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作品評:『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

マネー・ショート 華麗なる大逆転
作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、編集賞の5部門にノミネートされた『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 2008年9月、アメリカで低所得者向けの住宅ローン(サブプライムローン)とその関連金融商品を大々的に展開していた大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が破綻し、連鎖的に世界は同時不況に陥った。このリーマン・ショックはなぜ起きたのか? その答えを、全米が好景気に浮かれていた2005年に危機を予見し、ウォール街を出し抜いて巨額の富を得た実在の男たちを主人公に描いた話題作が『マネー・ショート 華麗なる大逆転』だ。(文・山口直樹)

マネー・ショート 華麗なる大逆転
昨年『フォックスキャッチャー』で主演男優賞にノミネートされたスティーヴ・カレルが、またもやキョーレツな名演を披露!(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 難解な金融ドラマをイメージしたが、説明がほしいと思う場面になると、著名人が現れてウイットに富んだ解説を始める。その入れ方が滑らかで、違和感なく楽しめる演出がユニーク(ただ、多用される“空売り”という用語の解説はない)。そして、常識が次々と覆されていく展開で、経済に詳しくない筆者も時に笑い、時に怒り、大いに堪能した。アカデミー賞で作品賞、監督賞など5部門にノミネートされたのも納得の面白さだ。

 予告編では「4人のアウトロー」と謳われているが、映画は変人ぞろいの4人を含む3つのグループの奮闘を並行して描いていく。孤高のトレーダー、マイケル・バーリ(クリスチャン・ベイル)。野心的な銀行マンのジャレド・ベネット(ライアン・ゴズリング)と、彼と手を組む怒れるヘッジファンド・マネージャー、マーク・バウム(スティーヴ・カレル)たち。一線を退いた伝説の銀行家、ベン・リカート(ブラッド・ピット)と彼が支援する若き投資家コンビ。共同で脚本も手掛けたアダム・マッケイ監督は、原作から立場の異なる3つのグループのエピソードを取捨選択し、それぞれの行動を通じてサブプライムローンの虚実や住宅市場のでたらめさを浮き彫りにしていく。

マネー・ショート 華麗なる大逆転
ノリにのっている実力派ライアン・ゴズリングが抜け目のない銀行マンをひょうひょうと演じる (C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 マイケルは、ローンのデータを大量に集め、調べる。マークたちは現場に飛び、ローンで家を購入した人たちから話を聞く。住宅ローンは安心と誰もが信じていたなかで、ふと疑問を感じ、自ら調べて破綻を確信する男たち。その姿は、変わらず詐欺が横行し、人々がネットの情報をうのみにしたり、大勢に迎合しがちな傾向にある社会に警告を発している。

 こうしてついにサブプライムローンの焦げ付きが急増し始めるが、ここから映画はスリラーの趣となる。なぜか世間は反応せず、何かが暗躍していると感じさせ、信じがたい経済システムの腐敗とホラーな結末が明かされる。果敢にウォール街に戦いを挑み、勝利した主人公たちの表情に爽快感はない。ニュース映像を盛り込み、その理由をきちんと示した演出は味わいがあり、深い余韻を残す。

マネー・ショート 華麗なる大逆転
おいしいセリフをかっさらっていくブラピ (C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 さて、強烈な集中力で嘘を見抜くマイケルを体現したベイルはアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたが、不正を憎むマークにふんしたカレルの名演も光る。深い喪失感と矛盾を抱えた正義の騎士を繊細に演じ、物語を貫く道徳観を支えている。人間の欲が消えない限り過ちは繰り返される。そんなマークの姿を見ていると、こう思わされる。権力による罠の犠牲者にならないためには、受け身であってはならず、常に疑問を持ち異を唱え続けることが重要なのだと。

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は3月4日公開

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