影はアメリカ、イギリス、オーストリア・ウィーンで行われたとのことですが、オーストリアの歴史に大きく関わる作品だけに、オーストリアの人々からプレッシャーを感じることはありましたか?

オーストリアの人々は寛大で協力的だったわ。マリアはオーストリアの歴史においても、とても重要な人物だからということで、市長が歓迎会をしてくれたのよ。マリアのしたことが、オーストリアの人々にとって第2次世界大戦で起きたことを否定するのをやめ、立ち向かうきっかけを作ったから。自分たちの国がしたことに対する責任を負うのは、国にとってもすごく大事なプロセスだと思うの。人々は歴史を否定したり拒んだりするけど、ウィーンの人々は勇敢だと思った。

Q:本作がきっかけで「世界ユダヤ人会議」から表彰されました。

それにはとても感動したわ。でも正直言って、マリアのおかげだと思っている。賞はわたしへのものではない。わたしは彼女を演じるチャンスに恵まれていただけ。それを全うできてとても光栄だと思っているけど、わたしがしたのは、彼女の考えを体現したということだけだから、本当にマリアの業績なのよ。

Q:この映画を観た人に何を感じ取ってほしいですか?

この映画はとてもチャーミングだと思うの。笑えるところもあるし、それに実話だっていうことがこの映画をさらに素敵なものにしたと思う。サバイブすること、正義、家族や思い出といったことにまつわるストーリーだけど、根底は裁判ドラマだということをふまえて楽しんでほしいわ。

■『007』『ワイルド・スピード』に出たい!

Q:すでにさまざまな役をこなしてきていますが、今後挑戦したい役は?

ジェームズ・ボンドの相棒ね!

Q:そういえば、ヘレンさんが『ワイルド・スピード』最新作に出演すると、ヴィン・ディーセルが言っていたようですが、それは本当ですか?

わからないわ(笑)。でも喜んで出演するわ! ウフフフ。

Q:それはつまりどういうことですか!?

困惑するのもわかるわ。実はいつもわたしが出演したいって言い続けていたのよ!(笑)まだ直接話し合っていないけど、ヴィンがそのうち声をかけてくるのを楽しみにしているわ。

Q:そうだったんですね。出演が決まったらどんなことをしたいですか?

もちろん車を運転したいわ! 助手席に乗るんじゃなくて、わたしが運転するの!

Q:今後、一緒に働きたい方はいますか?

たくさんいるわ。わたしは一緒に働く人からインスピレーションを受けるタイプなの。実際の現場では一番意見を交換し合うのは監督だから、そういう意味でいろんな監督と働きたいという思いがあるわ。

Q:女優として長いキャリアをお持ちですが、過去と比べて演技のアプローチは変わったと思いますか?

女優を始めたころはいつも理想を追い求めていたけど、いくつもの夢を叶えてきたことで、現実的になったかしら。成長を感じられるようになって、その間には困難なこともあったし、落ち込むこともあった。そういうことを通して、理想主義的でなくなったのね。一方で、実践的な力を養えたと思うわ。

Q:最後に美の秘訣を教えて下さい。

とても腕の良いメイクアップアーティストを雇うことよ(笑)。

ヘレンが目の前に現れた瞬間からその美しさに目が釘づけに。容姿だけでなく、笑顔を絶やさず時にユーモアを交えて一問一問丁寧に答える姿は気品に満ち、大女優としての風格がたっぷりだ。常に若い才能や美を発掘しようとする傾向がある映画界において、今もなお最前線で彼女が活躍しているのは、女性のみならず誰しもがこんなふうに歳を重ねたいと思う理想を彼女が体現しているからなのだろう。

(C) THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』は11月27日より全国公開

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