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柳楽優弥&菅田将暉
『ディストラクション・ベイビーズ』
暴力描写のもっと奥にさらにディープなメッセージがある
『ディストラクション・ベイビーズ』柳楽優弥&菅田将暉 単独インタビュー

取材・文:高山亜紀 写真:吉岡希鼓斗

見知らぬ人にいきなり殴りかかり、倒れても、倒されても、ストリートファイトし続ける泰良。そんな彼に魅せられた高校生、裕也。互いに相棒を得たことで、彼らの暴力はリミットを超えて、加速し続けていく。真利子哲也監督の商業映画デビュー作『ディストラクション・ベイビーズ』で共演した柳楽優弥と菅田将暉。共演作は複数あるが、がっつり組むのはほぼ初。ほとんど全編、けんかしっぱなしという衝撃作品の刺激的な現場を振り返る。

■最初はみんな不安の塊だった

Q:共演作はありましたが、ここまで対峙(たいじ)して芝居をするのは初めてですよね。お互いにどんなイメージでしたか。

菅田将暉(以下、菅田):勝手に30代ぐらいだと思ってたんです。で、お会いして、お話してみたら、「3つしか年齢が変わらないんだ」という衝撃があり、「でかいな」って感じた記憶があります。

柳楽優弥(以下、柳楽):共演は何回かしているので、特にイメージはなかったですね。ただ、(演技が)うまいなとは思っていました。今回は中盤以降、二人で一緒のシーンが多かったので、そういう面ではとても心強かったです。他の人と比べて、圧倒的に場数を踏んでいる。そういうキャストが現場に一人いると、みんなには安心材料の一つでもあります。

Q:柳楽さんは全編、ほとんどせりふがありませんが、どんな脚本だったんですか。読んだときはどう思いましたか。

柳楽:そうなんです。台本だけじゃイメージできない感じなんです。みんなで話していたのが、「どういう作品になるのか、初号試写で観てみないとわからないね」ということでした。

Q:不安にならなかったですか。

柳楽:不安の塊です。それは僕だけじゃなく、みんなも絶対そう。また、監督が口数が多くて「しっかり説明します」というタイプではないので、そこからは駆け引きでした。僕の場合、「なんでけんかするんですか」って聞いても、「『楽しければええけん』(泰良のせりふ)なんです」としか言わない。5回聞いて、5回そう返って来るので、6回目はさすがに「しつこいかな」って思っちゃって、聞かないですよね。だからもう、開き直るというか(笑)。でも、全然、嫌じゃない。こっちとしては、それぐらい折れない信頼できる監督についていくってことですから。

■エンターテインメントなアクションじゃない

Q:逆に菅田さんはずっとしゃべっている役でしたが、あれはアドリブもあったんですか。

菅田:いや、ほぼ100%台本通りです。最初、台本を読んだときは、真利子監督的にどんなことをそのシーンで求めているのかということが本当にわからなくて。僕の頭がどうしても熱量の出所みたいなものを求めてしまうんですけど、そこは考え過ぎてもまた違うんだなっていう現場でした。やってみると、泰良との出会いのシーンでいえば、彼の圧倒的な怖さと絶大な力というものが、何か大きいことをしたいと思っている裕也としては光に見える。この人のそばにいたい。そこで自分も大きくなった気になっていくというところなどはわかります。

Q:どうして泰良がけんかし続けるのか。最後まで説明はありませんが、柳楽さんは演じていて、わかったことはありましたか。

柳楽:いや、完成するまでわからないです。僕のなかでの現場でのボーダーラインは監督がOKか、そうじゃないか。すごいセンスのいい方なので、監督のOKは絶対的に信用できる。主演と監督が信頼関係を築けているかどうかはとても大事なことなんです。年齢も離れているわけでもないし、監督にとってはこれが商業作品1本目。そういう状況だからこそ、二人で力を合わせないと。まだほかのキャストが決まっていない段階で、二人の中に信頼関係が築けたのはラッキーでした。

Q:けんかのシーンは振り付けが決まっていたんですか。

柳楽:はい。『クローズEXPLODE』みたいなエンターテインメントなアクションじゃないし、ストリートファイトを目指しているから、本当に練習しないと自然に見えないんですよ。事前に割とハードな練習をしました。たぶんもっとかっこよく描いて撮る方法はいくらでもあると思うんですけど、あえてそこを引きで、一連でというチャレンジが僕は大好きです。

■撮影中、鍛えてもないのに、シックスパックになった

Q:劇中、どんどん顔が変わってきましたよね。

柳楽:体もそうですよ。ジムで鍛えてもないのに、(腹筋が)シックスパックになったんです。いくら演技といっても、ずっとけんかして動いているので、痩せますよね。すごく体が動きやすくなりました。

Q:撮影期間中はどんなふうに過ごしていたんですか。ずっと高揚したままではいられないですよね?

柳楽:あまりに日常的ではないことなので、切り替えできますね。だからって、撮影していない間、ぬるくなっているわけではなくて、みんなと酒を飲みに行くとかは控えていました。仲良くというより、役柄を意識した感じでいられて、すごくよかったです。オールロケで順撮りという好条件で、みんな集中していられる現場でした。

菅田:カメラが回っているときとそうじゃないときの違いはもちろんありますけど、あんまりオフがあったような印象はないです。撮影が終わったら、ホテルに帰って休んで、次の日また撮影というような現場でした。確かに柳楽くんともご飯行ってないし、あんまり普段から楽しさを求めるようなテンションの感じでもなかったので、今回はそういうことなのかなって思ってました。

■本当にうわっとなる生々しさがある

Q:完成した作品は脚本を読んだときのイメージとは違いましたか。

菅田:「おおっ、かっこいいー!」という感情とともに、本当に「うわっ」となる生々しさがあった。台本と現場ではわからないことがいっぱいあったんですけど、試写を観たときに「ああ、現場で狙ってたものはそういうことだったのか」ということが、少し見えました。

柳楽:うれしかったです! 暴力描写、多いんですよ。だけど暴力描写のもっと奥に映画として、真利子監督が伝えたかったさらにディープなものがある。共演者に池松(壮亮)さんとか、主役級の人もたくさん加わってる中、こういうチャレンジをしている。内容に関してはもちろん得意じゃない人もいるかもしれないですけど、これを劇場で公開することが面白いし、意味があると思う。この作品は数年後、10年後とかにしっかり育っていくんだろうなって気がします。そこに加われたってことは光栄ですし、そうなったら改めて感謝するんだろうな。

Q:菅田さんのヘアスタイルが話題になっていましたが、ファンの人にとってはショッキングな映画でしょうね。

菅田:衣装合わせが長かったんですよ。3、4時間くらい。高校生役の周りの役者さんたちは金髪なんで、最初は同じように金髪にするかっていう話もあったんですけど、いわゆるわかりやすい不良で、しかもあんまり強くない。「ツッパッてるやつらとは違う雰囲気を出せればいいね」ってことで、あれになりました。どういう流れでもいいので、話題になってくれたらうれしいです。

柳楽:菅田くんのファンの方が観たら、きっとショックを受けますよね。みんな、ちょっと刺激的な演技をしているから。でも、菅田くんがやっているわけではないから、そこは安心してください(笑)。

菅田:なんかほんと、これを観て奮い立ってくれたらいいなぁ。

柳楽:ドラマチックではないので、わかりやすくはないですが、久々に映画を観て、考えたいって人にはいいかも。映画を好きな人はたぶん好きでしょう。「最近、女子高生の映画ばっかだな」って方には、もうちょっとディープな作品を観るきっかけになるかもしれない。映画に関わる身としては、この作品が観る映画の幅を広げるきっかけになってもらえたら、うれしいです。

柳楽出演のドラマ「ゆとりですがなにか」の話で盛り上がっていた二人。菅田も出演ドラマが放送中。二人とも出演作が途切れることのない超売れっ子にも関わらず、時間を見つけては人の芝居や作品を観ることを欠かさない。映像も仕事も大好きな、眼力のある二人が認めた真利子哲也監督の才能。彼らが徹底して身を委ねたからこそ、いまの日本映画に一石を投じる問題作が出来上がった。映画は信頼関係。二人の言葉に納得の仕上がりだ。

映画『ディストラクション・ベイビーズ』は5月21日より全国公開

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