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本田翼&山本美月
『少女』
いじめ描写は今どき女子のリアル
『少女』本田翼&山本美月 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:奥山智明

湊かなえの人気ミステリー小説を映画化した『少女』。親友同士だった2人の女子高生が「人が死ぬ瞬間を見たい」と切望したことから巻き起こるひと夏の出来事を、『繕い裁つ人』などの三島有紀子監督がリリカルかつダークに映し出す。自分を傷つけた痴呆症の祖母を憎悪し、心の闇を肥大化させた由紀にふんしたのは本田翼。一度のミスをきっかけに陰湿ないじめを受けるようになってしまった敦子を山本美月が演じている。これまでのイメージを一新させる役柄に挑んだ2人が、撮影秘話を語り合った。

■キャスティングは逆だと思っていた

Q:いじめや自殺を題材とする、息が詰まるような世界観の本作。オファーを受けたときに迷いなどはありませんでしたか?

山本美月(以下、山本):迷いは全然なかったです。こんなにいい作品に出させていただけるならすべてをかけてみたかったし、これをやり通したら今後いただける役の幅も広がるだろうから、絶対に演じ切りたいと思いました。ただ、原作小説を読んだとき、わたしは感情の起伏が激しい敦子ではなくて、由紀を演じるのかなと思ったんです。

本田翼(以下、本田):わかる! わたしも最初は自分が敦子で、美月ちゃんが由紀だと思っていました。原作の由紀はここまでクールな感じではなかったですしね。でも、台本を読んだら内容が少し変わっていて、「ああ、わたしは由紀なんだ」って納得しました。原作も本当にすばらしいのですが、映画は少女の危うさとか青春感がさらに強くなっていた気がして、ぜひやらせていただきたいと思いました。

Q:ポジティブなイメージがあるお二人がトラウマを抱えた陰のある役柄だったので、とても新鮮でした。

本田:女優としては新しい一面が出せたかもしれませんが、初めは由紀の漠然とした不満がよくわからなくて、わざとイライラすることを見つけたりしていたので難しかったんです。笑顔も封印しなければいけないし……。でも、自分だって学生の頃はムシャクシャする感情があったなと理解してからは、役に入っていけるようになりました。

山本:わたしは、今までは明るくて元気な感じの役が多かったのですが、実はそっちのほうが自分とはかけ離れていて、理解しにくいところがあったんです。

本田:そうか、美月ちゃんもいつも明るい役だもんね。

山本:そうなの。だから、今回の敦子のような人間味のある役のほうが共感しやすかった。でも、自分で考えている部分だけでは敦子にはならないので、そこは監督と現場で話し合いながら考えていきました。

■女子のいじめ描写がこわすぎる!

Q:女子高ならではの閉塞感といじめ描写が、原作以上に濃かったですね。

本田:現代風にブラッシュアップされているんです。実際に今の女子高生たちにリサーチをして、どんないじめがあるのか調べた中から抜粋したらしいですよ。

山本:え、そうなの? じゃあ、あの血のような文字が書かれたアレも……?

本田:そう。女の子ならではの発想だよね。もう、本当にこわすぎる!

Q:お二人の学生時代とは別世界のようないじめ方でした?

山本:あそこまでではなかったんですけど、わたしは6年間ずっと女子高だったので、中学のときは少しだけあったかもしれません。でも、高校になるとみんな大人になるし、ターゲットが先生になったりするんです(笑)。

本田:えー、もっとコワイ(笑)。

山本:とは言っても、ドアの上に黒板消しを挟んでおいて、先生がドアを開けると頭に落ちるくらいの、いたずらレベルでしたけどね(笑)。

本田:うちは共学だったので、男子の目があったということもあるのか、女子のいじめ的なものはなかった気がします。ただ、この映画のいじめ描写が大げさすぎるわけではなくて、本当にあるんだと思います。

山本:そうかもしれない。わたしたちが見えなかっただけで。

本田:そう、わたしたちがたまたまそういう目に遭わなかっただけであって、周りの子は経験していたのかもしれないなって思いました。

■監督の追い込み方はまさに催眠術…

Q:生きづらさを覚えて死というものを考えてしまう由紀と敦子。お芝居とはいえ、相当な苦しみを味わったのでは?

山本:ロケ中は豊橋(愛知県)にずっと滞在していたので、役と向き合うという意味では、今までやったどの作品よりも心がズンと重くなりました。監督もわたしたちを追い込むことも考えて、地方ロケにしたとおっしゃっていましたから。でも、それだけでは本当に心が壊れてしまいそうだったので、水族館や動物園に行ってみたりとか、息抜きをしてバランスを整えていました。

本田:本当にヤバかったよね。監督は追い込むし、人を諭すような話し方をされるんです。「信じて……」みたいな(笑)。

山本:まるで催眠術のようなね(笑)。

本田:そうそう、まさに催眠術! わたしは我が強いから、「絶対に術にはかからない」って思いながら、自我との闘いのような感じがしていました。監督の心意気が由紀なんですよね。わたしも由紀になっていたから、ぶつかることがあって。

山本:そうなんだよね。監督の言動は由紀に近かった。わたしは敦子だったから、すんなりと話せたけど。

本田:もちろん、監督も愛情を持って話してくださるんですけど、わたしが由紀という役に入っていたから、あのキャラクターが持つどこか尖ったものが、自分の中にあった気がします。そのお陰で嘘のないお芝居になったと思うので、逆によかったのかもしれないです。

■山本美月は可愛い顔に反して男前!?

Q:何度も共演していらっしゃるお二人ですが、本作でさらに関係性が深まったのではないですか?

山本:そうですね。翼ちゃんは素直で正直なんです。感じたままに思ったままになんでも話してくれるところがすごく好き。彼女には壁がないとわたしは思っていて、だからこそ、こちらも心を開きやすい。わたしも隠し事はしたくないタイプなので、ありのままでいられる安心感がありました。

本田:美月ちゃんはすごくいいお姉ちゃんな感じがします。押しつけがましいところは一切なくて、いざというときに頼りになるし、何かあったら助けてくれるって思っちゃう。信頼感がすごくあります。

山本:お互いに腹の底にイヤなものはないと思う。彼女の目にわたしがイヤな風に映ることは、絶対にしたくないんです。

Q:山本さんの今の発言、男らしいです!

本田:ああ、そうかも。美月ちゃんって男らしいのかも(笑)。

山本:それ、監督にも言われた(笑)。わたし、友だちとかを守ってあげたい気持ちがあるんです。女子高育ちだから、逆に男っぽくなったのかもしれない。

本田:初めはもっと女の子っぽい人なのかと思っていたけど、そうじゃないんだよね。だから一緒にいて楽なのかな。

Q:相性のよさが映像からも伝わってきます。特に、敦子と由紀が山を駆け上っていくクライマックスが、すごくよかった。

山本:あのシーンは、翼ちゃんが「不安だ、わたしにはできない」って何回も言っていたんです。そう言ってくれるから、逆に「わたしがしっかり引っ張っていかなきゃ」って、自然に敦子の気持ちになれたんです。由紀の冷たい手を引っ張って走ったら、本当に感情があふれてきて……。

本田:そう、美月ちゃんのお陰なんです。すごくいい感覚だった。わたしたちが気持ちを開放するシーンでもあったので、かなり気合が入りましたね。撮影はいろいろと大変だったけど、試写を観て「こんないい風に仕上がったんだな」と思えたので、本当によかったです。ミステリー、青春、友情、家族など、いろんなものが詰まっている作品だと思います。

山本:映像も女性の監督らしくて、すごくキレイ。最後はちょっとゾッとするこわさがあるけど、スタッフさんたちに愛された、幸せな映画だと思いました。

ほがらかで愛らしい笑顔、テンポのいい軽快な話し方、周囲への細やかな気遣い。目の前にいた本田と山本には、多くの共通点があった。仲がいいと似てくると言われるが、まさにその通り。過酷な撮影を乗り切った者同士の連帯と信頼が、2人の間にあったことは疑う余地がない。多感な少女の心の機微を鮮やかに体現してみせた彼女たちに、心からの拍手を送りたい。

映画『少女』は10月8日より全国公開

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