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『ヒメアノ~ル』森田剛インタビュー

「行け! 稲中卓球部」「ヒミズ」などで知られる古谷実の禁断の同名のコミックを、『銀の匙 Silver Spoon』『麦子さんと』などの吉田恵輔監督が映画化した『ヒメアノ~ル』。ビル清掃会社で働く青年・岡田(濱田岳)と先輩の安藤(ムロツヨシ)とカフェ店員ユカ(佐津川愛美)によるピュアな恋物語が、戦慄のサイコ・サスペンスに一変する本作はその過激過ぎる内容故に実写化不可能と言われていたもの。その問題作で狂気の連続殺人鬼・森田を怪演した森田剛が、普通とはちょっと違う撮影を振り返った。

その瞬間瞬間を普通に生きてした

Q:完成した作品を観てどう思いましたか?

濱田(岳)くんたちのシーンは楽しそうでいいなって思いました(笑)。でも、みんな癖のある役で、いろいろな目線で見られるし、僕の演じた森田の登場で彼らの世界も森田色に染まっていく過程はドキドキしました。撮影時は、僕はただ歩いていただけで、それがどう使われるのかわからなかったんですが、作品を観て「なるほど。吉田監督、すごい!」って思いました。

Q:作品の気持ち悪さには貢献できました?

森田は殺人鬼だけど、別に強烈なキャラクターでもないし、どこにでもいそうなヤツです。でも、その普通なヤツに普通の人たちが染まっていくのをサラッと見せるなかなか珍しい映画だと思いますし、染まっていく感じが怖いですよね。

『ヒメアノ~ル』
『ヒメアノ~ル』より

Q:森田に人を殺すはっきりとした動機がないから余計に怖さを感じたんですけど、そこは何か意識されたんでしょうか?

“やってます”という感じを出さないようにしました。監督が「人間なんて何を考えているのか自分でもわからないし、いま考えていたこともすぐ忘れちゃうぐらい集中力が持たない。さっきまで殺していた人も普通にメシを食うし、それが普通だと思う」っておっしゃったんです。だからたとえば、アパートで人を殺した前日のシーンはなるべく引きずらないようにしていましたし、後に控えている撮影のこともなるべく考えずに、その瞬間瞬間を普通に生きることに集中しました。でも、普通は起こった出来事は何かしらその人に影響を与えると思うので、影響されないようにするのは難しかったですね。初めての経験でした。

Q:やっていくうちに出来るようになったんでしょうか?

どうなんですかね。ただ、人を殺めているところを第三者に見られたときって険しい表情をしたくなると思うんですけど、なるべく関係ない表情をするようにしました。普通にお店に入っていって、「今日、やってますか?」みたいな感じで人を殺すというか、そういう気持ち悪さが出ればいいなと思ったし、普通の人だったら、「あっ、これ以上やったら危ないな」っていうところも、森田はわからないというか。ストップがきかない危なさを、監督も計算されていたと思います。

演技に活かされた蜷川幸雄の言葉

Q:殺人鬼の役に挑戦するのは危険だなという意識はありましたか?

まったくないですね。森田がなぜ人を殺すのかがわからない不安もなかったですし、逆にわからないことをやる方が楽しいというか。ただ、本気でしたね。本気でやらなきゃ殺せないというのはわかったし、監督から「躊躇する気持ちを限りなく無視して、本気でやって欲しい」というのがすごく伝わってきたので、僕も襲われる人もそこは芝居だけど、本気でいきました。

Q:舞台でも葛藤している人物を演じられることが多いと思うんですけど、その経験が活かされるようなことはありましたか?

蜷川幸雄さんの舞台で首吊り自殺した人間と会話をするシーンがあったんですけど、その稽古で蜷川さんが「俺はこういうときはハエが見えるんだ。ハエが頭の中を通って、それを取り払いながら人としゃべっていた」みたいな話をしてくれたことがあって。その言葉を、この現場で人を殺すときに思い出しました。僕もこういう役が多いから、そういう免疫がついていたんですよね(笑)。だから、森田を演じることに対するためらいもまったくなかったんです。

Q:殺される側を演じた方々とはどんな接し方をされましたか?

普通でしたよ。一緒に並んで座っていても黙る時間や集中する時間が多かったんですけど、逆に一人の世界になるべく入らないようにしていましたからね。だんだん人と目を合わせたくなくなるんですよね。下を向きたくなるんです。だから、ちゃんと前を見て、人と目を合わせて。その方が、森田を普通の人として演じるためにもいいことだと思っていました。

芝居がどんどん好きになっている

Q:一番印象に残っているシーンはありますか?

やっぱりラストですね。台本を読んだときもラストのセリフを言いたいなって思ったし、そこに合わせてみんなが一つになっているとところがありましたからね。

Q:ところで、森田さんの中には、ジャニーズであることと俳優として活躍することの線引きみたいなものはありますか?

ないです。誤解を恐れずに言うと、舞台をやっているときも、お客さんは楽しんでいるんだろうか? とか、どう思っているんだろう? ということは考えず、演じている僕たちが楽しくて、演出家の方が喜んでくれればいい。それだけなんです。

Q:では、今回も原作ファンや映画ファンの反応は怖くない?

はい。自信を持って「映画はこうなりました」ということは言えますからね。

『ヒメアノ~ル』
『ヒメアノ~ル』より

Q:年齢を重ねて役者としての自分の変化や、演じることの面白さの部分で変わってきたところはありますか?

経験の部分が大きいと思うんですけど、お芝居がどんどん好きになっていっていて、楽しいなって感じるようになりました。それは二十代の頃にはあまりなかった感覚です。

Q:森田さんは演じることのどんなところに面白さや刺激を感じられるんですか?

いろいろなものを解放して自由になれるんです。特に舞台は立ち位置も決まっていて、決め事も多いんですけど、その中で自由になれる瞬間があって。そのときに、楽しいなって思うんです。   

取材後記

決して口数が多くない森田剛にはどこか世間を拒絶している雰囲気が漂い、彼が演じた森田と重ねてしまいそうになった。だが、真摯(しんし)に自分の思いを伝えるその言葉からは、芝居に本気で惚れ込んでいる純粋な魂がストレートに伝わってきた。映画『ヒメアノ~ル』には、そんな森田剛の“生”そのものが鮮烈に焼きつけられている。(取材・文:イソガイマサト)

映画『ヒメアノ~ル』は5月28日よりTOHOシネマズ新宿ほか全国公開

©2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

『ヒメアノ~ル』オフィシャルサイトはこちら>

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