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松山ケンイチ
『珍遊記』
丸くなっちゃダメと言われている気がした
『珍遊記』松山ケンイチ 単独インタビュー

取材・文:南樹里 写真:木川将史

漫☆画太郎(まんがたろう)著の人気ギャグ漫画「珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~」を実写映画化した『珍遊記』。育ての親であるじじい&ばばあを困らせていた悪名高き不良少年の山田太郎が、家に立ち寄った僧侶・玄奘に妖力を封じられ、「更生」という名目のもと、天竺を目指す玄奘の旅に同行するハメに……! 本作で主人公・太郎を体当たりで演じた松山が、破天荒な豪胆キャラをいかに作り出したのか、仰天の肉体改造と共に振り返った。

■漫☆画太郎さんの画力は栄養剤!

Q:松山さんは漫画家の漫☆画太郎さんファンなんですよね。

画太郎さんは唯一無二の存在で、僕にとっての栄養剤です! 心が疲れたときや気持ちが沈んだときに読むと、クスッと笑わせてくれます。その魅力は、画太郎さんの画を見れば、ひと目でわかっていただけると思います。

Q:今回は漫☆画太郎を敬愛する山口雄大監督と主演俳優のコラボ作になりました。

「珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~」というコアなファンの方がいる作品の実写化ということで、ビジュアルの再現度や物語の取捨選択などいろいろと正直プレッシャーはありました。30歳の男が、妖力を封印された後の山田太郎という子ザルの感じを出して演じるのは、普通に考えたら成立しないだろう、と。そこにあえて挑戦していくわけですから、かなり難しいなと思っていたんです。でも(監督の)雄大さんには明確な太郎のイメージがあったので、事前にいくつか指示を受けました。

Q:特に太郎と温水洋一さんふんする世界最強の武闘家、中村泰造とのアクションシーンは本格的でした。

違う映画を撮っているようですよね。温水さんがすごく動ける方なので驚きました。バトルシーンは映画『GANTZ』(2010)と『GANTZ:PERFECT ANSWER』(2011)でもお世話になった、アクション監督の園村健介さんにコーディネートしていただいて、ちゃんと自分たちでやりきりました。期間は数日間でしたけど夜通しで、動きはその場で教えていただいて撮りました。雄大さんは全編絵コンテを準備されていて、ほぼ絵コンテ通りに撮影されたと思います。そういえば酒場の乱闘シーンでは、「戦わないで軽々と倒して」という指示がありました。

■豪胆キャラは三船敏郎×植木等のイメージ

Q:前述の「監督が松山さんに課した山田太郎のイメージ」とは?

太郎の軸になったのは「野性味」と「無責任感」です。雄大さんは、僕が太郎を演じるのであれば、「映画『七人の侍』(1954)で俳優の三船敏郎さんが演じられていた菊千代(きくちよ)のイメージと、“無責任”シリーズの無責任男、植木等さんのイメージ」だとおっしゃって。菊千代は動物的で脳天気で、確かに猿っぽい。それに自分の歩いていく先は、なぜか成功の道ばかりっていう、そういう運を持っている人を目指しました。

Q:外見も変えましたよね?

やはり雄大さんが、「この作品の太郎が筋肉隆々だと気持ち悪い。プニプニさせて、おなかをポッコリと出してほしい」と。実は、ちょうど別の作品のために体を鍛えていたんですけど、撮影の前から腹筋を緩めて、おなかを突き出すようにしていました。あとは「太郎は毛がないイメージ」とおっしゃるので、全身の毛を剃りました。今はサラッと言ってますけど結構大変でした(笑)。外見はそれぐらいです。

Q:山田太郎役の「ココが手強かった!」を教えてください。

声のトーンでしょうか。これまで声のトーンに関してはあまりいじることなく、表情とか、歩き方とか、たたずまい等(を工夫すること)でキャラクターを表現してきましたから。今回はシーンごとにバラバラのトーンで話してみて「この感じはちょっと違うな」とか、アフレコまでずっと試行錯誤して。雄大さんとも相談して、これだ! というのを見つけるのに一番時間がかかりました。声のトーンや話す間(ま)は、演じる上でかなり大変な要素です。

■山口雄大監督は“映画の先生”!

Q:クランクイン&アップはどんな感じだったんですか?

昨年の4月中旬にクランクインして、最初のシーンは太郎が殴られて地面に倒れる場面でした。夜中の3時ぐらいに全裸で地面に横たわらなければいけなかったので寒かったし結構つらかったです。それで、クランクアップは韓国で迎えまして、打ち上げの食事会でおいしい焼肉を食べました。(太郎と闘う)たけし役のアイアム野田さんとも自由時間に一緒にご飯を食べに行きましたね。韓国には、僕が好きな冷麺のお店もあって、そこにも立ち寄ることができたので良かったです。

Q:山口監督とはオムニバス映画『ユメ十夜』(2007)に続いて2作目のタッグとなりますが、監督との関係はどんなものですか?

俳優として、もっともっと一緒にやりたい監督です。雄大さんは僕の映画の先生でもあります。『死霊のはらわた』シリーズでサム・ライミ監督の魅力を教えてくださったのも雄大さん。雄大さんが面白いと思う映画は、間違いなく僕も面白いと思って観られます。先日も本年度のアカデミー賞作品賞候補になったジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の爆音上映を、雄大さんたちと観ました。すごく見応えがありました!

■これ以上自分にできることはないと思えた

Q:台本から完成作を想像できましたか?

雄大さんから「物語の後半は『ドラゴンボール』のフリーザのようになっていく」と聞かされていたのですが撮影中はどういう画になるのかまったく想像できなかったです。自分が本当に太郎になれているのか、という点も半信半疑で。実際に完成作を観て、菊千代と無責任男だと自分が納得できたし、これ以上自分にできることはないと思えました。それに原作の世界観を踏襲しているので、『珍遊記』は小さなお子さんも楽しめて、ご家族で一緒に観られるファミリー映画でもあると思います。

Q:最後に、30歳にして本作と出会ったことを今どう受け止めていますか?

何事も巡り合わせだと思うので、この年でこの作品に出会うことには意味があることだと思います。それで、その意味を考えたときに僕は丸くなっちゃダメですよって言われている気がしたので、俳優としていつまでもチャレンジし続けたいです!

次回作の役づくりのために肉体改造(=増量)中であり巨体を動かすことにまだ慣れていないため、インタビュー中の会話でも息切れをしてしまうのだと明かし、悔しさをにじませた松山。そして「信頼できる人との仕事を増やしていきたい」と話す彼の言葉には、冒険心にあふれる本作も含め、信頼できる人とならばいかなる挑戦も可能にできるのだという心意気が含まれていたのだろう。真摯でひたむきに役に向き合う姿勢はやはり変わらない。

(C) 漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

映画『珍遊記』は2月27日より全国公開

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