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追悼-プリンスと4本の映画 vol.2 傑作ライブ映画~早過ぎたスピリチュアル映画編

『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』1987年

画像テキスト
バンドメンバーも豪華な『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』

プリンスのライブ映画が素晴らしくないワケがない

 前回、追悼-プリンスと4本の映画 vol.1で、『プリンス/パープル・レイン』(1984)『プリンス/アンダー・ザ・チェリー・ムーン』(1986)をご紹介しましたが、続きまして劇場用映画3本目。『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』(1987)。自分の強みはやっぱり音楽とパフォーマンスと思ったのか、ライブ映画を制作、監督。ステージは「とにかくレコードより良く聴かせることだ」というのがプリンスのモットーでした。その大部分を収録したんだから素晴らしくないワケがない。イントロのちょっとした寸劇の後、プログラミングのビートとプリンスのギターのみでタイトル曲「サイン・オブ・ザ・タイムズ」が始まる……もう100回は観てるけど何度観ても鳥肌が立つオープニング(『ストップ・メイキング・センス』(1984)のオープンニングに匹敵する)!!! 背後で狂った獣のように激しく踊るダンサ−のその名も"キャット"と2人きりと思いきや、曲終盤で生々しいマーチングドラムの連打が!! 他メンバー全員が太鼓でぞろぞろと登場、なんてCOOLなんだろう~!!!

 ドラムス、ギター、ダンス&バックボーカル3人、ブラスセクション2人、キーボード&ボーカル2人、それぞれ素早く配置につくとアップテンポの2曲目「プレイ・イン・ザ・サンシャイン」、 飛び跳ねながらギターを弾くプリンスの楽しそうなこと!!! 元々は劇場用映像でなかったけど出来が良いので映画に、という経緯があるようです。曲と曲の間に短い芝居があり、ゆるい物語仕立てになっている。アルバム同様バラエティーに富んだ楽曲がスリリングに展開し息つく暇もなく、あらゆるタイプの音楽のまさにメルティングポット!!!

 ザ・レボリューションを解散し、デビュー時のように再び独りでスタジオにこもって作った最高傑作の誉れ高い9thアルバム「サイン・オブ・ザ・タイムズ」の楽曲を引っさげ、ヨーロッパへツアーに出た時のライブ映像と、自身のペイズリーパーク ・スタジオにセットを再現して撮影。このツアー日本には来なかったので、こうやってクリアに観られてホント嬉しかった。音源をいくつか聴いたけど、まだ東西の壁が壊される前のベルリン公演が特に「サイン・オブ・ザ・タイムズ」らしいと当時何故か思いました。プリンスの創造した架空の"アップタウン"、隔離されつつも、ギラギラとネオンが光る猥雑な夜の街が合っている気がしたんです。

 アルバム以外の曲は「リトル・レッド・コルベット」とアレンジされたチャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」のみ。7曲目「ホット・シング」のプリンスのアクロバティックな動き!! 大きく開いたキャットの股間のトンネルをスライディングしながら通過、同時にスカートをもぎ取って口にくわえ、パンティーで逃げるキャットを追い回す、まさにサカリのついたアニマル、こんなこと誰も出来ないマネしない!! 2 MACH HOOOT!!! 9曲目「ユー・ガット・ザ・ルック」はいにしえの美人アイドル歌手シーナ・イーストンとプリンスの共演。シングルのプロモーションビデオも兼ねた映像で、ヒットした曲。プリンスのファンになるもっと以前、中学生の頃好きだったなあシーナ(ちょい恥ずかしい過去)。そういやこの後まったく知らないなあ。

 一新された名前のないバンドのメンバー、ご存知ドラムスのシーラ・Eは1984年にプリンスのプロデュース「グラマラス・ライフ」でデビュー、ヒットも飛ばしていたパーカッショニストの二世。一時恋人との説もあるけれど、もっとピュアな、音楽が結んだ兄妹というか生涯のソウルメイトでした。ウディ・アレンとダイアン・キートンの関係に似ている? 歌ったことのないシーラをスタジオに誘い、「どこにドラムスがあるの?」「ない。歌うんだ」「えっ? 私が唄??」てな感じで、殆ど騙してシーラに歌わせたプリンス。しかし彼の手中にハマったことが、ソロアーティストで成功という、閉じていたドアを開けることになった。「空には限界が無いでしょ。彼の考えはいつもそうなの」とシーラ。そして、名誉ある彼のバンドのドラマーに。

 日本ではシーラのほうが先に人気になり、知名度もプリンスよリあった。それを知っていたプリンスは、初来日時も彼女に前座をやらせ、彼女を目当てに来た客は多かった。終演後、横浜スタジアムからTV局へ行かせて生の歌番組に出演させたり、自分はステージの他は露出せず代理で取材やらあれやこれ、いろんな使い走りをさせた。あの「ウィー・アー・ザ・ワールド」の収録にもシーラを行かせて自分はバックレをキメたプリンス、彼女の姿はコーラスの一人としてチラリ映っています。「シーラには本当に助けられた」とプリンス、だよねー。そうやって彼女は絶大な信頼を得たのでしょう。セクシーな容姿に加え(本作のコスチュームでチクビが透けスケ)ハイテクニック&ダイナミックなドラムス&パーカッションが素晴らしいのは言うまでもありません。ドラムソロ、ラップを披露と、この作品に見せ場はふんだんにあります。

 余談ですけど何故プリンスが「USAフォー・アフリカ」の「ウィー・アー・ザ・ワールド」のセッションに参加しなかったのかについて、様々な憶測があるようですが、僕は本人のコメントを読んだことがあります。「あんなに素晴らしい人たちと一緒に同じ部屋に入れたら、僕は黙り込んでしまうだろう。僕はいつものメンバーと一緒のときにこそ一番良さが出る」。やっぱりプリンスは自分がリーダーでないとね。

 僕が特に好きなのはクライマックス、ゴスペル・フォーク・ロックといった感じの「ザ・クロス」。実際のステージでは違ったけど、映画ではこの曲がラスト。映画『プリンス/パープル・レイン』もそうですが、悶々としていた20才前後の時、自分がちょいと行き詰まって、辛いなあ、苦しいなあ、というときに何度この『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』のビデオを観て救われたか判りません。「左にゲットー~右には花畑~我々は皆問題を抱えている~大きいのやら小さいの~もし信じるなら~その問題は消えてなくなる~ 死ぬな~ザ・クロスを知る前に」ってな歌詞に涙し、明日からの活力をもらっていました。まるで自分にとっての教会でした。後年、プリンスは改宗してからサビの「ザ・クロス~」のところを「ザ・クライスト~」と変えて歌っていましたっけ。

 曲の解説は巷に沢山あるのでこれくらいで。80年代のプリンスが一見、ロック寄りになったという批判があったけど、あの声と、バックグラウンドにソウルやジャズがある歌唱、そして無機質な打ち込みでも抗えないグルーヴ、耳をよく傾ければどう聴いても真っ黒なのは歴然。"白人に媚びた"的な意見は全く的外れですな。耳でそれが判っている黒人ファンは離れず、白人と黒人のクロスオーバーなファン獲得に成功したんだと思います。またこの時期、電子オルガンの音色も取り入れてサウンドは教会~ゴスペルチックになり、共演や共作をしたマイルス・デイヴィスが、その辺りに特に魅了されたというのも解ります。

 1989年日本初公開時、新宿ピカデリー2で観た。チラシはデザインが2種ありましたっけ。パンフレットは無かった。字幕はあったかな? 記憶が定かでない。劇場で観る前に既に輸入ビデオを入手してた気もするけど、どっちが先だったかそれもハッキリしない。でもやっぱり大画面&大音響で観ると格別。現在も全国のあちこちで上映されているので、DVDもいいけど、スクリーンで観る機会を是非。未見のヒト、何度も観ているヒトもまたお出かけを。生のライブはもう観られなくなってしまったけど……画面の中のプリンスはギラギラと閃光を放っている!!!! Forever In My Life.

『プリンス/グラフィティ・ブリッジ』(1990)

プリンス/グラフィティ・ブリッジ
顔までグラフィティ描いてしまった『プリンス/グラフィティ・ブリッジ』

アメリカでも自粛!? 全く別物の『パープル・レイン』続編

 最後の映画。日本では劇場にかからなかったので僕がスクリーンで見てない唯一の一本。監督脚本全部プリンス。『プリンス/パープル・レイン』の続編として完成したにも関わらずプレミアで大コケ、世界公開どころか、アメリカでも自粛との報道。何故そんなコトに? 観たい!! 当時、むちゃくちゃ観たかった。しばらくしてやっと、ひっそりリリースされた輸入ビデオを取り寄せ、なにかイケないモノのような気持ちで夜中に観た。こ、これは!!? 同じ設定とキャラクターたちだけど、全く別物でないか!!! やっぱりプリンスは焼き直しはしなかった、素直に続編など作るワケがないか。

 プリンスのおとぎ話、ファンタジー・ミュージカル。殆どのシーンがセットで撮影され現実感はゼロ、ヒロインは人間ではなく妖精、イングリッド・シャベイズという、また毛色の違う小柄でメキシコ系のポエトリー・シンガーを起用(のちのデヴィッド・シルビアンの奥さん、離婚済)。小柄でプリンスとの絵面は悪くない。タイトルである「グラフィティ」が描かれた橋は発泡スチロール製? あまりにもチープで学園祭の書き割りかと思ってしまった、そんな感じが全編に漂う。毎度ガラリと変わるプリンスのファッションは、ただ伸びてしまったような長髪、手入れはしてるんでしょうけど濃くなっちゃった無精ヒゲのような頬、胸毛、大きめのダブダブの白シャツと、『プリンス/パープル・レイン』のきらびやかな衣装と違って、ガード下に住んでて体臭が漂いそう!? その他も身体にペイントしたりとか、奇抜過ぎる衣装は"古臭い"の真逆で、完全にイキ過ぎちゃってる。

 オリジナルメンバーで集まったザ・タイムらの愉快な場面もあるけど、プリンスとイングリッドのシーンはちょい難解。字幕無しではサッパリ判らない。映画『バットマン』(1989)で知り合ったキム・ベイシンガーもお相手の候補に上がってたけど、ギャラの面で合わなかったか、つき合っていて別れた? かで実現しなかった、良かったのか悪かったのか。

 ライブシーンの質と、曲の多様さは益々スゴイ~あらゆる音楽のカオス。プリンス&ザ・ニュー・パワー・ジェネレーション、ザ・タイム、セクシーなジル・ジョーンズ、有望な少年パフォーマーだったテヴィン・キャンベル、往年の名シンガーメイビス・ステイプルズ、Pファンクの御大ジョージ・クリントンらが参加してて、お腹一杯、消化吸収するのには強靱な胃袋が要る。これだけ盛り沢山だと、映画の尺にまとめるのが大変だったでしょう。Pファンクのノリで御大が犬になりオシッコをひっかけ合う? など撮りたいものは撮ったものの、全部カット。プリンスは最終的に"ある方向"にフィルムを刻んでしまう。だいぶ後に日本版DVDが出て何度も観てやっとプリンスの意図を自分なりに解読。なぜ妖精が彼のところに現れるのか? 「判る人には判るのさ。マルティカ(プリンスが楽曲を提供したことのある歌手)はこれを6回も観たって」と本人。そう、納得する為には最低6回以上は見る必要がある、強靱な忍耐が要る。

 プリンス個人の問題から全人類へ"異なる存在を理解し、争いを止めよう"人種間の問題等々、亡くなる直前まで一貫して訴えていたことがクライマックスに。そういう状況に直面している方にはダイレクトに届くのでは。直面してなくても、マインドがフリーな貴男貴女なら解るかも。たぶん世に出るのが何十年も早かった、いつの日か再評価されるのでは? と思います。ラスト、やや宗教っぽく終わります。のちに某宗教団体に入信してしまうくらい彼は根がマジメですからね(某団体から亡くなる前には脱会していた、もしくは距離を置いていたと僕は信じてますが)。

 彼も関わっているイングリッドのソロ「イングリッド・シャベイズ」は、とっても良いアルバムですけど、映画のサントラだけでなく、こういうのも合わせて聴かないと『プリンス/グラフィティ・ブリッジ』の全貌を理解出来ないかも。その他、やはりプリンスが関わっているメイビスのアルバムや、ザ・タイムのアルバム、ジョージ・クリントンのソロアルバムも全部……やっぱり強靱な体力が要る。

 またしても、ゴールデン・ラズベリー賞の4部門でノミネートされる(今度は受賞はナシ、箸にも棒にもかからなかった)。これでプリンスは映画製作からは離れてしまいます。映画の損失のためか、1990年8月にはまだ前年の2月の「ラブセクシー・ツアー」(こちらのステージセットが大掛かり過ぎた為、という説も)から1年ちょっとしか経っていないのに「ヌード・ツアー」でギャラの良い日本に来てくれました。いい時代でしたね。

 後の90年代、混乱とか、低迷期とかいろいろ言われてるけど、あくまで商業的な側面であって(それが最も大事なのは当然ですけど)、クリエイティブのクオリティー、進化と探究はまったくテンション下がらず、むしろどんどん研ぎすまされていく様を僕はリアルタイムで観てきました。彼はプロデューサー&エンターテイナーであるけれど、何よりも誇り高いアーティストだった。だから沢山のアーティストたちにリスペクトされるのでしょう。

 映画のみならずキャリアの総てで、大成功と大失敗を同じくらいの量体験したプリンス。七転び八起き、総てを次へのバネに。果敢にトライ&エラーを繰り返し、ビッグ・リスクを冒してビッグ・プロフィットを掴んだ。どの作品も比べようがないワン・アンド・オンリー&ノッシング・コンペアーズ、COOLですねえ。プリンスが何をしようと出来不出来関係なく許しちゃう、作品も生き方も全部を愛してます、プリンスの魂よ永遠に~U would die 4 all us, Thank U Sooooooo Much!!!!!!(文・イラスト:ラジカル鈴木)

ラジカル鈴木 イラストレーター。プリンスファン歴32年。

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