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又吉「火花」ドラマは世界で戦える驚きの映画クオリティー

 Netflixオリジナルドラマ「火花」は日本ドラマの新たな門出にもなるのではないだろうか。芥川賞を受賞したピース・又吉直樹による原作小説を初めて映像化した本作は、ドラマという枠組みを超え1本の映画と呼ぶにふさわしいクオリティーを見せつけた。ハリウッド大作のようにド派手な爆発やアクションがあるわけではない。だが、原作小説にある会話の妙、東京の空気をそのまま切り取ったようなあざやかな質感、タイミングが完璧なBGMと心地よいテンポ……それらをあえてフィルムで撮った映像美は驚くほどのクオリティーだ。この類い希なる映像美は、4KとHDでも堪能できるが、大型テレビを持っていなくともそのクオリティーは映像から十分伝わる。各国の良質な作品が並ぶNetflixという舞台で十分に戦っていく力を持つ映画並の品質であると断言していい一作だ。(編集部・井本早紀)

■ドラマと映画の手法が入り交じる<演出>

 ドラマ「火花」は、監督が話ごとに変わる海外ドラマでは主流のリレー形式で撮影され、日活ロマンポルノも共に経験した監督・脚本家コンビ、廣木隆一加藤正人(代表作:『だいじょうぶ3組』)が全体の舵を取った。ほかの監督陣は『南極料理人』の沖田修一監督、『凶悪』の白石和彌監督、『羊をかぞえる。』の毛利安孝監督、『白鳥麗子でございます!THE MOVIE』の久万真路監督。廣木監督含め全員ドラマ・映画の経験者だ。

 劇中では即座に状況を飲み込みやすい説明的なカットから、言葉ではなくイメージだけで勝負する挑戦的なカットなどドラマと映画の演出方法が入り交じる。これにより独自の映像世界を構築。それでいて登場人物同士の会話劇で原作の雰囲気を継承した「笑い」の要素をうまく挟み込み、芸術性とエンタメ性を両立した作品となった。

■美しく残酷な男たちの青春<物語>

火花

 「火花」は、若手芸人の徳永(林遣都)と彼を弟子に取った売れない芸人・神谷(波岡一喜)の物語だ。徳永は周囲からどのように言われようとも、神谷のセンスを疑わずに師の伝記を書き続ける。しかし彼らは相反するように、徳永は少しずつ芸人として売れていき、神谷は少しずつおちぶれていく。金はない。売れたい。ちっちゃいプライドを守りたい。やりきれないけど、バカみたいに笑う。

 白石監督は同作のストーリーについて、「たとえ残酷な未来が待っているとしても、日常そのものは豊かで、生きていくこと自体が美しい」と表現している。その通り、徳永と神谷に待ち受けている未来は残酷だ。けれども全10話約9時間の20歳を過ぎた男たちのお笑い青春物語で印象的なのは、切なさを隠すようなまぶしい笑顔なのだ。

■タブーや制限を恐れない<贅沢さ>

 またドラマ「火花」では、テレビドラマとしては考えられないさまざまな表現方法が用いられている。例えば徳永と神谷が酔っぱらって夜の街を延々と歩き続ける場面は、約3分の長回しを含めてなんと7分間もある。スピーディーな展開が求められるテレビドラマや2時間の映画ではなかなかできない贅沢な時間の使い方だ。

 しかしこの7分間は、ふざけながら前を歩く神谷と真面目に返答しながら先輩に続く徳永という二人の関係性を的確に表しており、非常に味わい深い。全10話一挙配信し、全てを一つの作品として考えるNetflixだからこそ表現できた深みだといえよう。

 さらに喫煙シーンもエロチックなネタの表現に関しても映画並で、監督たちは面白いと思うことや手法をタブーなしでそれぞれの演出回に反映させている。

■原作にはない新要素で深みと感動が増した<ラスト>

火花

 そしてこのドラマは、すでに本を読んだ状態でも楽しめる。主人公の一人称で描かれた本と照らし合わせながら見ると、徳永が下す決断の重みをより感じることができるし、原作にはないシーンの追加で、徳永以外の登場人物たちの背景が掘り下げられ、特に徳永の相方・山下(好井まさお)の存在が色濃くなっている。

 ラスト1時間にたどり着いたときには涙腺が刺激される感動が待っている。純文学を地で行く原作を敬遠していた人であれば、むしろドラマから観ることをオススメしたい。ただ「又吉 ドラマ 火花 感想 ネタバレ」と検索して、文字だけで満足するのは非常にもったいない。本当にもったいない。最後に一言。エンディング曲の「BROTHER」(OKAMOTO'S)最高すぎだろ!!

Netflixオリジナルドラマ「火花」は6月3日より世界190か国で全10話一挙配信

ドラマ「火花」オフィシャルサイト

(C)2016YDクリエイション

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