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リリー・フランキー&橋本愛
『シェル・コレクター』
「ワケわかんない」が最高の褒め言葉
『シェル・コレクター』リリー・フランキー&橋本愛 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:金井尭子

リリー・フランキーを主演に迎え、数々の文学賞を受賞したアメリカの作家アンソニー・ドーアの短編小説を映画化した『シェル・コレクター』。主人公は、妻子と離れて沖縄の離島で生活する盲目の貝類学者。猛毒を持つイモガイで偶然にも奇病を治してしまったことから、彼の静かな生活が変化していく。運命に翻弄される学者を演じたリリーと、イモガイによって奇跡の生還を果たす少女・嶌子を演じた橋本愛が、独創的な世界観を放つ本作について語った。

■観る人によって受け取り方が変わる作品

Q:感覚的で、人によって受け取り方が変わりそうな作品ですね。

リリー・フランキー(以下、リリー):最初の試写のときって拍手が沸くものだけど、この映画は終わった後はみんなシーンとしていましたからね(笑)。(本作のメガホンを取った)坪田義史監督はいろいろなメッセージを込めたと思うのですが、それが物語の中でつながっているのか、点描としてあるのか、その人の観方次第という作品ではあります。

橋本愛(以下、橋本):わかりづらい部分もあるけど、映像が美しくて、とにかく音がいいと思いました。風が強く吹いているときにボソッとつぶやくセリフなども、迫力があって。わたしは声が小さいので、音声さんがしっかり拾ってくれてうれしかったです(笑)。

リリー:俺と愛ちゃんのぼそぼそ声は、ハンパなく小さいですからね(笑)。

Q:本作のオファーを受けたとき、迷いなどはありませんでしたか?

リリー:自分が受けるかどうかよりも先に、自主制作ではなく商業映画として本当に成立するのかなと思いました(笑)。でも、俺が断ったらピエール瀧が出そうだなと思って。もしくはマキタスポーツが出そうなんで、自分がやっておかないといけないな、と(笑)。こんな“低温のお祭り”もいいなと思ったんですよ。大騒ぎしないお祭りみたいな作品だったので、こういうのには出たいなって。

橋本:わたしも、このような作品が成立するのは、難しいのではないかと思いました。でも、お話をいただいて、わたしにできるのならば参加したいという気持ちがありましたし、その時点でリリーさんと池松壮亮さんの出演が決まっていたので、ぜひご一緒したいと思いました。

■橋本愛の包容力に脱帽!

Q:厭世的な生活を送り、やがて自然と対峙することになる盲目の貝類学者。どのように役作りをされたのですか?

リリー:盲目の方に先生になっていただき、いろいろと教えてもらいながら、コンタクトレンズを入れることで視界をぼやかして、ほとんど見えない状態でやりました。コンタクトを生まれて初めて入れたのですが、ずっと浜で撮影をしているから砂が入ってきて、撮影が終わって視力が落ちましたね。僕が演じた貝類学者はわずらわしいものから逃げている人。でも、人は結局、単純にひとりで逃げることはできない。その意味では、現実世界にもいるような普通のオジサンだと思う。でも、愛ちゃんの演じた嶌子は、ちょっと浮世離れしているよね。宇宙から来た女の子、と言ってもいいくらい(笑)。

橋本:そうですね(笑)。

Q:嶌子は巫女的な雰囲気を持つ少女ですが、坪田監督と役の解釈について話し合われましたか?

橋本:監督とは、そんなに話し合ってはいないんです。学者を希望の光に導く役、というお話くらいですね。嶌子に関しては、人間としての描写がほぼなくて、学者にとっての現実なのか幻想なのかも曖昧です。脚本の前に原作を読みましたが、原作では彼女の気持ちも描写されていたので、それを参考にした部分はあります。作品に参加する上で、画面に映らないとしても、何かを前提に持っていたかった。現実離れしているようなキャラクターだからこそ、演じるときは地に足をつけていたかったんです。学者との関係も、人と人として向き合えるように準備はしました。ただ、監督の中の女神であり幻想でもあるような気がしたので、ファンタジー的な見え方の方が濃厚かもしれません。

Q:本作で共演されて、お互いに改めて感じたことはありましたか?

橋本:リリーさんは、本当に目が見えない方のように、かつ、わたしの見ている限りですが、さらっと流れるように演じられるんです。本当にすごいと思いました。リリーさんが相手だと、肩の力を抜いてお芝居ができるんです。

リリー:愛ちゃんはね、受け入れてくれるような芝居をするんです。前からそうでしたが、さらに包容力がアップしましたね。だから、どんな役でも説得力があるし、愛ちゃんがいると安心する。10代(撮影当時)でこの包容力と説得力。本当に稀有な女優さんです。生まれ持ったものなのでしょうね。この役でも他の役でも、本人の中のどこかがにじんでいる感じがします。今回は、いい感じに浮世離れした橋本愛の面妖さが出ているんじゃないですかね。だって、強風が吹く断崖絶壁があんなに似合う10代っていないでしょ(笑)。

橋本:(照れ笑い)。

■沖縄の島で感じたさまざまな因果

Q:ロケ地となった沖縄・渡嘉敷島の美しい海が強く印象に残ります。撮影はいかがでしたか?

リリー:みんな泊まりで来ていたので、監督やキャストたちと映画のことをゆっくり話す時間があって、よかったですね。その島には遅くまでやっている店が1軒しかないので、自然にみんなが集まってくるんです。スタッフさんともコミュニケーションが取れました。

橋本:わたしが夕食をとって部屋に戻ろうとしたら、宿の1階でスタッフさんたちが撮影の打ち合わせをしていたんです。例えば、東京だったらスタッフルームでやるでしょうから、そんな光景を見る機会はないんですよね。オープンな雰囲気があって、いいなあと思いました。

リリー:店が1軒しかなくてもなんとかなるし、パソコンを持っていかなかったから、なきゃないでどうにかなるなと思いましたね。と同時に、この映画の学者がしている生活も彼の理想なのだろうけど、いざ始めてみると人恋しくなったりもするわけで、いろいろな因果を感じました。モノを失くそうとしたのに、失くしても、結局は人に絡め取られるとか、自分が求めてしまうとか。

Q:確かに、いろいろなことを感じ取れる作品だと思いました。

橋本:人を選びますよね。

リリー:そう。でも、人を選ぶからこそ、この映画はいいのかもしれない。なんか変な映画を観たなっていう、10代の記憶って大事だと思うんです。石井輝男監督の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』とか、『エル・トポ』(アレハンドロ・ホドロフスキー監督)を観たときの「うわ、なんか変!」っていう。そういった作品を若い頃に観ると、観る映画に幅ができると思うんです。“泣ける”とか“犯人が誰”とかがエンタメ大作なのだとすれば、それ以外の映画もあるわけで。観た後に「ワケわかんない」って言われるのが最高の褒め言葉じゃないですかね。映像がどんどん体の中に入っていってくれれば、それでいいんです。

軽やかでしなやかな、パブリックイメージ通りの大人の男を感じさせるリリーと、少女のごとく繊細でありながら、母のような包容力も併せ持つ橋本。そんな二人に加え、寺島しのぶ、池松壮亮といった演技派が揃う本作。取材の最後にリリーがつぶやいた、「この映画の中で起きていることって、人が勝手に思い込んでいる観念のズレなんじゃないですかね」との言葉にビビッときた人、なんかわかんないけどスゴイものを観たい人は、坪田監督の豊かなイマジネーションに共鳴してしまうはずだ。

(C) 2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

映画『シェル・コレクター』は2月27日よりテアトル新宿、沖縄・桜坂劇場ほか全国公開

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