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第88回アカデミー賞作品賞候補の8作品スゴイのはココ!<後編>

 第88回アカデミー賞授賞式まで1週間を切りました。(日本時間で2月29日)下馬評では『レヴェナント:蘇えりし者』が頭ひとつ抜きん出ていますが、それも直前で覆る可能性が高い魔物がいるアカデミー賞。作品賞にノミネートされた8作品は、数百本の劇場公開作品から絞られた名作ばかり。ノミネートされた作品のいったいどこが優れているのかをご紹介します。 (編集部:下村麻美)

壮大なスケールの自然が目に入らないほどディカプリオが200%のパワー放出!『レヴェナント:蘇えりし者』

ストーリーは単純すぎるほど単純で、作品賞ノミネート作品の中では、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と双璧をなします。一言で表現すると「復讐劇」。言ってしまえば個人の問題なのですが、ものすごく壮大な自然の中で、そのスケール感も凌駕するほどのレオナルド・ディカプリオの感情がそのまま観客に伝染する演技に誰がアカデミー賞をあげないと言えるでしょう! しかしマイナスポイントもあって、アレハンドロ・G・イニャリトゥは昨年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で、作品賞、監督賞を受賞しているだけに2年連続の受賞はアカデミー協会も避けるのではないかとの見方もあります。

『レヴェナント:蘇えりし者』
ディカプリオにはじまりディカプリオに終わる映画『レヴェナント:蘇えりし者』 (C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

スゴイのはココ!

襲ってくる熊の迫力がハンパない→この映画、何がスゴイかって熊が襲ってくるシーンがとてつもなく怖い! 特に40年前『グリズリー』を幼少期に観た大人たちは、潜在意識に熊の怖さが刻み込まれているので怖さが倍増することでしょう。熊もスゴイけど、ディカプリオの襲われっぷりが熊の怖さを倍増させているのは間違いなく、並の俳優だったらここまで怖くないかもしれません。

五感を刺激する!痛い!寒い!→第86回アカデミー賞で7冠に輝いた『ゼロ・グラビティ』は、まさに感覚で観る映画でしたが、『レヴェナント:蘇えりし者』もそれを上回る五感を刺激する映画です。アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の巧妙なカメラワークは、知らずのうちに脳を刺激します。血のにおいさえも感じるほどの痛さや、足の先が冷たくなるほどの寒さを体感できます。

やっぱりディカプリオ→そして、映画を観た人が口をそろえるのが「やっぱりディカプリオってすごい役者だね」。20年ちょっと前に映画『ギルバート・グレイプ』で助演男優賞に名前が挙がってから今日まで、幾度となくアカデミー賞からお呼びが掛かるもののいまだに無冠なのは、彼の演技のレベルが高すぎるだけに「まだまだもっとできる人だ」と誰もが思っているから。今作では「痛がる」「怒る」「悔しがる」「寒がる」負の感情をすべて持てる力200%で演じていて、賞を取るなら今でしょう!

『レヴェナント:蘇えりし者』日本公開4月22日 監督・脚本・製作: アレハンドロ・G・イニャリトゥ 出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ 配給:20世紀フォックス映画 上映時間:2時間37分 第88回アカデミー賞6部門ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、美術賞、編集賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞 

無名の役者二人のアカデミー賞級の演技に驚く『ルーム』

レイプされた男の子供を産み、その子供とともに監禁され続けるというあまりに悲惨すぎて、いままでにない設定にまずは衝撃を受けます。ほぼ無名の役者二人の演技力はパワーがあり、なんの先入観も持たずに映画を観た人の心も動かします。二人の何気ない視線、表情、動作……すべてが何かを語っていて『レヴェナント:蘇えりし者』同様、観客が体感し、感情移入する映画です。

『ルーム』
『ルーム』 この二人の一挙手一投足に注目 (C) ElementPictures / RoomProductionsInc / ChannelFourTelevisionCorporation2015

スゴイのはココ!

二人の無名の役者が神がかり演技→監禁され、はからずもママになってしまったブリー・ラーソンの子供を愛する表情と、子供を男から守るために、恐怖に包まれながらも運命をとりあえず受け入れるうつろな視線、そして適度に乱れた髪の毛など細部の演技が効いています。また、その息子を演じるジェイコブ・トレンブレイくんの天使のささやきのようなかわいらしい声や、柳楽優弥がカンヌで主演男優賞を受賞したときのような目力は、久々のハリウッド大物子役の誕生を予感させます。

原作者自ら脚本化→あまりに悲惨すぎて想像もつかない環境の中で生きる主人公が守り抜く人間の尊厳、そして部屋にたった一つの窓にはせる望郷の思い。心の動きを丁寧に積み重ね、そして、後半へのスピーディーでアクティブな脱出劇に繋げる脚本は原作者が自ら脚本化したことによってまるで、オーケストラが奏でる名演奏のようにドラマが変化していきます。

計算されたカメラワーク→小さな部屋は、母親にとってはきゅうくつな箱のような狭さ。でもこの部屋が世界のすべての小さなジャックには時には無限の広がりを持ちます。ジャックの視点カメラを手持ちカメラにするなど、カメラを繊細に使い分け二人の心理描写までもカメラが表現しました。

『ルーム』日本公開4月8日

監督:レニー・アブラハムソン 出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ 配給:ギャガ 上映時間:1時間58分 第88回アカデミー賞4部門ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞

脚本もすごいけど役者もすごい『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

映画は結末を言ってはいけないのが原則ですが、この映画はリーマンショックによる経済破綻という、最初からわかっている結末に向かって進んでいきます。そこがこの映画の面白さで、崩壊を目前に控えた市場で4人の人物がそれぞれの立場でそれぞれが利益をあげようと画策するマネーゲームは「空売り」「CDS」などという経済用語を理解した上でもう一度観ると1回目では味わえなかった緊張感が得られます。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 クリチャン・ベイルのドラム演奏は吹き替えなしのど迫力! (C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

スゴイのはココ!

突き抜けているキャラの個性 →トレーダーという職業は、結局は株オタク。独特の雰囲気があります。それを地で行くクリスチャン・ベイルの役づくりのオタクっぷりがまた突き抜けています。ドラムが趣味という設定の金融トレーダー役なのですが、なんでも撮影前に靭帯を痛めてかなりの激痛があったにもかかわらず、迫力のドラムシーンを吹き替えなしに自分でドラムを演奏したそうで……このエピソードに、金融トレーダーの役だから別にそこはそんなに頑張らなくても……と誰もがツッコミたくなるでしょう。 しかし、そのこだわりこそ“役者バカ”クリスチャン・ベイルにとってごくフツーのこと。並の役者がかなうはずがありません。

4人の欲がクロスオーバーする脚本→金融トレーダー(クリスチャン・ベイル)、銀行家(ライアン・ゴズリング)、ヘッジファンドマネージャー(スティーヴ・カレル)、投資家(ブラッド・ピット)、4人のキーマンが、サブプライム・ローンのデフォルト(債務不履行)に備え、最大限の利益と最小限の損を求め行う綱引きのバランスが出来のいいTVゲームのように緊張感と興奮をもたらします。誰か一人に偏ることもなく、バランスよくストーリーが組み立てられており客観的で知的な物語に仕上がっています。

硬派!飛び交う金融専門用語→「サブプライム・ローンのデフォルト」「クレジット・デフォルト・スワップ」など普段から経済新聞を読んでいないと理解できないような経済用語がバシバシ飛び出し、特に説明もないのですがこれが案外心地がいいのです。小馬鹿にしたような専門用語の解説は映画には不必要。「知的レベルを上げてから観にいらっしゃい」そういうメッセージですね。はい。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』日本公開3月4日 監督・脚本: アダム・マッケイ 出演:クリスチャン・ベイル、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット 配給:東和ピクチャーズ 上映時間:2時間10分 第88回アカデミー賞5部門ノミネート:作品賞、監督賞、助演男優賞、編集賞、脚色賞

50年代の等身大ファッションのクオリティーが高い『ブルックリン』

この映画がすてきなのはアメリカの50年代のファッションを堪能できること。完璧なコーディネートにオシャレ女子は目が釘付けになることでしょう。故郷のアイルランドを離れ、ニューヨークで働き始める賢く最初は垢抜けない少女が一人の女性として洗練され、自分の生きる場所を見つけるまでが描かれます。二人の男性の間で心が揺れ動いたり、現状の仕事に満足せず上を目指したりと、等身大の若者のあやうい青春時代が多くの若者の共感を呼ぶことは間違いありません。

『ブルックリン』
シアーシャ・ローナンのみずみずしさが最高に魅力的な『ブルックリン』 (C) 2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

スゴイのはここ

真似したい美しき50年代等身大ファッション→シアーシャ・ローナン演じるエイリシュのファッションは、今でいう流行に敏感なOLさんのファッション。淡い水色のカーディガンに白いブラウス、綿素材の黄色いワンピース、ワンポイントのサングラス、まとめ髪アレンジなどコーディネートもばっちりで、女性が普段着のお手本にしたいファッションです。6部門でノミネートされている『キャロル』も同じ1950年代のニューヨークが舞台ですが、ケイト・ブランシェット演じるキャロルのファッションはハイソ、ルーニー・マーラ演じるテレーズは地味目ということもあり、ファッションの共感度であれば『ブルックリン』に軍配が上がります。

どこにでもいそうでどこにもいない女性→田舎から都会へ出て来て、ホームシックにかかりながらも、今の仕事よりもう少しだけ上のレベルの仕事に就くため努力する。そして恋愛もオシャレにも好奇心旺盛で、友達と楽しく毎日を過ごす女性。そんなどこにでもいそうな等身大の女性を強烈と表現してもいいほどの瑞々しさで演じるシアーシャ・ローナン。どれだけ熱演しているかではなく、どだけ魅力的かという順序で主演女優賞を選ぶとしたら間違いなくシアーシャがその筆頭になるでしょう。

『ブルックリン』日本公開7月 監督: アジョン・クローリー 出演:シアーシャ・ローナン、ジュリー・ウォルターズ、ドーナル・グリーソン配給:20世紀フォックス映画 上映時間:1時間51分 第88回アカデミー賞3部門ノミネート:作品賞、監督賞、助演男優賞、編集賞、脚色賞

第88回アカデミー賞作品賞候補の8作品スゴイのはココ!<前編>

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