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『スティーブ・ジョブズ』(2015)ダニー・ボイル監督 単独インタビュー(1/2)

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『スティーブ・ジョブズ』(2015)撮影現場でのダニー・ボイル監督 - (C) Universal Pictures (C) Francois Duhamel

 私たちの日常を変えたアップル社の創業者、スティーブ・ジョブズ。『スラムドッグ$ミリオネア』の鬼才ダニー・ボイル監督が、『ソーシャル・ネットワーク』の脚本家アーロン・ソーキンとタッグを組み、ジョブズ本人が作家ウォルター・アイザックソンに頼み込んで完成したベストセラーの伝記本を原案に作り上げた本作。大胆にもジョブズが手掛けた3大製品発表(1984年Macintosh、1988年 NeXT Cube、1998年iMac)の舞台裏を通して、デジタルテクノロジーの常識を変えた天才の素顔を浮き彫りにしていく。そんな型破りな本作をボイル監督が自ら振り返った。

■実在の天才を極限のむき出しに!

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マイケル・ファスベンダー演じるスティーブ・ジョブズ - (C) Universal Pictures (C) Francois Duhamel

Q:スティーブ・ジョブズを描くのはどうでしたか?

ジョブズはシェイクスピアのキャラクターのように、偉大でありながらひどい欠陥のある人物だった。ギリシャ神話やシェイクスピアのキャラクターのようであることから、アーロンはジョブズを今までにない方法で解釈しようとしたんだ。そして僕たちは、見事なまでに大衆を操ることに長けていたジョブズの舞台裏、ステージに立つ直前40分間の彼を描くことに決めた。舞台に立つ前の彼はものすごいプレッシャーに襲われていた。そしてできる限りむき出しの彼を描くために、彼のことをよく知っている人物たちと一緒に描くことにした。極限のむき出し状態にさせたかった。なぜなら彼は支配力の塊で、人をこき使う才能もあったし、意見・報道・世間の好みを操るのが上手かった。一体どうやってそんな彼を表現するか? というのがこの映画の課題だったからね。

Q:ジョブズの娘リサとの確執と和解というプライベートにも切り込んでいますね。

まさしくそれが彼の素性に迫るのに大事なドラマ性を担っていた。伝記作家アイザックソンが手に入れられず、アーロンだけが手に入れられたものこそ、ジョブズの最初の娘リサの証言だった。ジョブズとリサのストーリーを読んで、僕の心は圧倒された。本物のストーリーだと直感した。もしそれがフィクションだったなら、ジョブズ自身が経験した親からの愛情不足を、娘にも味わわせるなんて信じられないことだろうと思う。ジョブズ自らが養子であることを、どのように受け止めていたのかということも反映されている。

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娘リサとのやりとりも描かれる - (C) Universal Pictures (C) Francois Duhamel

偉大なる人物である彼が、肉親に対してそんなひどいことをしていたなんて本当に驚くべき話だ。いかにもタブロイドやスキャンダル誌にありそうな話で、彼が娘に見せた精神的仕打ちにはぞっとさせられる。それを技巧的かつ、きわめて詳細に描くことにした。彼がカリスマ的人物であるということ以上に、娘とのその関係がこの映画を興味深くしていると思っている。彼にもこんなに致命的な欠点があったのかということがね。物語の最後で、彼は罪贖いをするんだ。それは実際のジョブズがしたことでもあるけど、娘と和解し、自身にとんでもない欠点があることを認める。世界で最も美しいプロダクトを手掛けておきながら、彼自身はぞんざいな出来だったんだ。

■映画はセリフで奏でる心の音

Q:3大製品発表の舞台裏だけを切り取るという斬新な構成のために苦労したことは?

同じ登場人物が、ある意味全く同じと言っていいような出来事を3回繰り返す、これはまさしく挑戦だったね(爆笑)。新しいキャラクターが登場するのであれば、どうやって映画を構成するかは承知だ。でもこの作品では登場人物の入れ替わりがなかったから、普通の映画のようには行かなかった。そうすると、素晴らしい演技が重要だったし、そのためには素晴らしい俳優陣が必要だった。

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脚本家アーロン・ソーキンと話し合うボイル監督 - (C) Universal Pictures (C) Francois Duhamel

Q:そんな俳優陣はどうやって監督の要望に応えたのでしょう?

彼らには、普通の映画ではやらないような方法でこの映画に取り組んでもらわなくちゃいけなかった。映画の撮影では、俳優たちは前もってセリフを覚えるのが通常なんだけど、この作品で彼らはセリフを覚えなかった。彼らは日ごとに数行のセリフを言うだけだったから、覚える必要がなかったからなんだけど。その日に覚えて、フレッシュな状態で臨めるという精神的アプローチだった。これは異常な実践法だよね。シェイクスピア劇のようにキャラクターを演じなくちゃいけなかったんだ。学んで、知って、生きて、その役に入り込まなくちゃいけない。そして、シェイクスピア劇のように全ての手がかりがセリフのリズムに現れる。それはそのキャラクターの声でもあり、アーロンの声でもあり、ジョブズの声でもある。かつてはそういうものを映画と呼んでいたように思う。僕は映画を心の音であると考えていた。すごく荒れ狂っているけど、ジョブズがしたことの矛盾を通して彼の人となりを余すことなく描き、彼自身の内なる闘いが表現される。

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ファスベンダーとボイル監督、第3幕の撮影現場にて - (C) Universal Pictures (C) Francois Duhamel

Q:ジョブズを演じたマイケル・ファスベンダーは素晴らしかったですね。

彼の演技はずば抜けているね。実は過去にマイケルのことを何度かキャスティングしようとしたことがあったんだけど、都合がつかなくて実現できなかったんだ。でも彼にはジョブズっぽさがあるってずっと思ってた。ぶっちゃけ彼はジョブズに似てないけど、外見はどうでもいいことなんだ。別に今回、ジョブズに似ている俳優を求めていたわけじゃなかったから。でも、第3幕(1998年のiMac発表)になって、どことなくマイケルがジョブズに見え始めるんだ。わざとそう見えるように演出したわけじゃないんだけどね。

でもマイケルに求めたのは外見じゃなくて、ジョブズに通じる頑固さだ。ジョブズは自分の信念を譲らない男で、俳優としてのマイケルも妥協を許さない男だ。マイケルは安易な選択をしないし、観客が彼と一緒にその物語を見届けたくなるような演技を届けてくれる。強烈で一切の妥協がない演技の連続だ。彼が好かれようとしたり、笑わせようとしたりするシーンはないね。こうしたらジョブズのようだろうか、これこそがジョブズのしたことだろうか。そうやってマイケルは自身の基準と照らし合わせて、セリフのリズムに合わせて演じたんだ。

最終的に第3幕では、そのマイケルらしさがとても出ていた。彼は即興でセリフを作り上げていた。この壮大なキャラクターでもあるジョブズの獰猛さって、ハムレットとリア王を一緒にしたとしてもかなわないくらいだ。それにハムレットよりもセリフが多い。マイケルのパフォーマンスには圧倒されたし、彼のような素敵な俳優と仕事ができたことはとても幸運だったと思う。この世のものとは思えない演技なんだよ。

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