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阿部寛&大島優子
『疾風ロンド』
一人だけ焦っているのが自分の役目だった!?
『疾風ロンド』阿部寛&大島優子 単独インタビュー

取材・文:天本伸一郎 写真:金井尭子

東野圭吾の同名ベストセラー小説を、NHKのコント番組「サラリーマンNEO」などの演出家でもある吉田照幸監督がユーモアたっぷりに描いた異色のサスペンス映画『疾風ロンド』。生物兵器が医科学研究所から盗まれ雪山に隠されてしまうが、犯人はわずかな手掛かりだけを残して死亡する。上司からその極秘捜索任務を押し付けられる研究員の主人公・栗林に阿部寛、雪山で捜索を手伝うことになるスノーボード選手・千晶に大島優子がふんしている。本格的な共演は初めてだという二人が、撮影時のエピソードを和やかに語り合った。

■想像もつかない形での映像化

Q:サスペンス、ユーモア、アクション、親子愛など、娯楽要素満載の作品だと思いますが、完成した作品をご覧になった感想を聞かせてください。

阿部寛(以下、阿部):タイトルどおり疾風のごとくあっという間に観られるスピード感のある作品を目指していましたが、実際にお客さんに素直に楽しんでもらえるエンターテインメント作品ができたので、ぜひ多くの人に観てもらいたいです。

大島優子(以下、大島):ビックリしました。原作を読んだ時の印象と完成品を観た時の印象に、今までで一番ギャップを感じました。想像もつかない形で映像化されていて、とても面白かったです。

Q:台本から変わっているところが多いということですか?

大島:せりふは結構そのままでも、出演者の皆さんがお芝居で遊んでいらっしゃるというか、すごく台本を膨らませてもりだくさんな内容になっていますし、活字として読んだ印象と、実際のお芝居で見た印象の違いでもあると思います。

■誰もが身近に感じられるような登場人物たち

Q:東野圭吾さんのベストセラーを吉田照幸監督が映画化するという本作ですが、どんなところに惹(ひ)かれて出演を決められたのですか?

阿部:吉田監督の演出した「サラリーマンNEO」シリーズがすごく面白かったから、どういうふうに作っているのかなと、観ていてずっと思っていたんです。シュールな感じの中にすごくやりすぎ感もあったりするけど、それを調整するセンスがあった。どんな監督なんだろうと興味を持っていたら、今回のオファーをいただいたので驚きました。

大島:やっぱり東野圭吾さん、阿部さん、吉田監督というお三方の掛け合わせによって、どんな作品ができるのかとワクワクして、興味をそそられました。原作の映像化はよくありますが、完成形が想像できにくいものに魅力があると思うので。それに、趣味で9才の頃からスノーボードをやっていたので、スノーボードクロスの選手役というのは光栄なことだし、趣味が仕事になるって幸せですよね。

Q:また、ひょんなところから接点を持つお二人の役柄でしたが、どのように捉えて演じられていましたか?

阿部:僕の演じた栗林は、学者ですが会社組織の中で使われる身で、家族も顧みずに働いた結果、子供との確執が生まれてしまう。これは一生懸命に働いてきた人がよく背負ってしまうものだとも思うんです。そんな普通の人が大事件に巻き込まれ、上司からの命令で雪山に突然追い込まれてしまう。だから、周囲の人とは温度差があって、一人だけ焦っているのが自分の役目だと思いました。

大島:わたしの演じた千晶は、競技選手としての自分の夢や目標というものに葛藤していて、その答えを求めようと、大倉忠義さん演じるスキー場のパトロール隊員の根津さんに会いに行く。そこで栗林さんなどたくさんの人に出会っていろいろな出来事に遭遇し、他人の成長を見ることで自分も成長して前に進んでいくんです。葛藤って誰にでもあるから、千晶という役は身近な存在として共感できました。また、わたしだけでなく、年代ごとに誰もが身近に感じられるような登場人物たちがいる作品だとも思いますね。

■大島と視線を合わせなかった阿部

Q:お二人の微妙な空気感が楽しかったのですが、共演されて印象深かったこととは?

阿部:実は何作か同じ作品に出ているんですが、ちゃんと共演するのは今回が初めてで。

大島:2001年のテレビドラマくらいからですかね。

阿部:前回共演した原田眞人監督の映画『伝染歌』(2007)でも、直接撮影現場で会う機会はなくて。ですから、僕は大島さんをテレビで観ていて、堤幸彦監督のテレビドラマ「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」(2015)がすごく印象に残っていたけど、今回は違うアプローチでしたし、いろんなお芝居ができる人だから、共演は楽しかったですね。それに、大島さんの演じた千晶は鋭い女性だったので、僕の演じた栗林はなるべく彼女の目線から外れるようにしていて、大倉くんの演じた根津をとにかくまるめこもうと必死になっているというのが、演じていても面白かった(笑)。

大島:確かにシャットアウトされている感覚はありましたね。もちろんあくまで役として(笑)。

阿部:雪山の立ち入り禁止区域で生物兵器を捜索中に千晶に見つかって不審がられ、「警察呼びましょ」って言われた時からずっと、栗林はもう「ヤバイ!」って顔していますから。なるべく目を見ていなかった。

大島:確かに、同じ空間にはいるんだけど交わっていないなというのは常に感じていました。芝居の上で、あまりコミュニケーションを取り合わない関係性というのはありましたね(笑)。

Q:登場人物たちそれぞれの思惑による食い違いは見どころなので、千晶の前での栗林の挙動不審な感じなども注意して観てほしいところですね。他の共演者の方とのシーンでいうと、阿部さんと研究所所長役の柄本明さんとのやり取りも喜劇のようで楽しめました。

阿部:所長室などでの柄本さんとのシーンは、柄本さんと志村けんさんとのコントでの掛け合いを思い出すことはありました。「あれ、これどっかで見たことあるな」と(笑)。何度か共演させていただいていますが、今回は柄本さんとコミカルな一場面を作れたのですごくうれしかったです。

■野沢温泉に溶け込み過ぎ?ムードメーカーの大島

Q:大島さんは今回実際にスノーボードの腕前を披露していますし、雪上でのアクションシーンもありました。テレビドラマ「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」、映画『真田十勇士』(2016)でも立ち回りなどのアクションシーンを演じていますが、身体能力を生かした芝居に目覚めているようなところもあるのですか?

阿部:大島さんはすごく運動神経いいと思いますよ。昔たまたま観たテレビ番組で、誰よりも足が速かったから。

大島:たまたま動けて、たまたまスノーボードをやっていて、たまたま運動神経がよかっただけなんで(笑)。体を動かすことは好きなので、やりたくないわけではもちろんないですが、本当に偶然が重なっただけです。

Q:今回の撮影現場では、大島さんがムードメーカー的な感じだったそうですね。

阿部:僕は皆さんより少し遅れてクランクインしたんですが、ロケ地の野沢温泉スキー場の地元の方など、撮影に協力してくれている皆さんがすごく温かかった。それは、大島さんが地元の人との繋がりを作ってくれたというか、誰とでも知り合いのような雰囲気を作ってくれたからでもあるかなと。だから、すごくいい空気感の撮影現場でした。

大島:意識してやったことではないですが、本当にいい方たちばかりでしたし、皆さんによくしていただきました。そのきっかけも、わたしが野沢温泉の外湯に入ったことで、「どこのお湯に入ったの?」と地元の方に聞かれたから、「熊の手洗湯です」と答えたら、「いいチョイスじゃないか!」と言われて(笑)。それから、地元の方のお宅にご飯を食べにお邪魔させていただいたり、外湯に入ったり、野沢温泉を満喫させていただきました。

危険な生物兵器をめぐる争奪戦を、笑いを交えて描くというのはある意味不謹慎かもしれないが、日本では少ないブラックコメディー的なものに挑戦している意欲をたたえたい本作。「現場では怒鳴らない」など吉田監督が徹底させた撮影現場は非常に風通しもよく、みんなが楽しみながら作っていたようだ。それには大島の明るさも一役買っていたと思われ、取材中も阿部を笑わせることが多く、写真撮影時も自然に二人に笑顔が見られた。大島は阿部の撮影現場での姿勢から得たものも大きかったそうで、身長も年齢も離れた二人だが、お互いにリスペクトし合っている様子がうかがえた。

映画『疾風ロンド』は11月26日より全国公開

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