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阿部サダヲ&瑛太
『殿、利息でござる!』
芝居の正解を自分で決めつけちゃいけない
『殿、利息でござる!』阿部サダヲ&瑛太 単独インタビュー

取材・文:浅見祥子 写真:尾藤能暢

江戸時代、重い年貢に疲弊する宿場町で、とある庶民の脳裏に身の程知らずな知恵がひらめく。お上に金を貸し、その利息で町を救おう! 計画がバレたら即打ち首、それでも十三郎と篤平治は仲間を募って千両(3億円)をかき集める……ただ、町のために。質の高い娯楽作を連打する中村義洋監督の新作映画『殿、利息でござる!』で、十三郎と篤平治として阿部サダヲと瑛太が共演。意外と“策士”な(?)中村監督の演出とお互いの印象について語った。

■実話もビックリなエンタメ時代劇

Q:最初にこの物語に触れたときどう思いましたか?

阿部サダヲ(以下、阿部):実話というのはビックリしました。僕は知らなかったし、そもそもこれを成し遂げた旦那衆は“つつしみの掟”で「口外しない」という取り決めをしていたので、誰かが知っていちゃいけない話なんですよね(笑)。原作の前に台本を読んだのですが、こういう人たちがいたんだ! 格好いいなというのが最初の印象でした。

瑛太:僕は本当に篤平治さんが発案したのかな? って思いました。

阿部:(笑)。

瑛太:自称“知恵者”だけど、どこかトボけたところがあって。そんな人がお上にお金を貸して利息をいただくなんて大それた発案をしたんだ! と。自分が演じる上で責任重大だなと思いましたね。

Q:脚色はかなり技アリ! ですよね?

阿部:実話をそのまま脚本にしたらシンプルなセミドキュメントになっちゃったかもしれないけど、そこに十三郎とその息子のドラマをプラスしたり、物語として面白くなっているし、とても観やすくなっていると思います。

Q:篤平治は原作とは違ってよりお調子者のキャラに?

瑛太:そうなんですよ。でも監督には「瑛太のままで演じてくれ」と言われ、最初は混乱しちゃって。しかも「瑛太」じゃなく、監督は僕のことを「えぃた」って呼ぶんです。

阿部:(笑)。

瑛太:それで僕はいろいろと厳しく演出を受けたんですよね。なんていうか……何年か俳優を続けてきて、ある程度はできるだろうという感じに自分も周囲も、なんとなくなっていたところがあります。現場へ行っても「はいじゃあやって」と撮影して「お疲れ様でした」と帰る。でもこの作品は初日から追い込まれたので原点回帰できたというか。お芝居に正解はないし、自分で決めつけちゃいけないんだと改めて思ったんですよね。

Q:十三郎は根深いドラマを抱えています。父と弟との葛藤をどのように感じながら演じましたか?

阿部:前半は、なぜ十三郎は死んでもいいみたいな無茶なことしかやらないのか? ということをお客さんからいかに想像してもらうかを考えました。そのくせ後を「えぃた」に任せてスネていなくなっちゃうって、なんなんだろうこの人? って(笑)。最初は、大丈夫かな? と思われるくらいで、ストーリーが進んでその理由が明かされたときに、だからそうなのか! と思っていただければいいなと。それで台本を読んだときはまさに父親と弟との関係が一番グッときたんですよね。その葛藤を感じながら演じたのは後半になってからでした。

Q:瑛太さんは台本からイメージしたものと監督の求めるものと、ギャップがあったということでしょうか?

瑛太:そんなに大きなズレがあったわけではないと思うんです。後になってから思ったのですが、監督はこの現場は簡単にはいかないぞということを示したかったんじゃないかと。だって『アヒルと鴨のコインロッカー』のときは優しくていつも笑顔で。「すごくいい、オッケー!」という感じでどんどん進んでいったんです。それが今回は初日から馬をひかなきゃいけないし、馬に踏まれて足が痛くなっちゃうしで、僕はずっと困惑していました。でも出来た映画を観たときに、なんとかしなきゃ! と突き進むのが篤平治で、僕をそうした状態に持っていこうとした演出だったのかなと。わざと気持ち良くさせないというか。でも一方で監督は阿部さんには、小声でこしょこしょっとしゃべって笑ったりしてとても仲良さそうにやっているんです。僕には急に難しいセリフを与えたり、すっごく厳しいのに(笑)。

阿部:今回僕は大丈夫でしたけど、確かに瑛太君は早めに現場に入ってそろばんの稽古とかしてましたよね……(笑)。

■粘り強さが求められる中村監督の演出

Q:『奇跡のリンゴ』で主役として演出を受けた経験があると、中村監督の求めるお芝居のテンポや感覚がわかるものですか?

阿部:どうですかね……同じ年というのもあるかもしれません。監督は普段しゃべっているときも面白いことばかり言うので、そのときの間でこういう笑いの取り方をする人なんだとわかりますよね。でも僕も『奇跡のリンゴ』のときは厳しく演出を受けたこともありましたよ。辛い状況にある役で、笑っちゃいけなくて。今回も途中から苦悩するようになりますが、ポイントのときは監督が急に怖い目になって「もっとつらかったんじゃないかな、十三郎は」と耳元でこそこそって(笑)。1回でOKが出ることはあまりないし。

瑛太:そうですね。篤平治が「お上に金を貸す」というアイデアを思いつく場面も大変でした。

阿部:何回もやったね。

瑛太:夜中までやって、疲れて最後の方はセリフも言えなくなっちゃって。中村組の現場って果てしない感じがするんですよ。同じカットを何十回もやって結局、朝方になって。1カットだけ出番のある阿部さんがず~っと待っていたんですけど朝日が昇って。「そこは後日に」って。

阿部:「(モノマネ風に)朝になっちゃったね!」って(笑)。

■阿部サダヲはジョニデを超えた!?

Q:一緒にお芝居をする相手としてお互いの印象は?

阿部:舞台「逆鱗」もそうでしたが、僕は一緒にやっていて心地いいというか楽なんですよね。いい意味で、気を使わないでお芝居ができるというか。事前に「こうしたらいいんじゃないか?」と話し合うのは、その時点で二人が役者同士の関係性になっていますよね。そうではなく、自然に篤平治と十三郎の関係性でいられました。

Q:以前瑛太さんは「阿部さんのようになりたい。共演できるならどんな役でもいい」とおっしゃっていましたが?

瑛太:そんなことを言ってましたか(笑)でも……そりゃあもう言葉にならないくらいに好きですよ。「逆鱗」のときはず~っと楽屋も一緒で。最後の北九州のときだけ楽屋が別だったんですけど、やっぱり調子が悪かったです。

阿部:ほとんど一緒にいなかったじゃない(笑)。

瑛太:本番前って僕はちょっとナーバスになったりするんですけど、そういうのを吹き飛ばしてもらえました。それに、この世界で阿部さんは誰もマネできないものを作り上げていますよね。俳優としても人間としてもそうで、マネしようとしても絶対にバレます。ジョニー・デップのマネをしたらバレるのと同じですよ。阿部さんの生き様というのは……“誰もマネしてはならない”。

阿部:なにかの掟ですかね(笑)。

瑛太:それと萱場という藩の役人を演じる(松田)龍平を見て、新たな凄味を感じました。役を自分に寄せるタイプだと思うのですが、龍平が初めて自分を突き放したというか、自分から役に寄り添っていった。1シーンだけ一緒でしたが、そのエネルギーが伝わってきて素晴らしいなと。映画の中でちゃんと異質なものとして存在していたので、「本当に不気味だった」と伝えたのですが、上手く伝えられなくて。何度も繰り返すうちに怒られちゃいました。

阿部:あのシーンは僕もとても印象に残りました。お芝居への向き合い方が格好いいなって。

Q:出来た映画を観た感想は?

阿部:とても観やすい!! と思ったし、長さもちょうどいいなと。それに主要な登場人物だけでなく、人足さんたちもそれぞれに見せ場があって活躍しているのもいいですよね。見終えた後にはいい気持ちになりました。

瑛太:僕は今回、自分の中の達成感みたいなものが正直言ってなかったんです。もちろん一生懸命にやったけど、本当にこれでよかったのかな? という感覚のままクランクアップしてしまって。でも出来上がりを観て、監督のおっしゃることが正解……というのではないかもしれないけど、「ああ!」と思ったんです。もちろん反省点はたくさんありますが、苦しいと思いながらも流されてしまう篤平治というのが現場にいたときの自分の心理状況と重なって。そういうことだったんだなと思いました。

弾けた演技が印象的な阿部サダヲと、劇中では“ややお調子モノの知恵者”という役柄をカラっと演じた瑛太。そんな二人が素顔に戻ると、全体にとてもテンションが低い。それはもちろん不機嫌なのではなく、阿部のぽそっとこぼす一言がツボをついていたり、瑛太独特の視点から繰り出す言葉がクスっと笑えたりして、そこには心地いい時間が流れる。この“ヘンに気を使わなくていい、人としての相性のよさ”は画面からも確実に伝わるはずだ。

映画『殿、利息でござる!』は5月14日より全国公開

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