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佐藤健
『何者』
SNS時代を生きる若者のリアル
『何者』佐藤健 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:杉映貴子

朝井リョウが直木賞を受賞したベストセラー小説を、演劇界の鬼才である三浦大輔が映画化した『何者』。佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之という若手実力派が集結した本作は、就職活動を通して人生を模索する大学生たちの、恋愛、友情、裏切りなど、リアルな感情を赤裸々に切り取った衝撃作だ。周囲の人間を冷静に分析する就活生の拓人を演じた佐藤が、就活について感じたことを交えつつ、作品に対する思いを語った。

■難しいキャラクターにお手上げ

Q:佐藤さんが演じた演劇サークルの脚本家だった就活生・拓人は、今まで演じたことのないタイプの青年ですよね?

どう演じたらいいのかわからなくて、難しかったですね。拓人がどういう人なのか理解すると辛くて、お手上げ状態でした。台本を読むときは自分がどう演じるのか想像しながら読むんですが、いつもは情景が浮かぶし、自分がどんなトーンでセリフを言おうとか、どんな表情をするのかイメージがあるのですが、『何者』の台本は一切イメージが浮かんでこなかったです。

Q:本作は2度観たくなる作品だと思いますが、そのときに観客が「ああ、そうだったのか」と思えるように、表情や動きに細やかな気配りが必要だったのではないですか?

どういう風に見えるべきなのか、すごく微妙なさじ加減が必要なので、そこは三浦監督を信じてお任せしました。僕の中では、監督がOKと言ったらOK と思うようにやっていました。だから、シーンごとのテイク数はかなり多かったです。

Q:有村さん、二階堂さん、菅田さん、岡田さんなど、同世代の才能たちとの共演で刺激を受けたのでは?

オファーが来たときに、一番やりたいというモチベーションになったのが、同世代の人たちと三浦監督のもとで芝居を作れるということでした。クランクインをする前にリハーサルをする時間もあって、みんなで芝居ができるというのが魅力でしたし、現場も楽しかったです。本当に幸せな時間でした。

Q:皆さんのやりとりが本当にリアルでした。撮影現場でアドリブ合戦などはありました?

すべて現場でしか生まれないので、何がアドリブで何がアドリブではないのか、意識していなかったです。台本に書かれていたこと、書かれていなかったことを、現場に入ると俳優たちは誰も気にしないんです。そういう本質的なことを理解している人たちが集まっていた現場だったからこそ、気持ち良さがあったと思います。

■就活の実態を疑似体験

Q:役づくりのために就職活動の疑似体験をされたそうですが、いかがでしたか?

とにかくストレスが溜まる作業だと思いました。面接という30分くらいの時間で、その人のことを判断されるわけですが、そんな短時間で判断できるわけがない。でも、その30分で自分をどう表現するのか、誰もが一生懸命考える。それで落とされたら、自分を否定されたような気持ちになってしまうだろうと思いました。

Q:エントリーシート、筆記試験、グループディスカッション、最終面接、特に印象深かったのは?

面接もグループディスカッションも、見学させてもらったり実際にやったりしましたが、共通していることは「正解を求めているわけではない」ということ。何かに向かっているときや話しているときの、人柄とかを見られていると思いました。でも、僕は正しいことに興味があるので、例えばすごく変な質問をされたら、正解を探そうとするし、無理なら「答えられません」と言ってしまいます。そういうタイプはきっと落とされる(笑)。要は、何か理不尽なことがあった場合、どう対処するかを見ている気がしました。僕には無理なので、受からないと思います。

Q:受からない自信があると(笑)。

もし本気でやるとしたら、わかった上で計算して、それっぽい答えを出すとは思います。でも、そんな偽りで受かったとしても、意味がないと思いそうで……難しいですね。

■内定が出そうなのは二階堂ふみ?

Q:共演者の皆さんも就活の疑似体験をされたとか。内定が一番早くもらえそうな人、その逆の人といえば誰でしょう?

男性陣は無理ですね、きっとみんな落ちます(笑)。岡田くんの面接は見ていないですが、コテンパンにやられたみたいで泣きそうな顔で帰ってきたし、菅田くんはウケ狙いで適当なことを言っていたようです(笑)。もちろん、みんな能力がある人たちだから、本気でやったら話は別でしょうけど、ちゃんと準備して挑んだわけではないので、そりゃあ無理ですよ。でも、一緒にグループディスカッションを体験した二階堂ふみちゃんは、受け答えがしっかりしていたので、受かりそうな感じがしました。

Q:佐藤さんも俳優オーディションという就活に匹敵する経験をされたかと思うのですが、比べていかがですか?

否が応でもオーディションは思い出しました。でも、全く別物です。僕の考えですが、俳優オーディションはその人自身が優れているとかではなく、役に合っているかどうかが問われます。だから、落ちてもそんなに気にならなかったし、受かっても役に合っていたと思うだけです。自分自身を肯定されたり、否定されたりするような気になる就活とは少し違うように感じました。

Q:お互いに本音を隠しながら付き合い、SNSで発散している就活生たちに、現代のリアルを感じました。佐藤さんはいかがでしたか?

僕は就活もSNSもやっていないので詳しくないですけど、原作を読んだときにこういう世界って、本当にあるんだろうと思いました。映画の就活生のようなSNSの使い方をする人たちは、実際にいるみたいです。

■観る人によって感想が違うから面白い

Q:現在就活中の人、または未来が見えない人が、本作をどう観るのか興味深いです。

本当に良い作品で僕は大好きですが、映画を観てくださった方がどう感じるかが、まったく分からないです。僕らはただ、自分たちが思ったリアルを突きつけるだけで、皆さんがどう思うかは保証もケアもできない(笑)。最後に前向きな気持ちになれたという人もいれば、とにかく心が痛かったという人もいて、いろんな感想を言ってくださるのですごく面白いです。

Q:人間心理を追究した群像劇だけに、いろんな受け止め方があるんでしょうね。

登場人物の誰に感情移入するか、人によって観終わったときの感情が変わると思います。拓人に感情移入した人は、自分を見ているみたいでつらくて泣く人もいるそうです。この映画の感想を聞くことで、その人のことがわかるような気がします。

Q:例えば、前向きな気持ちで涙した人の場合は?

それはたぶん、いい人です(笑)。これを観てつらくて泣いたという人は、それが男性の場合は裏表がある人なのかもしれません。後ろめたいところがあったり、かつてそういう時期があったりしたからこそ、痛いのかもしれない。女性の場合も、観ていて居たたまれなくなっちゃう人がいるみたいです。そういう女性には、ガンバレ! ってエールを送りたいです(笑)。

幕末のスゴ腕剣士、漫画家を目指す高校生、余命宣告を受けた郵便配達人など、キャラクターのしっかり立った役で人気を博してきた佐藤。しかし本作で挑んだ拓人は、文字通り「何者」なのかつかめない就活生。今を生きる若者たちの感覚を凝縮したかのような、非常に難しい役どころだ。クールな傍観者のようで強烈な個性も秘めた拓人を体現できる役者は、なかなかいないのではないだろうか。佐藤がインタビュー中に見せた満足気な笑顔が、作品のクオリティの高さを如実に物語っていた。

映画『何者』は10月15日より全国公開

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